あ、やっべぇ嫌な予感がする
おはようございます。
第332話投稿させて頂きます。
誤字・脱字報告ありがとうございます。
今回はコハク視点です。
楽しんで頂けたら幸いです。
突然声を掛けられて驚いたクロにレイン先生の事を説明し、クロの事をレイン先生に任せてから私は師匠にも働いてもらうべく和登君達が訓練をしている場所に師匠を連れて行く。
修錬場に着くと指導を任せていたレクセウスの弟子の一人であるラインを身振りで呼び合師匠を紹介してから氣の循環を意識しながら瞑想をしている皆の事を見る。
パッと見で見てみると皆問題無く氣を体に循環させる事が出来ているみたいで内心でホッとしていると訓練風景を見ている師匠が隣でフムっと声を上げると私に向けて話し掛けて来る。
「皆さん、今日から訓練を始めたんですよね?」
師匠の言葉に私とラインで頷くと師匠は口の前に手を添えると「ワッ‼」と大きな声を出す。
その声に驚いたのか皆の体がビクッと跳ねて回っていた氣が霧散する。
その光景を見て師匠とラインがやはりと言ったような顔をする。
「やはり、勇者と言っても急に驚かされたり、予想外の事が起こると氣が霧散してしまいますか」
「始めたばかりでもう循環までできるのは本当にすごい事なんですがね・・・実戦で使えるようになるには相応に時間が掛かる技術ですからね・・・」
驚いている皆を気にかけながら師匠とラインが考えながら話し合う。
その間に私は皆の混乱を鎮める為に皆の方に近づいて声を掛ける。
「皆お疲れ様。いきなり驚かせて修行を中断させてうちの師匠がごめんね」
驚かせてしまった事と修行を中断させてしまった事を詫びると皆口々に気にしなくて大丈夫だと言ってくれる。
「え・・・なんであの人、此処に居るんですか?」
私の後ろでラインと何かを相談している師匠の姿を見て戌夜君が何とも言えない渋い顔をする。
———うん、分かるよ。戌夜君、イリアで師匠にボコ殴りにされそうになってたもんね・・・
「コハクが呼んだんだよな?どうしたんだ?」
死んだ魚の目になっている戌夜君を慰めながら私が師匠を連れて来た事を疑問に思ったのか首を傾げて聞いて来る。
私はクロの先生をレイン先生にお願いしようと思っていた事、その過程でレイン先生が妊娠していた事などを話、妊婦さん一人で知らない国に来させる訳にはいかない事を話てその過程で師匠に皆の訓練をしてもらう事を説明すると皆の目が一様に死んだ魚の目になる。分かるよ?何で氣の修行を魔術師の師匠にお願いしようなんて思うんだって思ってるよね?私だって思うもん。だってしょうがないじゃん。あの人、魔法以外にも色々出来るんだもん。
そんな意図を皆に伝えるともともと死んだ魚の目だった戌夜君に加えて私を含めた全員が同じ目になった。
「それにしても少し大きな声で驚かされたぐらいで集中が切れるなんて情けない・・・」
空気を換える為か優君が悔しそうに口にすると皆も悔しそうな顔に変わるのを私は頭に疑問符を浮かべて口を開く。
「え?何で?一日で氣の循環を身に着けられたなら十分すごい事だよ。中には何十年も氣の循環に費やす人も居るし、維持したまま動いたりするのなんてどうとでもなるよ」
「因みにコハクちゃんはどれぐらいで出来るようになったの?」
私の励ましに夢菜さんが疑問に思ったのか私が氣を使える様になるまでの日数を訊いて来る。
「え?常時使用まで魔属領に来て三日だけど?」
実は私は師匠に氣の使い方までは教えて貰ってなかったんだよねぇ~。教えてくれたのはレクセウスだった。だってその前に魔王なんて激重な運命に絡めとられて魔属領までのこのこ旅をしてたんだから・・・それで何で師匠が氣を使えるのか知っていたかなんだけど、帝国との戦いの時にあの人思いっきり氣を使って自分の事強化していたんだよね。だから今回、ついでに師匠にも皆の指導をお願いする事にしたんだよね。
「あるじぃ・・・皆、意気消沈しちゃったよ・・・」
私がのんびりとそんな事を考えていると肩の上のネージュから何故だかジトっとした感じの声音で言われて皆を見ると何故かシュンとして下を向いている。
どうしたのかと思い皆を見ていると皆何かを呟いている。
「三日・・・たったの三日」
「俺達、どれぐらい掛かるんだろうな・・・」
「少しは強くなっているって思っていたんだけどなぁ・・・」
「なんか泣けてきた・・・」
「まぁ、コハクだしなぁ」
などと口々に言っているが私にも言い分が有るので口を開く。
「いや、私の場合、使えないと真面目に命に係わるから荒っぽい方法で死ぬ気で習得しただけなんだけど」
実際問題、魔王になったばかりの頃って実力を示したにも関わらず結構、暗殺を嗾けられたり、色々あって悠長にしていられなかったからレクセウスに実戦形式で無理やりに身に着けたものなんだよねぇ・・・
そんな事を離せば皆は、今度はそれなら自分達も同じ方法でと言い出したので無理をする必要は無いと軽い言い合いになってしまう。
内心でそう収拾を付ければ良いかと内心で困惑していると聞きたかったけど聞きたくなかった救いの声が聞こえて来る。
「すれば良いじゃないですか。実践式の訓練。今、ライン氏ともその方向で話が纏まりましたよ」
そんな声を聞いて振り返ると師匠がすっごく良い笑顔で歩いて来る。あ、やっべぇ嫌な予感がする。
内心でそんな事を考えながら師匠に抗議の意味を込めて視線を送るとにこやかに口を開く。
「危険から遠ざけるだけでは成長は望めませんよ?皆さんもちょっと危険でも力を付けてコハクさんの力になりたいんですよね?」
師匠の言葉に皆が揃って頷くと師匠は満足したように頷き、私に向かって声を掛ける。
「コハクさん。心配なのはわかりますけど多数決です。ここは折れなさい。貴女も少し鈍っているのでしょう?鍛え直しも一緒にする良い機会です」
師匠の言葉に私は思いっきり溜息を吐き、了承する。なんだかんだで未だに師弟関係な事も有って師匠の言葉に弱いんだよね・・・
私が渋々同意したことに苦笑を浮かべて師匠は言葉を続ける。
「よろしい。なら次は手の空いている魔王様達が居るのなら声を掛けて集めてください。そうですねぇ、なるべくなら暁の魔王様と白夜の魔王様が良いですかねぇ。あと、広い森か何かを手配してください」
「分かりましたけど、何をするんですか?」
そう言う私は不貞腐れるのを止めてこの時点でヤバイ内容だったら止める為に何をするのか訊ねる。
「鬼ごっこです」
『はっ?』
私を含めて全員の口から意味が分からないと声が出るのを師匠はニコニコしながら再び口を開く。
「鬼ごっこです。詳しい事は両魔王様の協力が取り付けられたら説明しましょう」
聞き間違いでは無かった事に唖然をしながらその日の訓練はお開きになった。
どちらにしても師匠の提案する鬼ごっこだ。碌な物では無いだろう。
溜息を吐きなが私はフェルとオウルに連絡を取った。二人の返事は戦争準備より断然面白そうだから協力するだった・・・もうやだ・・・やっぱり連れて来るんじゃなかった・・・|
此処までの読了ありがとうございました。
次回は用事が有り、お休みさせて頂きます。
再開は11/29になります。ごゆるりとお待ちいただけたら幸いです。




