相談事
おはようございます。
第324話投稿させて頂きます。
今回はコハク視点です。
楽しんで頂けたら幸いです。
城に戻って来て様々な事を終えて執務室で溜まった書類を整理していると執務室のドアが控えめにノックされる。
「どうぞ」
恐らくメルビスか文官達だと思い書類に目を通しながら入室の許可を出すと控えめにドアが開き、クロが顔を覗かせる。
「お姉。忙しい所ごめんね。ちょっとだけ良いかな?」
少し控えめにそう訊いて来るクロに部屋に入るように促すとクロと一緒にティーセットを持ったメイド長が入ってくる。
「お話をされるのでしたらお茶が必要かと思いまして、コハク様、ついでに少し休憩されてはいかかですか?」
メイド長にそう言われて私は素直に書類を置き、応接用のソファーをクロに進めて一緒に座る。
メイド長は素直に休憩を取る私に少し驚いた様な顔をしながらお茶の用意をしてくれる。
メイド長がお茶とお菓子を私とクロの前に置いて壁際へと下がったのを確認してから私はクロへと問い掛ける。
「街歩きは楽しめた?」
クロが何かを相談しに来たのは分かるが一先ず街を歩いて来た感想をクロに問い掛ける。まぁ、本題に入る前の前置きだね。
私がそう問い掛けるとクロはお茶の入ったカップから口を離し。笑みを浮かべて答える。
「うん‼とっても楽しかったよ‼」
満面の笑みでそう答えたクロに内心でホッとしながら私もお茶に口を付けると今度はクロが執務机の上の書類を見て口を開く。
「お姉はこんな時間まで仕事?ちゃんと休めるの?復帰早々に働きすぎじゃない?」
心配そうにそう言うクロの言葉にメイド長も壁際でウンウンと頷いてクロの言葉に賛同している。
そんな二人に私は苦笑を浮かべながら口を開く。
「まぁ、仕事量が多いのは自覚してるよ。でも、私が居ない間に皆が頑張ってくれたお陰で普段の半分以下だし、部下に働かせて自分は休んでいるような人間にはなりたくないしね。あと、頭がしっかりと戻ったお陰で仕事のスピードも上がったからあと一時間もあれば終わると思うよ」
「これで半分以下・・・?過労死待ったなし?」
私がそう言って再び紅茶に口を付けるとクロが複雑そうな顔で再び書類の山を見ている。ねぇ~、下手な人だと過労死するよねぇコレ。
そんな事を考えながら紅茶を飲み私は本題に入る事にした。
「それでクロ。何か用事が有ったんじゃないの?」
私がそう言うとクロは少しだけ顔を顰めてから口を開く。
「あ、そうだった・・・お姉が過労死まっしぐらな事をしていたから本題を忘れてた・・・」
クロはそう言ってジト目で私を見た後で改めて口を開く。
「お姉。私に剣の師匠を付けて貰えないかな?」
「その理由は?」
クロの言いたい事が分かっていながら私は敢えて質問をするとクロはしっかりと私の目を見て口を開く。
「自分の身を守る為に最低限、戦う技術を身に着けておきたい。お姉や他の皆の足を引っ張らない為に」
クロの言葉を聞いて私は一先ず肩の力を抜く。
クロが剣の修行をしたいという事は知っていたけどその理由が分からなかった。
誰かを傷つける為とは思っていなかったけど実際にクロの口から理由を聞いてホッとした。
内心でそんな事を思いながら私はクロの言葉に答える。
「分かった。明日の朝から私がクロに剣の稽古をつけてあげる」
私がそう言うとクロは目を丸くして口を開く。
「本当に⁉反対しないの?」
「反対?何で?」
クロの言葉に私は首を傾げて聞くとクロは混乱した様子で答える。
「だって・・・魔法の使い方は教えてくれたけど剣の使い方は教えてくれなかったからてっきり反対されるものかと・・・」
クロの言葉を聞いて私はクロの反応に納得した。
確かに私は此処に来るまでクロに剣の稽古をつけずに魔法の練習ばかりさせていた。
理由は単純明快で私と和登君が居る限り余程の事が無ければ道中でクロが傷つく事は皆無だ。当時はその事も有り使わない剣術よりも魔法の方を優先していた。その結果、クロは剣術を教えない事を反対されていると取ったのだろう。
それらの理由をクロに告げるとクロも納得したのか少しだけホッとした様子を見せる。
「それで、どうする?私が剣を教えるって事で大丈夫?」
「うん。お願い。でも、お姉は仕事大丈夫?」
改めてクロにそう問い掛けるとクロは笑顔で私にお願いしてくるそのついでに仕事の事も聞かれたので答える。
「それぐらい問題ないよ。和登君との稽古と一緒にやるから手間でもないしね」
こっちに戻って来て諸々の問題に決着がついてから和登君との稽古も再開することになったのでその際に一緒に稽古をすれば良いとクロに告げるとクロはどこか微妙そうな顔をするが了解と口にする。
その後は明日から始める稽古の時間をクロと話してから私は残りの仕事を終え明日へと備えてゆっくりと休む事にした。
此処までの読了ありがとうございました。
次回もごゆるりとお待ちいただけたら幸いです




