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喋るゴブリン

おはようございます。

第42話投稿させて頂きます。

楽しんでいただけたら幸いです。

「ギャアアアアアア」

「キキ――――――‼」


 朝早くの静かな森の中にゴブリンが悲鳴を上げながら逃惑っている。

 中には勇敢にも私に殴り掛かってくる個体も居たけど左手に持つカグツチを振るい一刀両断にする。全く自分達から喧嘩を売って襲って来たくせに不利と見ると逃げるとは…情けない。

 カグツチを一振りし、着いた血を振り払いゴブリン達を追う。

 クルアさん達には深追いはするなと言われたが、そもそも、私は目的地にたどり着けていないのだ。追いかけるしかない。

 現在私は昨日、支部長に依頼されたゴブリンの巣の偵察に来ている(当然片眼鏡は予め外してある)。

 なぜ、戦闘になったのかと言うと森に入って少しした所でゴブリンを見つけた瞬間に距離があったにもかかわらず私の方に気づいたのだ。

 なぜ、気づかれたのか疑問に思っているとクロノスが答えてくれた。

 要するに私が女だったのが原因らしい。

 なんでも匂いでばれたとか・・・こんな子供でも気づくなんて性欲強すぎるだろゴブリン。

 それで襲い掛かって来たゴブリンを迎撃し現在の状態に至る。

 それにしても、もうちょっと人型の魔物を切るのに抵抗が有るかと思ったけどやっぱり特に何も感じなかったか…不味いなぁ…これは人を切っても何も感じない可能性が有る…恐らく魔王化の影響が精神面にも来ているのかもしれない。

 人を切るなんて無いに越したことは無いけど現在の私の状況を考えるに絶対に無いとは言い切れない。


「はぁ、人を斬る事が有ったら気を付けないと…」


 自分の心情にガッカリしながら私は悲鳴を上げながら逃げるゴブリンを追いかけて行くのだった。

 ・・・あれぇ?小説とかだと泣き叫びながら逃げる冒険者をゴブリンが笑いながら追いかけるのが普通じゃない?



「…ここが巣かな?」


 悲鳴を上げながら逃げるゴブリンを追いかけて数十分私は洞窟の前でポツリとそう呟く。

 見るからに竜でも住んでいそうな大きな洞窟だ。

 全く持って面倒くさそうな場所に巣を作ったものだ…


「さてと…とりあえずゴブリンの巣を見つけたし、これで依頼は終了って事で大丈夫かな…支部長達にも無理はするなと言われているし、ここは戻って報告するか…まぁ、もう無理をするな、以前の問題で相当切り殺しているんだけどね…」


 そんな事をぼやきながら回れ右をして元来た道を戻ろうとするといつの間にか私は剣や槍や弓を持ったゴブリン達に囲まれていた。

 まぁ、巣の前で足を止めて考えていたらそら囲まれるよね。

 見ればその場のゴブリン達は何やら興奮しているらしく各々が武器を掲げて何かを叫んでいる。

 中には股間を膨らませている者までいる。

 こんな子供に性的に興奮するなんて…変態だ…

 そんなゴブリン達にドン引きしながらカグツチを構える。

 右側にいた一匹が鉄剣を私に切り付けて来るのを右手で受ける。コートに当たった剣はガキンと硬質な物に当たったような音と共に砕け散りゴブリンの姿勢が崩れたところにカグツチで切り伏せる。

 流石、名のある竜の素材を使ったと言うだけ有ってこれぐらいの攻撃ではびくともしない。

 最初の一匹を切り伏せ、私はまだ興奮しているゴブリン達を次々と切り殺していく。

 武器を持った最後の一匹を切り殺し、巣から離れた草葉の陰に隠れていた奴に向けて剣を振ろうとした時に今までとは違う事が起こった。


「ちょっ‼ちょっと待って欲しいっす‼」

(お願いですから剣を収めて話を聞いて欲しいっす‼)


 草葉に隠れていたそのゴブリンが急に喋りだしたのだ。よく顔を見ると先程切り殺したゴブリン達と比べると理性的な顔をしているし、なぜか心の声まで見える。

 間一髪の所でカグツチを止めることが出来た本当に危なかった。


「・・・貴方喋れるの?」


 目の前で剣を止め、警戒しながらゴブリンに質問する。

 ゴブリンは、私の質問に両手を顔の前に出し、目を瞑りながらコクコクと頷きながら喋りだした。


「喋れるっす、言葉も分かるっす、理解してるっす。お願いっすから殺さないで先ずは話を聞いて欲しいっす‼頼みたい事が有るっす‼」

(故郷に居る父ちゃん、母ちゃん、妹、弟、ごめん。俺はここで死ぬかもしれないっす)


 ・・・家族とか居るんだぁ・・・


「とりあえず、私の質問することにだけ答えて、妙な動きをしたらこのまま剣を振り下ろす」

「りょ、了解っす‼」

(良かった~、首の皮一枚繋がったっす…)


 安堵するゴブリンに剣を突き付けた姿勢はそのままにまず、最初の質問をする。


「まず一つ目の質問、貴方は何者なの?」

「あ!はい‼自分は黄昏の魔王直下の斥候部隊に所属する魔族のゴブリンで名前をゴルクというっす‼」


 心の声と発言に差異無し本音だね。


「じゃあ、二つ目の質問、その魔王の直下の斥候が何でこんな所に居るの?」

「あ~、それは言っても良いものか判断が着かないんっすけど…」

(言っても大丈夫だと思うんっすけど、人間に言っても信じて貰える確率の方が低いっすから言わないほうが良いっす…)


 あ、コイツ聞いた事に関して素直に喋れって言ったのに信じて貰えないとかそういう理由で有耶無耶にしようと考えいてるな・・・

 そんな事を考えていると私の肩の方から声が聞こえて来る。


「おや?そこに居るのは西のゴブリン村出で先代様直下の斥候になったゴルクではないですか、こんな所で何をしているのですか?」


 私の肩からひょっこりと顔を出したクロノスが意外と親しげにゴルクと名乗ったゴブリンに話しかける。


「ク、クロノス様~、た、助かったっす~」

(何でこの子がクロノス様と一緒に居るんすか?意味が分からないっす?)

「クロノス、知り合いなの?」



「えぇ、我が魔王。先程この者が言っていた通り彼は先代様の直下の斥候隊の者です。先代様の命でこの辺りの異変を調査しています。ゴルク、この御方は今代の魔王様です」

「マジっすか・・・?」

「マジです」


 目を真ん丸にして驚くゴルクにクロノスは静かに肯定しながらここまでの経緯と先代の黄昏の魔王が崩御したことを伝えている。

 その姿を見ながら私はもう大丈夫だと思い、カグツチを喋るゴブリン改めゴルクさんから離す。

 知らなかったとは言え危なく部下になるかもしれない人を殺すところだった・・・


「とりあえず、クロノスの知り合いみたいだし、貴方が危険な存在じゃない事は分かったわ」

「信じて貰えて良かったっす。魔王様」


 あ…もう私が魔王って事は納得してるんだぁ・・・

 もうちょっと前の魔王についてなんかあっても良いんじゃない?


「それでゴルクさん。頼みたい事って何ですか?」


 そんな事を考えながらゴルクさんが先程言っていた。頼みたい事について尋ねる。


「あぁぁぁぁぁぁ!そうだったっす‼命の危機と衝撃的な事実で忘れてたっす‼」

(一大事っす。不味いっす)


 私の一言で用事を思い出したのか大きな声で喋りだすゴルクさん。

 ええい‼もうちょっと静かにしないか‼ゴブリンの追加が来るだろう‼あと、とっとと要件を言え‼


「実はゴブリン達が今巣にしている洞窟は元々神話でも有名な四代龍の一柱でもある《《氷河の龍(グレイシャルドラゴン)》》の巣だったんす。ですが最近、何か異常な魔物と戦ったとかで弱った所にゴブリンキング率いるゴブリンの軍団が押し寄せて来て《《氷河の龍(グレイシャルドラゴン)》》を殺そうとしているっす。今は何とか持ちこたえていますけどこのままじゃ時間の問題っす。」

「?それで私にどうしてほしいの?」


 なんとな~く、嫌な予感にフードの下で顔をしかめながら尋ねる。

 それにしても、何らかの理由で弱っているとはいえゴブリンが龍を襲う?そもそもその龍と戦った魔物って何なんだ?普通は遥かに格上の者なんて襲わないだろうに、ましては四代龍と言えば神話でも有名な真龍の一角だギルドでも《レジェンド》クラスに認定されており見つけたら手を出すなひっそりこっそり逃げて来い。気づかれたなら戻って来るなと言われている。

 てか、先代黄昏の魔王がわざわざ斥候まで使って調査をしていたという事は、魔物の間で何か異変でも起きているのかな?まあ、起きているんだろうなぁ…少なくとも私は二匹の変異種に会っているわけだし…

 そんな事を考えているとゴルクさんが予想通りの答えを返して来た


「お願いするっす。《氷河の龍(グレイシャルドラゴン)》を助けてほしいっす」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」


 目の前で土下座をしてそう言うゴブリンを見ながら(この世界にも土下座ってあったんだ)ある程度予想していたとはいえ今度は私が大きな声で驚くのだった・・・

 というか、ドラゴンはもう本当に勘弁してください…(ヾノ・∀・`)ムリムリ

 マジで泣きそうです…


次回は9/8に投稿したいと思います。

ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです

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