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海王国メルルク

おはようございます。

評価・ブックマークありがとうございます。

第47話投稿させて頂きます。

☆は別の人物の視点です。

楽しんで頂けたら幸いです。

 《不死者の森》の森を抜けてから数日後、私達は特にトラブルに巻き込まれることもなく無事に海王国メルルクに到着した。(クロノスは一応無事だった)

 メルルクのギルドに寄り、依頼完了の報告と《黒の伝説》の連中を引き渡し解散する事になった。

 ちなみにファルナさんは当初の予定通り《旅人(ヴィアッジャトーレ)》に入る事になった。

 もっと言うとこの数日間で《ホーリーサークル》もしっかりマスターしてしまった。


「では、皆さん。またご縁がありましたらよろしくお願いします。」


 ルガーノさんに挨拶を済ませ、《旅人(ヴィアッジャトーレ)》の皆さんにも挨拶をする。(途中ディオロさんとアルデさんの間にフェルシアでやっていた様なやり取りが有ったがそこは華麗にスルーしておく)


「それじゃあ、私も行く所が有るので失礼します。今回もありがとうございました。またご縁が有ったらよろしくお願いします」

「ああ、こっちこそありがとうな。まだまだ大変みたいだが気をつけてな」

「はい、それでは失礼します」


 ラゴンさん達と別れを済まし、私は乗船券を買う為に事前にギルドに教えて貰っていた船着き場に向かう。


「すみません。暁の国に行くための切符を一枚お願いします」


 受付のおじさんにそう告げると思いっ切り怪訝そうな顔をされてしまった。まぁ、わかってたけどね。


「暁の国行きの船?お嬢ちゃん、魔族領には最低でも《オパール》クラスの冒険者か護衛を連れた人間しか行くことを許可されてないよ」

「これですよね」


 渋い顔をしながら説明してくれるおじさんに冒険者の登録証であるドッグタグを置く。


「なっ!?嬢ちゃん、これマジか!?偽造じゃないだろうな?」


 ドッグタグを見た受付に居るおじさんは怪訝そうな顔から驚いた顔になりそんな事を言って来る。

 失礼な‼ギルドの登録証が偽造出来ない事ぐらい知ってるでしょ‼


「正真正銘、私の物です。それで、切符はいくら何ですか?」

「あ、ああ・・・悪かったな。切符は一等級の個室で金貨2枚と小金貨3枚、二等級の個室が金貨2枚、三等級が金貨1枚、四等級の個室が小金貨8枚、四等級で相部屋でも良いなら小金貨5枚と銀貨が7枚、大部屋雑魚寝で更に冒険者なら船の護衛もするなら小金貨1枚だ」


 おじさんはまだいささか疑っている様子だが切符の代金を教えてくれる。

 ふむ・・・やっぱり一等級、二等級、三等級は値段が結構張るようだね。大部屋で雑魚寝はなるべくならご遠慮願いたいし、海の上での戦闘なんてはっきり言って勘弁してもらいたい。となると、四等級かなぁ・・・問題は相部屋にするか個室にするかか・・・

 ルガーノさんの依頼やフェルシアでの依頼で金銭的には結構余裕も出来たし、毛玉ちゃんも居るし、少し贅沢しても良いかな


「四等級の個室の切符を一枚ください」

「あいよ。船の出港は明日の12時だ」

「ありがとうございます」


 お金を払い、切符を受け取り私は今日の宿を取るために街の方に戻ることにした。

 宿を無事に確保し、私は黒コートから着替えて今回の依頼で消費した食料や道具を補充するために市場の方を見に行く。

 船の出港は明日だし、少し観光しても罰は当たらないだろう。何より魔族と交易を行っているこの国にどんな物が有るのかも興味がある。

 そんな事を考えつつ着替えを済ませフードの代わりに頭巾を被り寝ている毛玉ちゃんとまだ少しぐったりしているクロノスを部屋に残し借りた部屋を後にした。


「おぉ~、すごい‼カルルカやフェルシア、学校が有ったイリアの首都ミレイアとも全然違うや」


 港の国の独特な街並みを楽しんでいると魚介を焼く良い匂いが漂って来る。

 それと同時にお腹がきゅ~っと鳴る。


「そういえば、そろそろお昼か・・・丁度良いし何か食べようかな」


 ふらふら~っと屋台に近づき串焼きになっている魚介類を買い食べながら歩いているとふと野菜を売っている店の商品に目が留まる。


「え…これって、ジャガイモ?」


 そのお店には前世でもよく目にしていたがこの世界では見ていないジャガイモ(正しくは書いてある商品名は馬鈴薯)やよく見ると人参なんかも置かれている。


「いらっしゃい‼何か探してるのかい?」


 少し驚いて商品を見ているとお店の女将さんと思われるおばさんが声を掛けて来てくれた。


「あの…これって…」


 私が不思議に思いながらジャガイモや人参を指差すとおばさんは慣れたように説明してくれる。恐らく商人や観光客がよく聞くのだろう。


「あぁ、外から来た子かい?これは馬鈴薯と言って暁の国で採れる野菜だよ。このまま茹でて食べても美味しいし、油で揚げても絶品だよ」


 知りたかった情報を教えてくれたおばさんにお礼を言い。ジャガイモを含めた幾つかの野菜を購入してから街の観光を再開する。

 それにしても・・・暁の国で地球の野菜が栽培されているとは・・・今代の暁の魔王ってどんな人なんだろう?

 そんなことをぼんやりと考えながら歩いていると金髪の女の人が何かを落としたのが目に入る。

 女の人は気が付かず。どんどん歩いて行ってしまう。


「あの‼すみません‼」


 女の人の落としたブローチを慌てて拾い声を掛けると女の人は驚いたように振り返ってくる。


「これ、落としましたよ?」

「うん?あぁ♪拾ってくれたの?ありがとう♪」


 近づいて女の人の落としたブローチを渡すと女の人は嬉しそうな顔で受け取りお礼を言って来る。

 よく見ると綺麗な金髪と黄金の瞳を持つとても綺麗な顔立ちの女性だがあっちこっちに包帯を巻きとても痛々しく見える。


「いえ、あの…とても大怪我をされているようですが、大丈夫ですか?」

「あぁ♪ちょっと前の仕事でしくじっちゃってねぇ♪一応大丈夫だよ♪心配してくれてありがとう♪」


 私の質問に何も問題が無いと答えると女性はくるりと体の向きを変える。


「それじゃあね♪拾ってくれて本当にありがとう♪」

「いえ、それでは失礼します」


 女性と別れ、私は再び買い物をしながら街を観光し、宿に戻り、翌日の船で魔族領に向かうのだった。

 この時の私は観光気分やいよいよ人間領を離れる不安が大きく先代魔王の忠告を思い出すことが出来なかった。



              ☆


「ねぇ♪そこで何をやってるのかな♪」


 ブローチを拾ってくれた少女と別れ、私は建物の路地に入るとそこには浅黒い肌色をした男女4人が武器を片手に隠れている。

 私に見つけられたのが意外だったのか軒並み驚いた顔をしている。

 全くこんな人の多い所で何を企んでいるのやら・・・

 心の奥底で呆れているとリーダー格と思われる男が耳障りなキーキー声で答えてくる


「なっ⁉なんだよ⁉てめぇには関係ないだろ⁉俺っち達はさっきあんたと話していた餓鬼に用事があんだよ‼関係ない奴は黙ってろ‼」


 やれやれ、本当に耳障りな声だ・・・でも、欲しい情報は手に入った。

 なるほど、先程私が落としたブローチを拾ってくれた少女に何かをするつもりのようだ。

 ステータスがそれなりに高い冒険者が町娘にどんな恨みが有るのやら全く大人気な・・・ん?訂正だね。大したステータスも持ってない癖によくやる。

 碌な実力もない癖にプライドや態度だけは大きいタイプか・・・一番嫌いなタイプの奴らだ。

 それに私の大切な物を拾ってくれたあの少女が獲物だと分かったからには黙って見ている訳にもいかない。


「う~ん♪さっきの子に何かするつもりなら黙っている訳にはいかないかな♪」

「はぁ?てめぇには関係ないだろ‼失せろやぁ‼」


 そう言いながら剣を抜こうとする男に私は()()()()()()()を左右に振りながら声を掛ける。


「なるべくなら穏便に済ませたいなぁ♪大体その右手で剣を振れるの?」


 私の言葉に訝し気な表情をした男の右腕がグシャっと湿った音を立てて地面に転がる。

 その光景を未だに認識できないでいるような顔をしている。


「ギャァァァァァァァァァァァァ、お、俺の腕がぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 現状がやっと認識できたのか耳障りな声で悲鳴を上げる男を冷ややかに見る。

 全くうるさいにも程がある予め消音の魔法をこの辺に使っておいてよかった。

 それにしても自分の事にしか気が付かないなんて、なんて愚かな男だろう。


「お、お前等先にこいつを殺せ‼」


 男が叫びながら後ろを向いた瞬間、更にグシャっと音がして三つの肉片が崩れ落ちる。

 男は仲間だったソレを呆然とした顔をして見つめている。どうやら完全に頭のキャパシティーを超えたようだ。まぁ、あまり容量の多い頭にも見えなかったけどね。


「おっ、お前…何時剣を抜いてたんだよ…お、俺っちが悪かった。どうだ俺っちと組まないかあんたの配下になら喜んではいるぜ」


 調子に乗った態度から一転して怯えたような顔でそんな事を聞いてくる男を唯々見つめる。

 私が何時剣を抜いたのか見えなかった時点でこいつと話す価値はない。どうせもう長い命でもないしね。


「バイバイ♪来世ではもう少しまともな人生を送れたらいいね♪」


 笑顔で男にそう言いながらそばを去るために後ろを向く。

 安堵した様な息が聞こえた瞬間グシャリっと湿った音が鳴り男だったものが無数の肉片になって地面に転がる。

 全く実力差がわからない相手に挑んでくる愚者を相手にする事ほど疲れることはない。もっとステータスを強化してから喧嘩を売ってほしいものだ。

 剣を鞘にしまいながらそんな事を考えているとふと違和感が湧いてくる。そういえば、先ほどブローチを拾ってくれた少女のステータスは見えていただろうか?

 そんな疑問を抱えながら私はひとまずその場を離れることにした。


              ☆ 


次回はやっと魔族領に入ります。

ごゆるりとお待ちいただけたら幸いです。

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