意外な決着
おはようございます。
第314話投稿させて頂きます。
今回は前半はコハク視点、☆の後は光の視点です。
楽しんで頂けたら幸いです。
「それじゃあ、フェル。転移装置のロックは解除したから皆と向こうの事は任せたよ。」
暁の国で一晩過ごした早朝、まだ日も上がらない内に私は暁の国の転移装置のロックを解除し、ネージュに取り付けた鞍に跨る。
「おう、こっちは任せておけ、お前も無理だけはするなよ」
「うん。それじゃあ、嫉妬の国で」
「ちょっと待って‼」
フェルと話してネージュに指示を出そうとしていると後ろから焦った様子の声が聞こえて来て振り向くと和登君が走って扉から出て来る。
昨日の内に打ち合わせは済ませていたのに何か有ったのだろうか?
「和登君?どうしたの?」
ネージュから降り、こちらに駆け寄ってくる和登君を迎えながら問うと彼は少々顔を赤くしながら口を開く。
「いや、その。見送りをしようと思っていたから・・・まだ居てくれて良かった」
「そ、そう・・・ありがとう」
彼の言葉に私もつい頬を赤らめ返事をすると後ろと横からネージュとフェルの生暖かい視線を感じる。
てか、フェル。ニヤニヤすんな。
二人の生暖かい視線を何とも言えない気持ちで受けていると不意に和登君に抱きしめられる。
隣のフェルが「おぉ~」と感心したように声を上げる。
急な事に思考を停止していると私を抱きしめた和登君が口を開く。
「一人で行くんだ怪我をしない様に気を付けて・・・」
「うん、和登君達も気を付けて」
和登君に言われて私も彼に抱擁を返しながら言葉を返して体を離し、ネージュの上に戻る。
「それじゃあ、行ってきます」
改めて二人にそう言い私は、ネージュに指示を出してまだ暗い空へと飛び発った。
☆
「いや、嫉妬の国を滅ぼすつもりとは言っていたけど・・・本当に連れて来たんだ・・・」
暁の国から増援が来ると言われた翌日、両軍の兵士が並ぶがレヴィさんの言っていた通り本当に四倍増しの戦力を用意して来た事に思わず顔を顰めながら文句を言う。
「こちらの援軍はまだ来ないのですか?」
神薙先生が嫉妬の国の隊長さんにフェルさん達からの援軍の確認を取る。
「魔王様の話ではもうすぐとの事ですが・・・今は転移陣も転移装置も使えないのでどれ程掛かるかは・・・」
「援軍が来るまでの持久戦になりますね・・・」
隊長さんの渋い顔に神薙先生も顔を顰めて武器を取り出す。
何時戦いが始まってもおかしく無い空気の中で緊張だけが高まり疲れだけが蓄積されていく。
どれだけ長くその状況が続いたのかは分からないがしばらくして敵陣の方から角笛の音が鳴り響く。
攻撃開始の合図でも有るその音にいよいよ戦闘が始まると身構えていると両陣営の中心地に複雑な文様の光る魔法陣が現れて両軍が動きを止める。
光の中から出て来た六人の中に行方不明になっていた狗神先輩の姿を見つけて思わず目を見開く。
「狗神君?」
神薙先生と命先輩も気が付いたのか驚いた顔で狗神先輩を見ている。
「援軍って・・・六人だけかよ・・・」
出て来た人数を見て嫉妬の国の誰かがそう口にするのが戦力的に見ればとんでもない戦力が送られてきている。
魔王一人に勇者四人、フードの人は誰か分からないけどフェルさん一人でも相手側を全滅ぐらいさせる事が出来る。
相手も同じ考えなのか突っ込んでくる事はせずに現れた六人の様子を窺っている。
そんな中で一番警戒されているフェルさんが何故か拡声器を手に持ち、相手に向かって語り掛ける。
「傲慢の国、怠惰の国の兵士達‼聞こえているか?お前達の憂いは取り除かれた直ちにこの戦闘を止め、お前達にこんな事を強要した連中に痛い目を見せてやれ‼」
そう言うとフェルさん左手で何かの魔道具を取り出し、空中に映像が投影される。
投影された映像には強欲の国の兵や文官だと見られる人間が縄で縛られて牢に放り込まれている。
その光景を見た傲慢の国と怠惰の国の兵士達がざわつくのを止めて武器を引き、その武器を強欲の国の兵に向ける。
どうやら国を人質に命令を聞かせていたらしく傲慢の国と怠惰の国の兵士に裏切られた強欲の国の兵は倍以上に増えた敵に手も足も出ず、対峙した時の絶望が嘘の様に嫉妬の国と強欲の国の戦争は少ない犠牲者を出しただけで幕を下ろした。
此処までの読了ありがとうございました。
次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




