このチャラ男いつか〇す・・・
おはようございます。
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第44話投稿させて頂きます。楽しんで頂けたら幸いです。
「えーっと・・・軽い調査のつもりが結局全滅させてしまったと・・・」
「あ~、はい、その通りです・・・まぁ、色々と予想外の事態が重なったというかなんというか・・・」
「無理はしないように言ったんだけどねぇ~」
「あ~、別に無理ではなかったんですけどねぇ~」
ギルドの支部長室でそんな会話をしながら私はフィルクス支部長に依頼の報告をしながらクルアさんが入れてくれたお茶に口をつける。
あの後、ゴルクさんには魔族領に帰還するように話して別れ、私はネーヴェさんの仔である毛玉ちゃん(名前はまだ無い)を連れてクロノスとギルドに戻り、クルアさんにゴブリンの耳及びゴブリンキングの王冠を渡し、結果を報告したところ支部長室に連れていかれて詳しい報告(もちろんゴルクさんやネーヴェさんの事は無駄な混乱を避けるために省いた)をし、今に至る。
「あ~、うん、まぁ、本当は危険な真似は駄目って叱るべき何だろうけどねぇ~。まぁ、今回は無事に帰ってきてくれた上に厄介そうな案件も片付けてくれたという事で何も言いません。それと報酬の方もちょっと上乗せさせていただきます。ギルドランクについては本部に連絡する必要もあるので後4日程待ってください」
フィルクス支部長は微妙に何か言いたげだが飲み込んでくれたらしく話題を変えるために現在私の膝の上で寝ている毛玉ちゃんに目を向ける。
「それでコユキさん。さっきから気になっていたんだけどその仔は何なんだい?」
毛玉ちゃん(仮)を指差し少し困惑した様子で聞いてくる。まぁ、普通に考えて見たこと無いような生き物を連れて来たらこんな反応になるよねぇ。
《氷河の龍》の子供ですなんて素直に言ったら大混乱になるし、そもそもネーヴェさん達との事は話していないし、さて、どう答えたものか・・・
「あ~、え~、なんと説明すれば良い物か・・・ゴブリン達が巣にしていた洞窟でたまたま保護した(現在は)無害な魔物の仔と言いましょうか・・・なんと言いましょうか・・・まぁ、その私の友達です」
支部長から目をそらしながら膝の上で寝返りを打ちお腹を上にして眠っている毛玉ちゃんを撫でながらお茶を濁すような言い方で答える。
まぁ、現在は無害な赤ん坊なので嘘は言っていない。成長した後?そんなの知らん。
「え~、じゃあ、とりあえず従魔登録をするために連れてきたのかな?」
支部長がどう対処したものかという感じで聞いてくる。
従魔登録か・・・あれって従魔の契約を結んでないと意味が無いんじゃなかったっけ?この仔と従魔の契約なんて結んでないし断っておこう
「いえ、この仔一匹にはしておけないので連れてきただけです。従魔登録はするつもりもありません」
「あ~、そうなの?まぁ、問題を起こさなければ良いから気を付けておいてね」
「はい」
「それじゃあ、詳しい話も聞けたし、今日はもう解散しましょうか、報酬は後で受付で渡します。ギルドランクはさっきも言ったように少し待ってください」
「わかりました。あ、そうだ。支部長さん、ギルドランクの事が済み次第、海王国メルルクに向かいたいのですけど何か良い依頼があったら教えてもらえませんか?」
毛玉ちゃん(仮)を抱き上げて立ち上がる前に次の目的地に近いかその場所に行く良い依頼があるかを聞いておく。どうせ行くならお金が貰えたほうが嬉しい。
「何件か有ると思うからギルドランクが上がった後に教えてあげられるようにクルアに伝えておくよ」
「ありがとうございます」
支部長に頭を下げ、私は毛玉ちゃん(仮)を抱いて支部長室を後にして報酬を受け取った後で自分の宿に戻るのだった。
『ヒヒーン』
(やっぱりキャロルは南のものが一番だと思うんだよね。俺は)
『ヒッヒーン』
(分かる。あのカリッとした歯ごたえと芳醇な甘み、いつもいつもハードな仕事だしもっと食いたいよな)
ゴブリンとの戦闘から数日過ぎギルドから正式に《オパール》クラス(下級)の冒険者として認められてクルアさんから海王国に行く護衛の依頼を受けてから数時間後。
依頼主であるルガーノさんと一緒に他の冒険者を待っている最中に繋がれていた2頭の馬の会話?に私は思わず頭を抱えてしまう。ちなみにキャロルはニンジンに似た植物だ。
数日前のゴブリンとの戦闘でありがたくもないのに又もやバージョンアップを果たしたのであろう眼は一般飼育さえている動物の心の声まで翻略され分かるようになってしまったのだ(その癖一緒にいる毛玉ちゃん(仮)の声はわからないという使えなさだ)。
・・・この眼バージョンアップ毎にいらない進化遂げてない?
まぁ、バージョンアップも悪い事ばかりではないので文句も言えない。
動物の心の声がわかるようになった他にスキル等の細かいステータスの表示が任意になったのだ。そこだけは感謝したい。
「まぁ、まだまだ問題は山積みなんだけどねぇ~」
そんな独り言を呟きなら片眼鏡を付けなおし、毛玉ちゃん(仮)を撫でていると5人組の冒険者パーティーこちらに向かってくる。見たことがある顔だったので私は、フードの下で軽く笑顔になっていた。
「あれ?コユキちゃんじゃん。久しぶり~、ひょっとしてコユキちゃんもこの依頼を受けたの?」
フェリドさんが私の事を見つけて声を掛けながら歩いてくる
他の4人も気づいたみたいで手を振ってくれる。
「皆さん。お久し・・・」
はっ‼殺気!?
皆に挨拶をしようと思った私は言い知れぬ寒気を感じ今いる場所から一気に飛び退く
何事かと思いさっきまで自分がいた場所を見ると両手を広げたディオロさんの姿がそこにあった。
怖‼今までそこにいませんでしたよね⁉強化魔法でも使っているんですか⁉
シャーっと威嚇しながらディオロさんと距離を取っていると残りのメンバーも合流してくる(合流と同時にアルデさんは流れるような動作でディオロさんを捕獲した)。
「・・・改めてお久しぶりですね。コユキさん、お元気そうで何よりです。無事に試験にも合格できたみたいですね」
「はい、お陰様で無事に合格できました」
ディオロさんを警戒しながらカインさん達に挨拶をする。
「うん?もう《オパール》に為ったのかたった数日で?早すぎないか?」
見えるように下げていた(規定により絶対に見えるところに下げることになっている)ドッグタグをみてラゴンさんが不思議そうに聞いてくる。
「あ~、なんか、討伐試験を受けた際にやたらとハードモードだったお詫びと合格したご褒美みたいなものらしいです」
私は顎のあたりに人差し指を付け少し小首をかしげながらこの間支部長さんに聞いたことをそのまま皆に話す。
その言葉を聞き、ラゴンさん達は驚いたような顔をしている。
「え・・・?あの討伐試験を合格したのかい?」
「それもハードモードって・・・」
「・・・それって《オパール》じゃ足りなくない・・・?」
カインさん達は私の言葉に呆然としながらそんな事を言う。
まぁ、普通の討伐試験でもエグイと言われているのに無駄にハードモードの試験だったのだ。こんな反応にもなるだろう。
「そういえばこの依頼を受けた冒険者ってこれで全員なんですか?」
なんとな~く、この話題を続けるのはマズイ気がして私は依頼主であるルガーノさんに確認をする。
「いえ、今回は海王国の方に向かうので少し人数を多く依頼しているのでギルドからの連絡だとあと数人ほど来てくださるそうですよ」
私の質問にルガーノさんは顎に手を当て思い出すように答えてくれる。気づけば約束の時間はとうに過ぎている。
う~ん、約束の時間はとっくに過ぎているんだけどなぁ~
「ち~す、おっそくなりましたぁ~、てか、これで全員っすかぁ~」
そんな事を考えているとチャラくて軽薄そうな浅黒い肌の茶髪の男達が遅れたくせに悪びれた様子もなく声を掛けてきた。
・・・訂正します。男を含めた5人のパーティーの中で恐らく神官職の色白な女の人だけが申し訳なさそうな顔をしている。
「あれ?俺等で最後っすか?ハハハハさーせん」
特に悪びれた様子も無く軽薄そうな男がしゃべり始める。これにはカインさん達やルガーノさんも思わず顔をしかめている。
「うん?このチビなんすか?戦力にならねぇ奴は早くどっか行けよ」
軽薄な男は失礼にも私の方を指差し小馬鹿にしてくる。その言葉を聞いて神官風の女の人以外はクスクスと笑っている。
全く低俗な人間には低俗な人間がくっついて来るもんだねぇ~。なんでこの女の人こいつらと一緒に居るんだろ?
「この子は今回正式に依頼を受けてくれた子です。仲良くお願いします」
「子供だからと馬鹿には出来ないですよ?そもそも、この子はここに一番に来ていたんですよ?」
軽薄男の言葉にルガーノさんとカインさんが表面上は穏やかに説明してくれる。
「はあぁぁぁ⁉こんなガキに何ができるんすか?まぁ、付いて来るんなら付いてくるで良いんすけど俺達は面倒見ないっすよ?まぁ、とりあえず挨拶しますか?」
軽薄男は尚も私の事を馬鹿にした様子で話し自己紹介をしようと促してくる。
・・・あんたらに世話になる事なんて何にもないわい‼いい加減にしろや‼
私はフードの下で笑顔を作りながら殺気を放ちそれに驚いた毛玉ちゃん(仮)が「ミッ⁉」と小さく悲鳴を漏らした所お互いに自己紹介を始めだす。
「俺たちはチーム《旅人》だ。俺はこのパーティーでリーダーをやらせて貰っているラゴンだ。こっちが副リーダーのカイン、あっちがフェリドで向こうの女性二人のうちメガネの方がディオロで緑の髪の方がアルデだ。武器は俺が大剣、カインが長剣、フェリドが短剣、ディオロが魔法使い、アルデが弓使いだ。」
ラゴンさんが渋い顔のまま取り合えずといった感じで自己紹介をする。
ちなみにこのパーティーはギルドでのランクとしては中級ぐらいの位置にいる。
「俺っち達は~《黒の伝説》っす。俺っちがリーダーのヴィオで長剣使いっす。こっちが副リーダーのファナで弓使い、背の高い男がブガで拳闘士、その隣の女の子がメルで暗器使い、その後ろにいる暗そうなのがファルナで神官っす」
「あ、私はコユキって言いま・・・」
「あ?役に立ちそうもないガキは名乗らなくって良いっすよ。時間の無駄になるし早く街を出ようぜ」
軽薄男のパーティーも自己紹介を済ませたところで今度は私が自己紹介をしようとした所で軽薄男が割り込んできて自己紹介を中断されてしまった。
このヤロ~~~~。お前等が遅れて来たせいで時間が押してしまったんだろ‼目的地に着くまでの数日間、月の出ていない晩も有るんだぞ?憶えておけよ?
ディオロさん達が文句を言おうとするのを表面上は穏やかに納め、先行き不安に為りながらも私達は目的地である海王国メルルクに向かうためにフェルシアの街を後にした。
ちなみに今回集まった冒険者で《アレキサンドライト》クラスなのはラゴンさんとカインさんで他は全員クラスの冒険者だった。
次はコハクが壊れます




