魔王
おはようございます。
明けましておめでとうございます。昨年は大変お世話になりました今年もよろしくお願いいたします。
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第59話投稿させて頂きます。楽しんで頂けたら幸いです。
大広間の扉を開き皆に運んでもらった勇者君に眼を発動させ、改めて見る。勇者君が執務室に入って来た時に一瞬だけ確認して心を見ただけだったので改めて強さを確認しておきたかったのだ。ちなみに眼はこの8年でしっかり制御できるようになった。地味に制御できるまで辛かった・・・
さてさて、勇者君のレベルはどんな物かな?・・
種族:人間 名前:狗神 和登 性別:男性 年齢:17 Lv.52 剣術Lv.50 魔法Lv.49 状態:洗脳(認識歪曲)
・・・はい?Lv.52?マジで言ってます?
勇者のレベルを見て思わずそんな感想を抱いてしまう。あまりにも低すぎる・・・パッと見で洗脳状態にあるとかは分かっていたけどレベルまでは見ていなかったぁ・・・
まぁ、レベルだけで強さが決まるわけでは無いのでレベルの低さは一度置いておいてまずはこの洗脳は何が原因かな?認識歪曲ってくらいだから何を言っても聞いてもらえないかもしれない。邪魔なら壊してしまわないとね
そんな事を思いながら勇者君の装備を見ていき手に着けているブレスレットに目を止める。そのブレスレットは彼の着けている装備の中で唯一黒い靄でおおわれていた。
☆
名称:精神支配のブレスレット
特性:装着者の認識を歪め、支配者の都合の良い景色を見せる
品質:粗悪
解呪:聖属性の魔法によるブレスレットの浄化・破壊
☆
はい、洗脳の元凶発見、これを壊せば話を聞いてくれるかな?
さて、じゃあ、残してもらった魔法使いの女の子と聖女さんは勇者君と同じ様に洗脳状態なのかな?うん、特に問題なし
勇者君から離れた所に立ち、クロノスに合図を送り時間停止を解除させる。
クロノスがスキルを解除した途端に世界が動き出す。
「は?あれ?書類に囲まれて涙目の女の子が見えた気がしたんだけど・・・」
よし、三秒以内にその記憶を消せば命だけは助けてやる。だから今すぐに忘れようか?
「勇者様‼テキラさん達も居ません・・・存在していたなんて信じられませんが転移の魔方陣で転移されられたのかもしれません」
はい、残念でした。確かに転移魔方陣は使用したけど邪魔な人たちを送り返しただけだよ。君達はうちの優秀なスタッフが手作業で運び込みました。
てか、君たち目の前にいる私の事ガン無視かい?暢気すぎるだろ。
しょうがない。こっちから声かけるか・・・
「あ、あの‼お二人共‼そろそろそこにいる方を警戒した方が良いと思うんですけど・・・」
流石にまずいと思ったのか魔法使いの子が勇者君たちに注意を促す。まぁ、レベルも一番高いみたいだしここまで来れたのも彼女のお陰かな?
注意された二人が慌てて私の方を向いたので挨拶でもしようかな
「どうも、我が城にようこそ勇者君一行」
私は仮面の下で苦笑しながら警戒をしだした二人に挨拶をする。
「あんたは何者だ?」
え~、それ今の状態で聞く?いくら平和な世界から来たからって平和ボケし過ぎでしょ?てか、聖女はこの世界の人間でしょ?もうちょっとさぁ、考えようよ?もしかして今まで魔法使いの子に警戒とか全部任せて来たとか屑なこと言わないよね?そうだとしたら少しお仕置きが必要かな?そもそも我が城って言っている時点でわかれよ?
これは今回の勇者はハズレかな?大体にして聖武器ももっと考えて人間を選んでほしい。フォローするのは私達なんだから・・・
まぁ、わかっているよ。答えてあげるよ。今は洗脳状態だからっていう可能性もあるし、洗脳を解いて落ち着いてから話をしてみよう。
内心で溜息を吐きつつ勇者の問いに答える。
「我が城と言った事で察して貰いたいものだね。まぁ、良いさ、答えてあげるよ。僕はこの城の城主、今代の黄昏の魔王さ。今の君達にはこれだけ言えば十分だろ?」
私は敢えて男口調で答え、名前は名乗らなかった。現状、彼らが味方になるとは限らない状況で名乗るのはリスクが高すぎる。それに矛盾しているかもしれないが穏健派の魔王は皆、余程信頼できる人間にしか名乗らないようにし、なるべく素顔や正体は隠す様にしている。正体を知られれば一部の人間や国に付け入る隙を与えてしまうからだ。特に私は人間側に正体がばれると家族等色々とリスクが大きい。
「お前が魔王か、他の仲間を何処にやった?答えによってはただじゃ置かないぞ」
勇者君がすっごい睨みながらそう言って来る。だからそうだって言ってるじゃん。大体、そんなに睨まれるほどの仲じゃないでしょ?
君が仲間だと思っている連中なら今頃、君を召喚したクラシア王国近くの国に居るよ。
「あぁ、君が仲間と言っている連中なら君が召喚された国に近くの国境付近にいるから心配はいらないよ。まぁ、信じる信じないは君次第だけどね。それで?君達は此処に何をしに来たのかな?」
此処にいない仲間が無事と聞いた彼は一瞬、表情を和らげるが続く私の言葉に再び私を睨みながら口を開く。
「お前達に聞きたいことが有って来た。国によっての貧富の差や復興していたフルニカ王国みたいになんでお前達は人間の領土に被害を出すんだ‼」
はい~??何を言ってるのかなぁ?この洗脳されている勇者君は・・・あ、そうか洗脳状態だからまともに判断できないのか
そもそも、国によっての貧富の差は人間至上主義で他を見下しているから新しい技術が入って来ないからであいつらの自業自得だし(まぁ、どの国がとは言いませんよ。)、フルニカ王国に関しては私達が居なかったら滅んでいたのだ。寧ろ最小限の被害だったと言えるのだ。まぁ、事情を知らないから言えるんだろうね。
「それに関しては・・・」
「話を聞く気は無い‼」
おい、こら‼聞かない話を聞くんじゃないよ‼
「お前たちを倒して、俺は人間を救うだけだ」
そう言うと勇者君は右手を前に出すとシュンっという音と共にその手に一振りの長剣が現れ、一気に距離を詰めその剣を私の頭に向け振り下ろしてきた。
特に危なげ無く、左手で刀身を掴みその一撃を躱す。
その光景を見て驚く勇者君達、しかし私の心はそんな事を気にしている余裕は無かった。
つまり、その時の私の心境は『え?勇者も武器召喚出来るの?出来ないの私だけ?狡い』という間の抜けた物だった・・・




