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魔王会議・2

おはようございます。第52話投稿させて頂きます。

楽しんで頂けたら幸いです。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。

「いやぁ~、本当にごめん‼本当にお待たせしました‼」


 あくまで軽く、しかし、不愉快に思わない感じで他の魔王に謝っていくこの国の魔王である。暁の魔王

 種族:獣人(人狼種、魔王種) 名前:フェル・W・シルヴ 性別:男性 年齢:17 Lv.110

 驚いたことにレベルは最年長であるクリストさんや傲慢の魔王に劣るのにステータスは引けを取らない表記が出ている。暁の魔王の特性なのかな?


「全く、おせぇっての‼テメェの所為でどれだけ時間を無駄にしたと思ってるんだよ」

「問題が有ったみたいだけど大丈夫だったのぉ~?」

「あぁ、心配してくれてありがとうなアミル。何とか大丈夫になったから取り合えず他の奴らに任せて来た‼それと本当に悪かったな‼グリド」

「そうなのぉ~、なら良かったわぁ~」

「ケッ‼」


 あくまで物腰柔らかに応対する暁の魔王、それにしても、色欲と強欲の魔王を呼び捨てか・・・仲が良いのかな?てか、兄貴分?

 それにしても、この人は人当たりが良さそうだけど初対面の印象そのままの人じゃないって良く分かるなぁ~。

 だって皆に謝っている時も色欲と強欲の魔王に対応している時も心底悪いと思っているけど常に別の事も考えてるんだもん。

 その内容も結構物騒で笑顔のしたでは


(あの糞虫共、一度ならず二度までも人の畑を荒らすとはいい度胸だ・・・貴様らの子孫を全て根絶やしにしてぶち殺してやる‼)


 なんて事を常に思っている上に大量の虫の死骸の上に立つなんてイメージまで見えて来た。

 ぶっちゃけ、その殺気をそのまま出してたら誰も何も言えないんじゃないかなぁ・・・

 そんな事を考えているとスタスタと暁の魔王が歩いて来てクリストさんの近くを通る。その際に私とも目が合い少し不思議そうな顔をし、クリストさんに質問をして来た。


「クリストのおっちゃん、その子は誰なん?子供連れなんて珍しいじゃん」

((((((こいつ、聞きやがった(いたわぁ~)⁉))))))


 暁の魔王の質問にクリストさんは私の頭を撫でながら答える。物凄く優しい手付きだ。


「それは会議の何処かでおいおい話す。まずは座って会議を始めよう」

「ふ~ん。分かった。うちでも同じ年頃の女の子を預かってるから機会があれば仲良くしてあげてくれなぁ~」

「あ、はい、こちらこそよろしくお願いします」

((((((いや‼もっと深く突っ込んで聞けよ‼))))))


 白夜の魔王以外の全員がすまし顔で紅茶に口を付けながら総突っ込みしている中で暁の魔王はポンポンと私の頭を撫でクロノスと白夜の魔王の間の席に着く。

 さて、ようやく全魔王が集結した所で魔王会議が始まる。まぁ、会議自体は退屈な事のなのである程度省略して説明させてもらう。


 1.各国や人間領土の魔物の変異や生態系の変化について(人間領の方は旅して一部見て来たし、ゴルクさんからの報告も上がるだろうけど現在黄昏の国ついては全く知らないので取り合えず関係ない。)

 2.各国の協定内容の見直し(現状私が口を挟めることは無い)

 3.各国での輸入や輸出についての話し合い(今後、何か取引をするかもしれないしそれなりに重要)

 4.黄昏の魔王の最後の目撃情報についてまた本当に死んでしまったのかについて(これに関しては答えが各魔王の前で黙々とケーキを食べている)

 5.人間領土に攻め込むか(主に過激派それも強欲の魔王が乗り気)

 6.黄昏の国に現状魔王が居ないので今いる魔王で黄昏の国の領土を分割するかしないか、する場合はどのように分けるか(←今ここ、現在進行形で私に物凄く関係ある)


 とまぁこんな感じの内容が話し合われており、現在は知らないとはいえその国の王が居る前で堂々と国の分割案が出されている。積極的に分割し、大きな領地を得ようとしているのは当然の如く強欲の魔王だ


「つー訳でこの大きさの領土はうちの国で貰うぜ。文句はねぇよな?」

「つー訳で、ではないグリド殿、今の議題は確かに領土を分割して分けるかという話になったが正式には新しい黄昏の魔王が現れるまで各魔王で分割管理し、状況を保存するのが目的だ。どこの国が黄昏の国の領土をより多く手に入れるかではない」


 強欲の魔王の言葉を暴食の魔王が否定する。

 あぁ~、新しい魔王が来るまで皆で管理してくれるって話だったんだぁ~。失敬、私もわかってなかった


「ハッ‼そんな事わかってるっつうの‼だが、ここに慈善事業で領土を預かってやる奴なんていねぇだろ?まぁ、いても穏健派の連中ぐらいか?だから分かりやすく言ってやったんだよ?大体、黄昏の奴が黙っているのにお前が口出しする事じゃ無いんじゃないか?ブブド?」

(まぁ、俺は返す気なんてサラサラねぇけどな。実質黄昏を手に入れたら次は白夜だ。そこからどんどん侵略していずれは全部俺のものにする)

「貴様…俺達が魔王になった時に世話になった恩を忘れたのか?」

「フン‼そんなの関係ねぇな‼」

「・・・」

(駄目だな…コイツには話が通じない…)


 なんて会話が暴食の魔王と強欲の魔王との間に継続して行われているのを横目で見ながら私はついつい近くで興味なさげに小さな声で会話している暁の魔王と白夜の魔王の会話に聞き耳を立ててしまう。


「おい…オウル、起きろ。ちょっと相談したことが有る…」

「………なんだ?人が気持ちよく寝ている時に…くだらない会議が終わったのか?」

「ちげぇよ。今、グリドの馬鹿が絶賛調子ぶっこいてる最中だってぇの、そんなことよりお前に畑の虫共をぶっ殺す薬を作ってもらいてぇんだよ。今後の事も考えてな」

「…お前、完全無農薬が自慢じゃなかったか?」

「お前の所の薬なら安全性も高いし、何より無理の無い農薬を使う。即ち無農薬と言い張るから問題ない」

「…無理の無い課金即ち無課金みたいに言うな。まぁ、お前が良いなら俺には関係ない。なるべく作物や人体に負担が無い物を作って今度送ってやる」

「サンキュー、さすが持つべき者は幼馴染で同じ境遇の魔王だな」


 そんな会議とは全く関係の無い会話をしている二人から意識を外すと強欲の魔王と暴食の魔王の言い合いは激しさを増しいている。

 色欲の魔王が宥めているけど暴食の魔王は今にも殴り掛かりそうだ。

 それにしても、何となくクロノスとクリストさんが私の事を今は秘匿しているのかがわかって来た。

 要するにどの魔王が今後、敵になるか味方になるかの判別をさせるためだ。まぁ、要するに穏健派と過激派の区別をさせるためだ。

 今の所見た感じでは、穏健派は暁、白夜、色欲そして先代の黄昏、過激派が憤怒、傲慢、強欲、怠惰、中立が暴食(穏健派より)、嫉妬(過激派より)というかんじだろうか?まぁ、各魔王が相手に話す時の態度やなんかで推測しただけだけど・・・クリストさんは本人も先代も言っていたから過激派で確定だけど・・・


「とにかく、異論が有るんなら黄昏の魔王を今すぐ連れて来いよ。まぁ、そこで突っ立って何も言えない奴が名代で出て来てるのは後継者が見つかってねーからだろうけどな‼」

「新しい黄昏の魔王ならここに居るぞ」


 強欲の魔王が強引に話を終わらせようとした所でクリストさんが静かな声でしかしはっきりと聞こえる声量で私の頭を撫でながら私の正体を明かす。


「「「「「「は・・・?はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉⁉⁉⁉⁉⁉」」」」」」


 私とクリストさん、それとクロノスあと意外な事に暁と白夜の魔王以外の全員がまとめて間抜けな声を上げる。

 会議と全く関係ない話をしていた二人に関しては「あ~、やっぱりな」とか「顔の怖い憤怒の王に大人しく抱きかかえられているんだ。ちょっと考えればただの子供じゃないと分かるだろう」とか言っている。つか、気づいてたの?白夜の魔王に至ってはさっきまで寝てたよね?


「いやいやいや、ちょっと待てクリスト、なんで今このタイミングなんだ⁉」

「というか、その子が本当に黄昏の魔王だっていう証拠が有るわけぇ?」

「おっさん、出鱈目言ってんじゃねぇぞ」

「事実なのですか?クリスト殿?」

「あらあら、まぁまぁ~、驚きねぇ~」

「驚くのもめんどくせぇ」


 次々と捲し立てる各魔王でもやっぱり思っていることは一つ


((((((つか、もっと早く言えよ(って欲しかったわぁ~)‼))))))


 だった。


「なんでこのタイミングか?そんなに簡単だろう?最高に盛り上がって調子に乗った所で相手が思いもしなかった最強の手札で叩き潰す。ただそれがしたかっただけだ。そのためにクロノスにはいろいろと耐えて貰っていたのだしな。それとルベリエ、お前ならこの子の顔を見て思うところが有ると思ったんだが?」

「人間の子供の顔なんて見てもいちいち思うと・・・ころ・・なんて・・・」


 そう言いながらマジマジと私の顔を見る傲慢の魔王の言葉は最後の方は聞き取れなかった。

 代わりに心の声ではここ最近よく聞く名前を呟いている。要するに(アイシャ)と・・・

 いい加減この突っ込みも芸が無いってわかってるけど敢えて言わせてね・・・だから誰だよアイシャって‼


「では、コハク殿、皆の前で自己紹介を」


 心の中で密かに突っ込んでいるとクリストさんが優しい声音で挨拶をするように促してくる。

 あの・・・皆その声に驚いていますけど・・・


「はい、わかりました」


 にっこりと満面の笑顔でクリストさんの膝の上から降り皆に見える場所に立ち優雅な動作で淑女の礼(カーテシー)をし、挨拶をする。


「皆様、お初にお目に掛かります。黄昏の魔王を継承致しました。コハク・リステナ・トワイライトと申します。以後お見知りおきを」


 顔を上げるとクロノスとクリストさんはどこか満足げに暁と白夜以外は驚いた様な顔でこちらを見ている。


「ふ、ふざけるな‼この餓鬼が黄昏の魔王だって証拠が有るのかよ⁉証拠が無ければ認める事なんてできないぞ‼」


 ハッとしたように強欲の魔王はそんな事を喚きたてる。それを聞いて暁の魔王が席を立つ。


「んじゃ、確かめてみるか?」


 そんな事を言う暁の魔王はおもむろに来ていた上着を脱ぎ後ろを向く。

 背中を見せた暁の魔王のTシャツには前と同じく日本語で《畑は俺を裏切らない》と書かれている。


「これなんて書いてあるか読めるか?」

「畑は俺を裏切らないって書いてありますね」

「じゃあ、これの答えはわかるか?」


 私が暁の魔王の背中の文字を読むと今度は白夜の魔王が紙を咥えて私の頭に停まり、その紙を見せてくる。

 というか、そこ定位置にしないでくださいね。

 そんな事を考えつつ紙を見るとそこには簡単な化学式が書かれていた。

 《NaOH+HCl=》


「これの答えは、水と(えん)ですね。化学式で言うならH₂OとNaClですね」

「「こいつ黄昏の魔王だわ」」


 私が答えると両魔王は声を揃えてそう言う。

 えぇ・・・もっと専用の魔道具とかで調べるんじゃないの?


まだもうちょっと過去が続きます。

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