何かを忘れている様な気がする・・・あっ・・・クロノス・・・
おはようございます。
評価・ブックマークありがとうございます励みになります。
遅くなりましたが46話投稿させて頂きます。
☆は今回ラゴン視点です。
コハクは少ししか出てきません
☆
チュンチュンと鳥の鳴き声で目が覚める。
「生きている…」
草の上で大の字になったまま自分が五体満足で生きている事を確認し、回りを見渡す。
周りには昨夜のゾンビ襲撃時に固まった自分のパーティーメンバーと《黒の伝説》のメンバーであるファルナさんが気を失っており、少し離れた所でこの中で最年少であり、昨夜のゾンビ騒ぎの際に全員気絶の原因を作った少女コユキが気を失っている。
恐らく実力的にもこの中で一番だと思われるこの子が、アンデットがダメとは夢にも思わなかった。
昨夜のゾンビ襲撃時の彼女を思い出し思わず苦笑してしまう。
体を起こしとにかく目的地に向かう為の準備をするために皆を起こす。何より先ずはなぜゾンビの襲撃を受けたのか確かめなくてはいけない。
「アンデット系苦手だったんだね…」
「なんか意外だな…」
「子供らしいといえば子供らしいですね」
「すみません…正直すごく驚きました」
「子供っぽくないロリに意外な弱点、良いアクセントです。最高です。本当にありがとうございます‼」
先ず周りの皆を起こすとアルデ、フェリド、カイン、ファルナさん、ディオロの順に口々にそんな感想を言い出した。
「でも、魔法の直撃をくらったのに何で生きてるんだ?」
「恐らく光の上位属性である神聖属性だったからじゃないかと思われます。あぁ‼あの年で神聖属性を使うなんてなんて不思議なロリなのでしょう‼」
「う~ん、神聖属性というのもあるでしょうけど恐らくコハクさんの技量じゃないかと思います。私も神官なので神聖属性は使えますけど神聖属性でも人を傷つける事は出来ますので…」
フェリドの疑問にファルナさんとディオロが仮説を話し、そのまま議論を行っている。確かに興味深い話だが、今はそれよりもやらなければいけない事がある。
「さて、気になる事は多々あるが、今はやらないといけない事がある。フェリド、ディオロ、アルデの三人でコユキが魔道具を使った場所を見に行ってくれ、何か異常があるかもしれない」
「了解」
「わかりました」
「行ってきます」
三人は魔道具を設置した場所に向かうのを見送ってから残ったメンバーに指示を出す。
先ずは姿の見えない《《黒の伝説》》の連中を探してから撤収の準備をしてコユキを起こさないといけない。
「カイン、ディオロさん、二人は俺と一緒に《《黒の伝説》》の捜索と荷物の片づけ、あと、コユキとルガーノさんを起こす作業をやって貰う」
「はい」
「わかった」
「じゃあ、《《黒の伝説》》の捜索から始める」
捜索を開始してから数分後、ルガーノさんの荷馬車で逃げようとしていた《《黒の伝説》》連中を拘束する事が出来た。恐らくゾンビの軍団を前に護衛であるルガーノさんの事を押し退け荷馬車に乗り込もうとした所でコユキの魔法で気絶したらしい。完全な契約違反を犯してくれたお陰でギルドへ突き出す良い口実が出来た。
内心でほくそ笑みながらルガーノさんの許可を得て荷馬車に放り込み次の行動に移る。
荷馬車から出てコユキの方に行ったカインとファルナさんを見るとなんだか困惑した様子で立ち止まっている。
「二人ともどうしたんだ?」
戸惑っている二人に声を掛け自分も二人の方に向かう。
「いえ…その…これは見てしまって良かったのでしょうか…」
二人の近くに行ってコユキを見て納得する。普段フードを被って顔を隠しているコユキは昨日の影響かフードが脱げ顔をしっかり出した状態で気絶している。
「あ~、なるほど…取り合えず見なかったって事にしましょう」
「そうですね。隠していたという事は何か理由が有るんでしょうし、見なかった事にしましょう」
「…そうですね。その方が良いですよね…」
コユキの顔を見て三人で見なかった事にしようと話し合いフードを被せる。
それにしても本当に何で顔を隠しているのか・・・
そのまま寝かせておこうという話になったので握っている剣を鞘に入れ(思いっ切り握っていたため剣を抜く事が出来なかった)またもやルガーノさんに許可を取り荷馬車に寝かせた所でフェリド達が帰って来た。
報告を聞くと昨日コユキが設置した魔道具は一つ足りなくなっていたらしい。
《《黒の伝説》》の持ち物を確認するとやはり無くなった魔道具が出てきた。
依頼の契約違反に加えて窃盗とは…これで更に重い処分を受けさせることが出来る。
そんな事を考えながら荷物をまとめ、俺達は《不死者の森》を無事に抜けることが出来たのだった。
☆
「取り乱して魔法打ってすみませんでした‼」
《不死者の森》を抜けてから少しして目を覚ました私は、寝かされていた荷馬車から降り休憩をしていた皆に土下座して謝罪している。(この世界に土下座は無いと思うけど)
いくら生身の人間に危害がない魔法を使ったからと言ってソレを知っているのは私だけなので他の皆は生きた心地がしなかっただろう・・・誠に申し訳ない・・・
「いやいやいや、人間誰でも一つや二つ駄目な物は有るんだし、皆無事だったんだから気にしなくても良いと思うぜ」
「そうです。そうです。むしろ珍しい姿が見られたので役得でした」
皆が口々に気にしなくて良いと言ってくれたので私はとりあえず顔を上げる。
「ところでコユキちゃん、なんかそのコートおかしくなってない?顔がはっきり見えているけど?」
「あ~、昨日の魔法の所為でこのコートにかけて貰っていた魔法が解除されちゃったみたいで…」
アルデさんの言葉に微妙な感じで答える。
今のこのコートは普通にフードを被ったのと同じぐらいにしか顔を隠せない。何故かというと昨日の《ホーリーサークル》の所為でかけていた闇魔法がすっかり解除されてしまったのだ。使える魔法は極力隠したいのでこの仕事中はかけ直す事も出来ない。皆の前に顔を出す前だったら何とか為ったのだが悲しい事に気づいたのは皆の反応を見てからだった。
「まぁ、俺的には見たかった顔も見れたし、もうそのままで良いんじゃない?隠すような顔でもないしね」
「でも、この髪の色と目の色ですよ?不気味じゃないですか?」
クラシア王国で散々酷い目に会っているので未だに他人はこの目と髪が不気味だと思ってしまう。
カルルカの皆は気にしなかったので私が気にし過ぎの様な気がするのだが・・・
「「「「「「「え?全然気にしなくて良いんじゃない?」」」」」」」
うん、100%私が気にし過ぎているだけみたいだ・・・
「あ、そうだ。コユキちゃん、あの神聖属性の魔法なのだけど良ければ私にも教えてもらえないかしら?」
「《ホーリーサークル》をですか?」
「えぇ、無理にとは言えないけど・・・」
「良いですよ。メルルクに着くまでまだちょっと有りますし、その期間で良ければ」
「えぇ、大丈夫よ。よろしくお願いします」
ファルナさんに《ホーリーサークル》を教える約束をし、昨日の事に関する情報の共有を済ませ、私達は再びメルルクに向けて進みだした。
・・・あれ?そう言えば何かを忘れているような・・・
ふと、気になって私は自分のコートの中を覗き込む。
そこには神聖属性の魔法を浴びてカラカラに干からびたクロノスがぶら下っていた。
あっ・・・クロノス忘れてましたわ・・・
人間の領地から出られませんでした・・・
次回こそは出られて魔族領に行けるようにしたいと思います。
ごゆるりとお待ちいただけたら幸いです。




