表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村娘Aに転生志望した私は魔王になりました・・・  作者: ウィンターベア


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/342

勇者救出・2

おはようございます。第66話投稿させて頂きます。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とても励みになります。

また、誤字脱字報告もありがとうございます。

今回は和登の視点です。楽しんで頂けたら幸いです。

 目隠しをされてどこかに連れて歩かされていると声が聞こえてくる。侮蔑や嘲笑を含んだ悪意の塊のような声だ。


「ヘッ、勇者様、聞こえてるか?み~んな、あんたが処刑されるのを楽しみにしているみたいだぜ、俺がしっかり処刑してやるから安心しろよ」


 馬鹿にした様にそう言うこの男は恐らくつい最近までパーティにいたテキラだろうと思う。

 どうやら他の勇者のパーティに入った上に俺の処刑人まで買って出たらしい。

 全く・・・少し前まで持ち上げてごまをすっていたくせにすぐに鞍替えするとは・・・魔王の言う通り手段を択ばないゲス男らしい・・・

 テキラを不快に感じていると隣からさらに不快になる声が聞こえて来る。


「それにしても勇者様よぉ、一体どうやってあの貞操観念のお強い女二人を手籠めにしたんだよ?だってそうだろう?国全体を敵に回すってぇのにあんたに着いたってこたぁ。二人ともあんたの女って事だろぉ。まぁ、良いか、どうせ今からから死ぬんだし、あんたが死んだ後、俺が二人とも可愛がってやるよ。国に送還されるまでまだ時間も有るだろうし、俺が美味しい思いしても問題ねぇよな?」


 パーティでは盗賊の役割を担っていた男グリュックが下品に笑う。

 俺と彼女達の関係について何を勘違いしているのか知らないが非常に不愉快だ。コイツは性欲しか頭にない男だったみたいだ・・・何としても殺さないと彼女達が危険だ。


「よぉ‼なんとか言えや!」


 いきなり右側頭部に衝撃と痛みが走るどうやら何も答えなかった俺にキレて殴られたらしい。

 その後も数回殴る蹴るなどの暴行が加えられてから不意に視界を覆っていた目隠しが外された。

 目隠しが外され眩しさからホワイトアウトした視界が段々と色を取り戻し少しずつ人の輪郭がはっきりとして来る。

 目の前にはこの国の住人達が俺が処刑されるのを今か今かと待ちわびている。

 もしもこのまま殺されるとしてもせめてもの抵抗だこいつらの前では絶対に泣き言や命乞いはしない。そう心に決めていると少し離れた所でこの国の神官だと名乗っていた男が俺の罪とやらを読み上げていく。

 曰く、俺が魔王亡き後新しい魔王の座に就くと言ったとか散々支援したこの国を裏切ったとか事実無根のオンパレードだ。


「それでは、最後に今回の処刑人を買って出てくれた英雄テキラ・デズバリスからの一言を皆に聞いてもらおう」


 神官の言葉にテキラはその声に嫌な笑みを浮かべながら前へ出る。


「皆様、初めましてご紹介に預かりました英雄テキラ・デズバリスでございます。僭越ながら皆様にご提案がございます」


 テキラの挨拶に広場に集まった人間が沸く。テキラはそれを満足に眺め言葉を続ける。


「この場にいる偽勇者にチャンスを与えるのはどうでしょう?私と一対一で戦い。万が一この偽勇者勝てば無罪放免で命だけは助けてやる。負ければそのまま打ち首。いかがでしょうか?」


 テキラの発言に民衆が更に盛り上がる。

 テキラは満足そうに笑いながら目の前の人間に答える。


「皆様、同意していただきありがとうございます。このテキラ立派に罪人を打ち負かし、皆様に喜んでいただきたいと思います」


 そう言うテキラの声に合わせ俺を縛っていた縄が解かれる。それと同時にテキラが粗末な剣を俺に投げて寄越し、自分も腰から抜きながら俺にしか聞こえない声で話しかけて来る。


「まぁ、そういう事だ勇者様、せいぜい俺の為に哀れに死んでくれ」


 テキラはニヤニヤと笑いながら迫って来る。武器のランクも体の状態も不利だがタダでなんて死んでやるもんか絶対に一杯食わせてやる。

 テキラを見ながら鞘から剣を抜く。剣はボロボロで全くと言っていいほど整備されていなかった。


「でやぁぁぁぁぁぁ‼」


 大ぶりに片手剣を振るテキラの剣を一歩後ろに下がり最小限の動きで避ける。相変わらず無駄の多い動きだ。おかしくなっていた時によく死ななかったな・・・こんな練度の低い奴を信用していたなんて大丈夫か洗脳されていた時の俺?

 芸も無く大ぶりな攻撃を全て最小限の動きで避け、避けられなかったものは剣で受け流す。テキラの攻撃を受け流すたびに剣からはギシギシと嫌な音が鳴る。

 くそ・・・剣の整備不良と元々のランクの所為でそんなに凌げないか・・・なら、こっちから仕掛ける‼

 攻撃を避けられたテキラは今度は横なぎに剣を振るって来るのを今度は避けずに俺も剣で防ぐ。

 剣と剣がぶつかりガキンっという音と共に俺の手に握られていた剣が砕けるのと同時に衝撃でテキラの剣も大きく弾かれる。

 その隙を見逃さず一気に肉薄しその顔面にこぶしを叩きこむ。

 技も何もない只々純粋に勇者として与えられたステータスに任せぶん殴るとテキラは思った以上に後ろに吹っ飛ぶ。

 吹っ飛んだテキラの手から剣が零れ落ちすかさず拾いテキラに向け振りかぶろうとした所で不意に右肩に鈍い痛みが走る。

 右肩を見るとそこにはどこから投げられたのか短剣が刺さっていた。

 その短剣を確認した瞬間、今度は顔面に衝撃が走り今度は俺が剣を落とし、後ろに吹き飛ばされる。


「このクソガキがぁ‼調子に乗りやがって‼」


 テキラは鼻血を垂らしながら怒りの形相で剣を拾い近づいてくる。


「テキラの旦那ぁ、油断し過ぎだぜ」


 後ろから聞こえた声に顔を顰めながら振り向くとグリュックが下卑た笑いを浮かべながらテキラに向かって声を掛けてる。

 くそ・・・俺は本当にバカか‼こいつ等が正々堂々勝負なんてするはずないのに‼


「うるせぇ、グリュック‼」

「へーへー、助けて貰って礼も言えんのかい」


 テキラの怒鳴り声にグリュックは呆れた様な態度を取る。

 ちらりと他の勇者達がいる方に目を向けると神薙先生が今にも飛び出しそうな顔をしている。恐らく先生がお世話に為っている人に頼まれているのかかろうじて留まっている状態みたいだ。


「さて、てこずらせてくれえたがそろそろ終わりにしようぜ、勇者様ぁ、最後に何言いたい事は有るか」


 テキラが余裕を取り戻し品の無い笑い顔で聞いてくる。

 泣き言か命乞いでも期待しているのだろう。とことん趣味が悪い。

 誰がこいつを喜ばしてやるか‼

 テキラの顔を真正面か見返し不敵に笑ってやる。


「くたばれ、クソ野郎」

「このクソガキがぁぁぁぁぁ‼‼」


 俺の答えや態度にキレたテキラが剣を大きく振り上げる。

 此処までか・・・勝手に異世界に召喚されて身勝手な理由で故郷に帰れず死ぬとは思わなかったな・・・

 目を閉じて刃が振り下ろされるのを待つ。こんな奴にこんな処で殺されるなんて本当に業腹だ。

 目を閉じると少し前までの学校生活を思い出す。いわゆる走馬灯なのだろうか?

 最後に何故か少し前に会った黒コートの少年を思い出す。そう言えば結局、彼がくれた指輪は何の意味が有ったのだろう?まぁ、今更あれに何の意味が有るかなんて関係ないか・・・

 最後の最後にそんな事を考えていると不意に顔に何か生暖かい物が飛び散る。

 不思議に思い目を開けると目の前には何と言っていいのか分からない不思議な空間が展開しておりそこから朱色の刀身が輝いている。

 それと同時にテキラの手と思われる物が宙を舞いベチャっと湿った音を立て地面に叩きつけられる。


「遅くなってしまって申し訳なかったね。良く耐えてくれた」


 一週間前に分かれたのに鮮明に覚えている鈴を転がしたような声がその場に静かに響く。

 その声に少し遅れ不思議な空間から仮面を着け頭をすっぽりと覆うフードを被った黒いコートの小柄な人影がゆっくりと出て来る。

 彼は後ろを向き、地面に這いつくばっている俺を見るとすぐに近くに来て膝をつき顔や傷の具合を確認する。仮面で顔は見えないのにその顔はなぜか悲痛に歪んでいる様に思えた。


「本当にすまない。もう少し早く君の元に来れていれば此処まで痛めつけられる事なんてなかったのに・・・」


 声も最初に会った時と違い何故か今にも泣きそうな女の子を思い浮かべるような声音で喋る。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、お、俺の手がぁぁぁぁぁ‼」


 少しして自分が手を失ったことを理解したのかテキラが悲鳴を上げ地面に倒れのた打ち回る。王国側はテキラよりも冷静だったのか俺と彼が話している間に兵を展開させ彼を取り囲む。


「少し待っていてすぐに片付ける」


 魔王は先ほどの泣きそうな声とは違い静かなしっかりとした声音で彼はそう言うと俺の髪を一撫でし、彼は腰に下げているもう一振りの白銀の剣を抜き、俺達を囲んでいる王国兵の方をゆっくりと向き直る。

 そんな彼の姿を見て俺は何とも言えない安心感を覚えるのだった。


次回はコハクの視点になります。

ごゆるりとお待ちいただけたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ