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彼女は突然帰ってくる

おはようございます。

第328話投稿させて頂きます。

誤字・脱字報告ありがとうございます。

今回はアラン視点です。

楽しんで頂けたら幸いです。

「であるから‼降伏するしか我々に生き残るすべは無いと何度も言っている‼」

「その結果が魔法技術を全て奪われるだけだと言っとろうが‼」


 長時間続く会議で何度も聞いた怒号が飛び交い僕は思わずひっそりと何の生産性も無い会議に溜息を吐く。

 イリアが侵入不可の魔法障壁に覆われて早一ヶ月、イリアは現在、帝国とクラシア王国へと降伏するのかしないのかと永遠と言い合いが続き、うんざりしてしまう。

 結局、何時ものように結論が出ずに会議が終わり、議題は次回へと持ち越される事になり、解散する流れとなる。


「アラン」


 会議室を出た所で声を掛けられたので振り返るとライオネス兄上がこちらに向かって歩いて来る。


「ちょっと話をしながら歩こうか?」


 連日の会議と進展の無い議題の所為で疲れた様子の兄上と一緒に城の廊下を歩く。


「・・・アランは今回の会議はどう感じたかな?」


 先程の会議についてどうだったかと訊いて来る兄上に僕は表情を取り繕う事も無く憮然とした顔のまま、忌憚のない意見を口にする。


「正直に言うと時間の無駄ですね。そもそも、降伏するなんて選択肢が無い事に気が付かない事に首を飛ばしてやりたくなりますよ」


 そもそも、僕等が今現在、安全に結界の中に居られるのは自分達の力ではなく途中で介入してきた彼女・・・コハクの力が有ってこそのそれも分からずに降伏を提言してくる連中に心底頭にくる。

 そんな僕の心境に気が付いているのか兄上は苦笑を浮かべて口を開く。


「アラン。気持ちは分かるが表には出さない様にしなさい。それに彼女だって死んだとは限らないのだろう?」

「・・・」


 兄上に窘められるも僕は憮然とした顔のままで廊下を歩く。


「第三王子の起こした不祥事で大半の不穏分子は排除できたはずなのに一体どこから湧いて出て来るんですかね?」


 窘められても尚、感情を切り替えられない僕がそう口にすると兄上も何とも言えない顔で口を開く。

 それにしても、疲れているからかもしれないがふざけていない素の兄上で居るのは珍しい・・・


「まぁ、全部とは言わないけどそういう連中が多いのは事実だねぇ・・・自分が一番大切、自分には関係ない。如何にそういう連中を排除しても今までまともだった連中が腐っていくなんて事は多々ある事だよ・・・」


 そんな会話を最後に暫く兄上と無言で廊下を歩き、兵の訓練場まで出る。

 訓練場では先の戦いで負傷していた兵達が魔法で傷を癒してもらい鍛え直す為に訓練をしている。


「アラン。久々に俺達も剣の稽古でもしようか?」


 別に何ともなしに見ていただけだったのだがそんな僕を見て兄上は唐突に剣の稽古を提案してくる。

 ここ最近でストレスの溜まる会議ばかりだったので僕は顔に笑みを浮かべて答える。


「良いですね。今は体を思いっきり動かしたい気分です」


 兄上にそう答えて二人で訓練場へと降りて騎士団長に話を通して稽古に参加させてもらう。

 いきなり皇太子と王子が訓練に参加すると聞いて驚いている兵士達には悪いけど久々に体を動かした事によって何処かモヤモヤしていた感情が少しだけ楽になった。


「はぁ~、やっぱり書類仕事ばかりは駄目だなぁ~。体が鈍ってしょうがない」


 兵士との訓練に混ざった後、訓練場を後にして城の庭へと出て整えられた芝の上でだらしなく寝転がりながら兄上は本気で疲れた様子で目を閉じながら言葉を続ける。


「少しは気晴らしになったかい?」


 寝転がりながら気持ちが良さそうにそう問い掛けて来る兄上にそう問われて僕は素直に頷く。

 僕の様子に満足したのか兄上は目を開けて結界で覆われた空を見ながら口を開く。


「大丈夫だよ。アラン。きっとこの国も君の思い人も大丈夫さ」

「は⁉ちょ⁉兄上⁉何時僕がそんなこと言いましたか⁉」


 いきなり言われた事に動揺しながら兄上に問い掛けると兄上はきょとんとした顔で答える。


「おかしな事を訊くね。ゴルデュフィス殿から彼女の事を聞いてからずっと心配していただろう?」


 飄々とそう言う兄上に僕は未だに動揺を隠しきれずに口を開く。


「確かに彼女の安否は心配していますが別に思い人という訳ではありませんよ‼」


 慌てている僕の事を面白がる様にニィと些か意地の悪い笑みを浮かべながら兄上は言葉を続ける。


「そうなのかい?まぁ、誤魔化すのも良いけどいい加減覚悟を決めておかないと手遅れになってしまうよ」


 僕をからかう事に決めた様子で意地悪くそういう兄上をいい加減に殴ってやろうかと思っていると兄上のいない方から声を掛けられる。


「アラン君。何か慌てているけど大丈夫?」


 不意に掛けられた声に聞き憶え・・・というより今一番聞きたくて聞きたくない声を聞き、僕はすごい速さで振り返る。


「おぉ、びっくりした」


 振り返ると特にびっくりした様子も無い声音とは別にアメシストの瞳を大きく開きながら僕の事を見るコハクを見て思わず声を上げる。


「コハク‼」


 彼女の登場には流石の兄上も予想外だったのか驚いた顔で身を起こす。

 そんな様子を見てコハクはどこかバツが悪そうな居心地が悪そうな表情で口を開く。


「あー、えっと、その、久しぶり。心配をお掛けしました。ちょっとお願いしたい事が有るんだけど良いかな?」


 以前よりも肌艶も良く健康的な様子のコハクがそう言うのを聞きながら僕は心底安心して彼女の顔を見ながら思わず声を出して笑ってしまった。

此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ちいただけたら幸いです。

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