皆に怒られるのは覚悟しています
おはようございます。
第311話投稿させて頂きます。
今回はコハクの視点です。
楽しんで頂けたら幸いです。
「で?で?どういう風に狗神先輩と恋人になったの⁉どんな風に答えたの?」
「・・・」
ネージュの手綱を握っている私に夢菜さんは相変わらず目をキラキラさせて私に質問を投げ掛けて来る。
現在、私達はメルルク王国を出てより正確な魔属領の情報を得る為に暁の国へと向かう為にネージュに乗って海の上を横断中しており、移動中暇なのも有るのか私は夢菜さんに和登君との関係について質問攻めにされている。
あの後、何故か火花を散らすラルフリードさんと和登君を宥めて魔属領側の情報をラルフリードさんから聞き出した。
実はこちらに戻って来た時に星詠み亭でニアさんから人間領での情報を手に入れることは出来たが流石に魔属領の情報までは手に入れる事が出来なかった。
ニアさんからの情報で勇者が助っ人で配置されていない国の手助けをしてからメルルク王国に向かう計画を立てた
情報が手に入るのは遅くなってしまったが帝国に好き勝手やらせない為にも必要な事だとは思っている。
まぁ、メルルク王国からの情報も強欲の国が戦争を仕掛けているが傲慢と怠惰の国以外は一応無事という程度の話しか聞けなかった。
情報の収集とちょっとした目的の為に私達は今、暁の国へと向かっている。
「コハクちゃん。無視はよくないよ?」
此処までの経緯を思い出して現実逃避を夢菜さんが若干声のトーンを下げて笑みのまま夢菜さんが脅しをかけて来る。
———だって、光さんと合流した後で絶対同じ質問が飛んでくるじゃん・・・
若干、うんざりしながら私は夢菜さんに向けて口を開く。
「その辺も含めて皆と合流した時に女子会で話すよ・・・」
「OK、わかった♪」
どうせオマケで魔王二人も釣れるだろうと思いながら夢菜さんに答えると絶対に逃がさないからなというニュアンスが混ざった笑みを浮かべながら快く応じてくれる。
「お姉とユーちゃんは仲が良いんだね」
私と夢菜さんのやり取りを見てクロが何だか嬉しそうにそう口にする。
「うん。クロちゃんやひかちゃんと同じぐらい親友だと思ってるよ。多分、ひかちゃんも同じだと思うよ」
だから恋バナしようね?という圧を感じる物の夢菜さんがそう思ってくれる事を嬉しく感じて私の口元もつい緩んでしまう。
「私もそう思ってるよ」
風の音に紛れる程度の声量で私の口から出た言葉はしっかりとクロと夢菜さんに届いていたらしくクロは意外そうに夢菜さんは嬉しそうに顔を綻ばせる。
後ろからは私がそう口にした事に驚いているような男性陣の雰囲気が伝わってくる。
「なんか、戻ってからコハクは色々変わったか?」
「なんか雰囲気が柔らかくなりましたよね」
「コハクにも色々有ったんだよ」
「後でその辺も詳しく話せよ」
そんな何とも言えない空気の中、やっと目的地が見えて来て内心でホッと息を吐く。
フェルには事前に連絡を入れているので港町を過ぎ、広大な田園や畑などを上空から眺めながら都市へと向かう。
クロが向こうの世界でも中々見られない光景に楽しそうな声を上げるのを聞きながら私はネージュにゆっくりと地上に降りるように指示を出し、開けた場所に着陸して貰い、歩いて街の中へと入り、城を目指す。
道中もクロは珍しい物が多かったのかキョロキョロと街の中を楽しそうに歩いている。
そんな道中のクロの反応を楽しみながら暁の城に着くと門番に止められるが顔を見せて名前を名乗ると直ぐにフェルへと取り次いでくれる。
応接室に通されて少しすると廊下を急いで走るような音が聞こえて来てバンっと勢いよく応接室のドアが開く。
「コハク‼」
ドアを開けるのとほぼ同時に私の名前を呼びながらフェルがすごい勢いで中に入ってきて私の肩を片腕手掴み、近距離で何かを確かめる様に見る。
「生きていたか、怪我は無いのか?毒で受けた傷も無いのか?」
顔や腕をマジマジと見ていたと思ったら私の顔に有った毒で出来た傷の有無を見ていたようだ。
心配をかけたフェルに申し訳なさを感じながら私はゆっくりと口を開く。
「ただいま。フェル。心配をかけてごめんなさい」
私が謝った事にフェルは面食らった様子で驚いてから息を一つ吐いてから私の頭に手を乗せて撫でながら口を開く。
「本当にその通りだ。お前の所のメイド長も含めてお前の関係者は皆怒ってるからな覚悟しておけ」
言っている事とは裏腹に心底安心したといった様子のフェルに頷いて答える。
「それで?俺の所に来たのは現状の確認か?」
頭から手を離し、直ぐに私がここに来た理由について訊いて来る。
「それも有るけど、まずはフェルの手の蘇生をしたい。今から起こることを見てもらえれば私の怪我が消えた事にも納得して貰えると思う。クロ、力を貸してくれる?」
私に怪我がない事を疑問に思いながらも言及して来なかったフェルの疑問に答える為にクロに声を掛けるとクロが近づいて来てフェルの失った右手に自分の手を添える。
「ここに来るまでにしてきた事と同じ事をすれば良いから落ち着いて」
若干、緊張気味のクロにそう声を掛けると一つ頷き、一度深呼吸をするとゆっくりと口を開く。
「《フルリカバリー》」
クロがそう呟くとフェルの腕を薄緑色の光が包み込み、光が消えた頃にはそこには元通りのフェルの腕が現れる。
その光景に珍しく驚いているフェルの事を見ながら私は気になっていた事に一つ決着が付いた事に密かにホッと息を吐いた。
此処までの読了ありがとうございました。
次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




