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勇者=

おはようございます。

第63話投稿させて頂きます。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。励みになります。

また、誤字脱字報告もありがとうございます。


 魔王の城から戻って早5日が過ぎ俺達は無事にクラシアの王都クラフェルに着いた。

 魔王城で行方不明になったテキラ達と無事に合流する事が出来た。


「がっはっはっはっは‼それにしても和登殿はすごいですなぁ。マカ殿達と一緒にあの諸悪の根源の一つである魔王の一人を打ち倒すとは同行していた我も鼻が高いですぞ‼」


 テキラの言葉を皮切りにマカとリル以外の他のメンバーも口々に賞賛してきた。魔王に洗脳を解いてもらい彼と話した影響か今は彼等の言葉に別の思惑が有るように聞こえる。

 また、賞賛するテキラ達の目は心なしか欲望でドロドロと濁っているようにも見える。

 正直、この話題もここに来るまでに何回もされてもう、うんざりだ。

 そんなことを思いながら全員でクラシアの城の衛兵に話をする。

 内容は魔王との打ち合わせ通り彼を討ったので王族にお目通り願いたいという感じだ

 衛兵は驚いた顔になり急いで俺達を中に通し別の人に俺達を案内するよう言い含め自分も城の奥に姿を消す。

 しばらくするとバタバタと騒がしい足音がし、通された応接室に小太りの男が駆け込んでくる。


「ゆ、勇者様‼魔王を討ったというのは真でございますか⁉」


 この国の宰相だという彼は肩で息をしながら俺の前に物凄い近い距離で唾を飛ばさんばかりに喋りだす。

 てか、距離が近いし、至近距離過ぎて唾が掛かりそうなんですけど・・・

 俺は初めて会った時からこの人が苦手だ。

 意地の悪そうな目つきや他者を見下しているような口調、一国の宰相だと言うのに服装もごてごての成金趣味でなんと言うか品も無い。

 見た目で人を判断するなとよく言うが、漫画や小説でよく出る悪人を絵に書いたような人間なのだ。

 全く・・・本当に何でこんな人達を信用してあんなブレスレットなんて付けたんだろう・・・


「ええ、確かに倒しました。証拠もここにあります」


 そう言いながら俺はアイテムボックス(異世界に来た時に使えるようになった)から魔王から受け取った箱を渡す。

 宰相は箱の中身を確認する。そこには黒色の髪の束が入っている。


「ふむ・・・」


 宰相はしばらくその髪の束を凝視する。恐らくスキルの鑑定使っているのだろう。

 そして、顔を上げるとニタリっという表現が合うような下卑た笑みを浮かべ口を開く。


「いやいやいや、流石異世界より召喚された勇者様ですなぁ、国王陛下と姫がお待ちですどうぞ謁見の間までお越しください」


 そう言うと宰相は俺達を謁見の間まで案内した。



 謁見の間に入るとそこに王の姿は無くこの国の第一王女エリュナ・シム・クラシアが待っていた。


「あぁ・・・和登様、よくぞお戻りになられましたわ」


 プラチナブロンドの髪に緑色の瞳、さらに整った顔立ちの彼女は優し気に微笑みながらそう言った。

 この城に来た直後はその美しさに心躍った物だが、ブレスレットに施されていた洗脳や魔王と話した後だと彼女の笑みが白々しく見える。


「ただいま戻りました。エリュナ姫、お元気そうで何よりです」


 王が居ない事に関する疑問等は一旦置いておき姫に頭を下げ跪き挨拶をする。兎に角、不信感を持っていても他の勇者達と相談するまではそれを露わにするわけにはいかない。


「勇者様、宰相からお聞きしましたわ。見事、魔王を打ち倒されたと。よくぞ、よくぞこの国の平和を守ってくださいました」


 なにがこの国の平和を守っただ・・・魔王の話が本当ならむしろ世界的に絶賛危険な状態じゃないか・・・

 姫の言葉に内心呆れつつ俺は本題を切り出すことにする。


「姫様、お褒め頂きありがとうございます。詳細については後で報告書にしてご報告させていただきます。それで姫様こちらの方に来たばかりで誠に申し訳ないのですが私と共に来た勇者達と少し話をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


 実は今回この世界に一緒に来た勇者達は皆同郷の人間だ。新任の男の先生が一名、大学部の二個上の男の人が一名、一つ上の女性の先輩が一名、同じ高校の同学年の男子が俺を含めて3名、一つ下の後輩の女の子が2名、一つ下の後輩の男の子が3名の計9名がこの世界に召喚された。

 その内の暁の勇者(同学年男子)、白夜の勇者(後輩男子)、風の勇者(後輩女子)、水の勇者(後輩女子)そして俺が今回、魔族の領土に遠征した。

 他の魔族領に行った勇者は多分、大丈夫との事なので兎に角残りの皆の意見を聞きたい。

 多少怪しまれるかもしれないがここは早々に切り上げて皆に会いに行くべきだろう。


「えぇ、勿論構いませんわ。」


 案外すんなり許可が出た。流石に皆に会いに行くと言っただけで変に怪しまれる事は無かったか・・・

 姫があっさりと了承したことに少し驚いてしまった・・・次の言葉を聞くまでは


「最も・・・無事にたどり着ければですけどね」


 笑みはそのままに彼女の口からそんな言葉が放たれたその瞬間に背後から寒気がし、俺は急いでその場から飛び退る。

 背後からドゴォンと言う音がし、着地しながら振り返るとそこには大剣を振り抜いた体制で床を破壊しているテキラの姿があった。


「!なんで⁉」


 テキラ達が信用でいないというのは魔王との話でわかっていた。問題は何でさっきの言葉だけで攻撃されたのかだ。

 剣を召喚し、追撃に備えると背後から姫の声が聞こえる。


「クスクス、だって和登様、知らなくて良い事を知ってしまったのでしょう?挙句の果てに洗脳も解けてしまっていますし、色々とこっちにも都合が有りますの。それに・・・」


 彼女は楽しそうに笑いながらそんな事を言う。


「使えなくなった()()は処分するのが常識でしょう?」


 その言葉を合図にリルとマカ以外の残りのメンバーも襲い掛かって来る。


「オクタ・アクアシールド‼」


 俺に向かって剣や矢が放たれた瞬間水の盾がその凶刃を弾く。リルが魔法で作ってくれた盾を利用し暗殺者のデネスの腹部を蹴り、盗賊(シーフ)のフウゲルの短剣を剣で受け左手で思いっきり顔面を殴り気絶させる。


「勇者様‼一度ここを出て他の勇者様方と合流しましょう‼」


 マカの声のする方に走り、俺達は謁見の間を後にする。

 城の兵と交戦し、広い庭園に出る。その瞬間、俺達は炎の壁に囲まれた。

 慌てて立ち止まり、周囲を見るとそこには武器を構えて臨戦態勢の残りの勇者達が立っていた。

 くそ・・・先を越された。

 その姿を見た瞬間俺は心の中で舌打ちをする。


「止まれ‼狗神、お前何のつもりで裏切ったんだ‼」


 勇者武器である双剣を俺に向けそう問いかける闇の勇者、立川 健


「まぁ、捕まえる前に理由ぐらい聞いてやろうって事だ感謝しろよ?少年」


 軽薄な口調でそう言って大剣を肩に担ぐ火の勇者、月濱 純也


「・・・」


 何か思うところが有るのか何もしゃべらないで薙刀を構えている雷の勇者、坂月 命


「皆、冷静に。敵意を持っては話してくれることも話してくれなくなります」


 全員を宥め、なるべく戦闘にならないようにしている土の勇者、神薙 賢治

 俺が連れ出そうとしていた彼らは敵として俺の前に立ちふさがっていた。


「狗神君、事情が有るのは分かります。話が聞きたいので大人しくしてくれませんか?戦わないに越した事は有りません」


 神薙さんは先生らしく言葉で俺を説得しようとしている。

 なるべくなら話をしてこちら側に引き込みたいがここで悠長に話している時間は無い。捕まれば恐らくそれで終わりだ。

 俺は苦渋の選択で剣を構えるとその姿を見た神薙先生はある程度予想出来ていたのか少し悲しそうな顔をする。


「皆さんは動かない様に。僕が全員を相手にします」


 その言葉に不満そうな顔を向ける火と闇の勇者を下らせ、神薙先生はハルバードを持ち前に出て来る。

 はぁ?全員で掛かって来るんじゃなくて三対一で戦うつもりなのか?魔王に負けてるからとやかく言えないけど自分の力を過信し過ぎじゃないか?

 改めて剣を構え相手の動きに合わせるために先生を見ているとその姿は一瞬で消えその瞬間にリルとマカが同時に吹き飛ばされた。

 二人は何が起こったのか分からない顔で吹き飛ばされ壁に激突しそのまま気を失う。


「なっ⁉」


 慌てて剣を盾にすると凄まじい衝撃が両手を襲う。


「成程、受け止めましたか・・・旅で強くなったんですね」


 ハルバードの一撃を剣で受け止めると神薙先生は少し驚いたようにそう言う。

 受け止めたはいいが俺はどんどんと不利な体制のまま押し込まれる。

 距離の近くなった俺に神薙先生は俺にしか聞こえない程度の音量で声を掛けて来る。


「時を見て助け出します。だから今は大人しくしてください」


 その声を聞いた瞬間俺の腹に衝撃が走る。


「カハ」


 肺から空気が抜けそのまま地面に転がる。ゆっくりと俺に近づいてくる先生を見ながら俺の視界はゆっくりと闇に包まれて行った。


次も勇者の視点が続きます。ごゆるりとお待ちいただけたら幸いです。

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