魔王会議前の準備
おはようございます。
第50話投稿させて頂きます。
前回は私生活が忙しく投稿できずすみませんでした。
楽しんで頂けたら幸いです。
カタカタと心地良く揺れる馬車の中から私は暁の国の古き良き田園風景を再び見ている。
なぜ、再び暁の国に戻って来たのかというと今回の魔王会議が暁の国で開かれるからである。
その事を憤怒の魔王に教えて貰い憤怒の魔王の好意で一緒に暁の国に来たのである。
この国で魔王が皆集まる会議が開かれるんだったら急いで次の国に行こうとしないでもう少し待っていれば良かったよ・・・そういえば会議が有るって門番さんが言ってたなぁ・・・
「はぁ~」
「どうした?疲れたか?」
私の溜息を聞き、憤怒の魔王が心配そうに聞いてくる。
憤怒の国での顔合わせの後からなぜだか分からないけど色々と気にかけてくれているのだ。
クロノスは妖しそうに見ていたけど眼で見ても悪意はないので暁の国に戻る際の脚の手配とか色々とお世話になっている。
それにしても本当に何で急に色々と気にかけてくれるのだろう・・・?
「あ、いえ、ちょっと自分のそそっかしさに呆れていただけです。もうちょっと待っていれば良かったんだなぁって思ってしまって・・・」
戻るための足まで用意してくれた憤怒の魔王にこんな事を言うのもどうかと思うが、正直私の手際はかなり悪い。
「はーはっはっはっはっは‼気づいて暁の国に留まっていたら俺とは会えなかったではないか‼そんな事で溜息など着くな、幸せが逃げるぞ?」
笑ってそう言いながら憤怒の魔王は私の頭を撫でで来る。
なんだかんだでこの人よく笑うなぁ、怒っている感じなんて最初の時しか見たことないや。
それにしても私の事を結構気に入ってくれているみたいだけど一体何をそんなに気に入ってくれたのだろう?こればっかりは眼で見てもわからなかった。ちなみに今はちゃんと片眼鏡を付けていますよ。だって情報量が多すぎるんだもん。
他愛のない話を憤怒の魔王としている間に馬車は暁の国の首都暁に入る。
会議は明日なのでそのまま宿に行くのかと思ったが、意外な事に街中にあるお店の前で馬車を止めた。
よく見るとドレス等を扱っている服屋さんの様だ。
はて?服屋さんに何の用事だろう?
「降りるぞ」
そう言って憤怒の魔王は馬車から降りる。後ろの方から着いてきた馬車からクロノスと毛玉ちゃんも不思議そうな顔で降りてくる。
「あの、何か服を買うんですか?」
憤怒の魔王に疑問に思い聞く多少呆れたような顔をしながら答えてくれる。
なぜ呆れたような顔をされたのだろうか?解せぬ・・・
「コハクよ。今回の会議はお前さんの初お披露目になるのであろう?まさかその黒コートで出席するつもりではなかろうな?」
「え・・・?まさかも何もそのつもりでしたけど?」
きょとんとした顔で憤怒の魔王にそう告げるとマジかというような顔をする。
何か問題でもあるでしょうか?
「我が魔王、さすがに初お披露目の場でその恰好はないと思います」
いつの間にか近くに来ていたクロノスも呆れ顔である。
なんだよ、なんか文句あるのかよ。
「まぁ、そういうことだ。ここでドレスを見立てて行くぞ。オーダーメイドでなくとも此処の商品は良い物ばかりだ。・・・・・・・そもそも、原初と呼ばれている魔王が三人共初披露目の時に正装じゃないというのは格好が着かんだろう・・・」
最後の方はボソッと独り言の様に言っていてよく聞こえなかったが、まぁ、要するに正装した方が良いのね。
・・・お金大丈夫かなぁ・・・
「わっ‼」
そんな事を思っていると憤怒の魔王はひょいっと馬車から私の事を抱き上げそのまま片手で抱くと店のほうに歩いていく
「あの・・・歩けますよ?」
「気にするな。俺がこうして歩きたいのだ。それにしても軽いなちゃんと食べているのか?」
抱っこされて中に入るのは流石に恥ずかしいので歩けると言ったのだが、非常に楽しそうにかわされてしまった。
まぁ、楽しそうなら良いか・・・それにしても本当に何処をそんなに気に入ってくれたのだろうか?
そんな会話をしながら店の中に入る。
「Hey、らっしゃイ」
お店に入ると服屋さんとは思えない挨拶が外国の人が慣れない日本語を使っているような独特なイントネーションで飛んで来てカウンターから青い毛並みの猫の獣人が出てくる。
店主さんだろうか?
「おや?憤怒の魔王じゃないですカ?お久しぶりですネ。今日は何をお探しですカ?」
「久しいな。トム殿、今回は俺の服じゃなくこの子のドレスを見繕ってくれ」
そう言いながら抱っこしていた私を下ろして店主さんの前に立たせると店主さんは私の着ているコートを見て目を丸くしている。
「Oh‼このコートはどうしたんですカ?」
目を丸くしながら私のコートを触り懐かしそうな顔で触っている。
それにしても青い毛並みにトムって名前って・・・色々とアウトではないだろうか・・・良かったジ◦リーって名前の茶色い鼠が居なくって・・・
「えっと、人間領に居る知り合いのお兄さんから頂いた物です。聞いた話によると暁の国で作られた者みたいですけど・・・」
そこまで言ってふとこのコートをくれたアデルさんの言っていた猫の獣人がこの人ではないかと思う。
なるほど、だから懐かしそうな顔をしていたのか
「なるほど、ミーを助けてくれたあの青年から貴女へ送られた物でしたカ、久しぶりに私の最高傑作を見れましタ。では、貴女のドレスを選びましょウ。ジュリー、彼女に似合いそうな物を奥で見繕ってくださイ」
「ハーイ、今行くから少し待っていて」
そんな声が聞こえて来て奥の方から茶色い髪に茶色い鼠耳の獣人の女の人がパタパタと駆けてくる。
あ~、やっぱりこの人だったか・・・それにしても、ユがエじゃなくて良かった・・・
「あら?憤怒の魔王様が子供を連れているなんて珍しいですね。どの様なドレスが良いですか?」
「明日の魔王会議でこの子が黄昏の魔王だと他の魔王に公表される。それに相応しい物を頼む。クロノスとトム殿少し向こうで話せるか?」
「OKですヨ」
「わかりました」
「じゃあ、貴女はこちらにどうぞ」
私が黄昏の魔王と聞きトムさんとジュリーさんは一瞬驚いた顔をしたが直ぐに仕事をする頭に切り替えた様で私は奥の部屋に連れていかれた。
クロノスとトムさん、憤怒の魔王は何か話すらしい。クロノスはまだわかるけど何でトムさんも?
「さてと、どんな色が合うかしらねえ~。コートは脱いでそこに置いて待っていて私は何着か持ってくるから、女の子のお客さんのドレスだからねぇ~気合い入れるわよ」
ジュリーさんはそう言いながら鼻歌交じりにドレスを取りに一旦外に出て行った。
個人的にはドレスよりも先代の黄昏の魔王について聞きたかったんだけどなぁ・・・
取り合えずドレスを合わせるためにコートとか脱いでおこうかな。
「お待たせ~、合いそうなものを持ってきたからどれが一番いいか試着してみましょう♪」
コートを脱いで畳んで置くとタイミング良くやたらとご機嫌な感じのジュリーさんが何着ものドレスが掛かったスタンドを持って帰って来た。
・・・えぇ・・・ちょっと数が多すぎません?
「それにしても今代の黄昏の魔王様がまさかそのコートを着て来るとは思わなかったわ~。面白い巡り会わせね・・・」
「あの・・・このコートと先代の黄昏の魔王に何か関係が有るんですか?これをくれた人は恐らくトムさんと思われる獣人さんから名のある龍の素材から作られたって聞いたそうなんですけど?」
ジュリーさんにドレスを合わせて貰いながら聞いてみると何とも言えない顔になりながら答えてくれる。
それにしても、サイズを測ってないのにほぼピッタリなサイズのドレスを持ってきてくれるなんてすごすぎない?
「あーっ、そのコートはね。先代の黄昏の魔王様を数日間しつこく追いかけまわしたのちに毟り取った鱗をあの人がスキルで加工した物なのよ。あの時は付き合わされて絶対離婚してやるって思ったわ」
「え゛」
うえぇぇぇぇぇぇ⁉ストリアさん狩られかけてたぁぁぁぁぁぁぁ⁉
てか、嘘でしょ⁉あの龍から素材を毟り取ったってどんだけ強いのよ⁉てか、そんな人が何で魔物に遣られかけてるの⁉
「先代の黄昏の魔王と戦ったんですか?よく生きてましたね・・・」
「戦ったんじゃなくて逃げる黄昏の魔王様を追いかけまわして隙を突いただけよ~。青色が良さそうねぇ。背中の傷を隠すためにもゴシック形式の物が良さそうねぇ。可愛い子が着るとなるとやる気出るわぁ。男の子も良いけどやっぱり女の子も産みたいわねぇ」
ジュリーさんの言葉を聞き私の頭の中には、某有名ゲームの猫のハンターさんが思い浮かぶ。
そして、そんな事を考えている合間にも着々とドレスが決まっていく。
・・・お値段は一体いかほどなんでしょう?
「あの・・・なんで黄昏の魔王から素材を剥ぐ様な人が魔物に襲われたんですか?」
「その時あの人ギックリ腰やっちゃってねぇ~、ついうっかり魔物に襲われた所に貴女にコートをあげた冒険者の青年に助けられて気に入っちゃったみたいでねぇ。それが今ここに戻って来たんだから面白いわね。はい、髪飾りはそのままで良いとしてドレスとそれに合わせる小物も決まったわ。きつい所とかない?」
鏡に映る自分を確認し、少し動く。激しい動きは出来ないがまぁ、ドレスってそんな物だししょうがない。
問題なのはお値段だ…
「大丈夫そうです。あの・・・ジュリーさん、このドレスって一式でどれぐらいするんですか?」
不安げにジュリーさん聞くと笑顔で「今は知らない方が身のためよ~」っと言われてしまった。・・・ドレスの値段って怖い。
「そもそも憤怒の魔王様がここに連れて来たんだから支払いは憤怒の魔王様がしてくれるわよ」
「いや、そんな事をしてもらう理由が無いんですけど・・・」
ジュリーさんの言葉に反論する。そもそもまだ憤怒の魔王とは会って数日しかたっていないのだそんな事をしてもらうわけにはいかない。
「新しい魔王をエスコートするんだものそれだけで十分な理由よ。第一に貴女の事を相当気に入っているみたいだしね。あの方が楽しそうに子供を抱っこしている姿なんて初めて見たわ。断ったらガチな泣きするかもしれないわよ?見たい?」
「・・・見たくないです」
「じゃあ、憤怒の魔王が支払うって言ったら素直に受け入れてあげなさい。その恰好見たら十中八九喜ぶわよ~」
私に断られたぐらいであの憤怒の魔王がガチ泣きするなんて思えないけど大の大人がガチ泣きする姿は正直見たくない。まぁ、まだ憤怒の魔王がお金を払うって言うって決まったわけではないけど・・・
そんな話をしながら私はドレス姿のまま憤怒の魔王が待つ方にジュリーさんに手を引かれ向かっていく。
「ほう、良いではないか。トム、いくらだ?」
「我が魔王、素敵です。憤怒の魔王様、支払いは私が致します」
見た瞬間クロノスと憤怒の魔王は私の事を褒めてくれた。そして、それと同時にどちらが支払いをするかで揉め出したのだった・・・結局ドレスは憤怒の魔王に買ってもらうことになった。
話が纏まったところでトムさんとジュリーさんに《先代の黄昏の魔王》の素材と《氷河の龍》の素材を使っての今後の服や装備の制作を依頼した。聞けばこのドレスも魔物の素材を使っていて普通の服より防御力がある。てか、単純に並みの服より強い。
二人共快諾してくれた上にこの素材は私と私がお願いした人の為の防具にしか使わないとまで約束してくれた。
トムさんの店を出て私達は明日に備えて休むために宿に向かった。
ご飯を食べ明日の打ち合わせをしている際にクロノスと憤怒の魔王から明日の会議では最初にクロノスが名代として出席しておき、私は憤怒の魔王に抱っこされた状態で出席して、少ししてから全魔王に紹介されることになった。
なぜそんな面倒くさい事をするのかと聞くと二人はいたずらを仕掛ける時の子供の様な笑顔で「他の魔王がどんな顔をするか見たくないか(ですか)」と言ったのであった。
・・・ちょっと見ない内になんか仲良くなってない?
次回会議編に入ります。
よろしければ評価ポイント等よろしくお願いいたします。




