お祭りデート・3
おはようございます。
第305話投稿させて頂きます。
今回はコハクの視点です。
楽しんで頂けたら幸いです。
ガヤガヤと賑やかな中を狗神君と腕を組みながら寄り添って歩く。
密着するぐらいの距離で腕を組むのは少しばかり狗神君に迷惑になるかと思ったが昨日クロに相談したところ、狗神君に再び意識してもらうにはこれぐらいしなければ難しいと言われてしまったので恥ずかしい気持ちは有ったのだが待ち合わせ時のトラブルの勢いで何とか今の状態に持ち込む事が出来た。
「あ、狗神君。射的が有るよ」
「ちょっと見て行こうか?」
屋台を見ながら歩いていると射的屋さんが有ったので二人で立ち寄り、お金を払ってコルク弾を受け取り遊ぶ。
私は当たりはしたが景品が落ちず、キャラメルとラムネが一つずつ取れただけだが隣の狗神君は当てている所が良いのか的確に景品を落として射的屋のおじさんの顔を青褪めさせている。
「すごいね。百発百中だ」
「昔から得意なんだ」
前を向きながら少しだけ嬉しそうに最後の弾で景品を打ち落とす。
「少し取りすぎたか?」
些か顔色の悪いおじさんから景品を受け取って少し離れてから狗神君がボソリと溢す。
彼の持っているカバンの中にはさっきの射的屋さんで貰ったゲームカセット等が入っている。
うん、取りすぎだと思うよ?射的屋のおじさん。すごく恨めしそうな顔をしていたしね。
若干、射的屋のおじさんに申し訳なく思いながら腕組から手を繋ぐ形に変え屋台を回って行き、屋台でご飯等を買って二人で食べながら歩く。
射的の後も色々なお店を見て回り、そろそろ花火が上がる時間になった頃に狗神君が口を開く。
「そろそろ、移動しようか?」
「うん、そうだね」
狗神君に促されて彼の案内に従って穴場のスポットに向かう。
彼の言う穴場はお祭り会場から20分程歩いた場所に有る公園で幸いな事に人が居ないので並んでベンチに座る。
「・・・」
「・・・」
花火が始まるまでまだ時間が少し有るのか打ち上がるのを待つ間が地味に気まずい。
彼に言わなければ行けない事も有るので彼に話し掛けようと口を開くがそれよりも先に彼も沈黙が気まずかったのか彼が口を開く。
「コハク。少し訊きたい事が有るんだけど良いかな?」
「え?うん?良いよ。私で答えられる事なら」
私よりも先に話し掛けてきた彼に少しだけ驚きながら彼に答えると狗神君は少しだけホッとしたように息を吐き、言葉を続ける。
「コハクの前世の名前って白さんで間違いない?」
「へ?」
前世の名前という意外な事を聞かれて思わず間の抜けた声を出してしまうが記憶が壊れていた時なら分からないと答えていたかも知れないが今の私はしっかりと過去の事も思い出しているので答えられるので別に隠す事でもないので答える。
「うん、私の前世の名前は宮城 白で間違いないよ」
「そうか・・・あぁ、良かったぁ・・・」
「?」
私の返答に何故か狗神君は心底ホッとした様子で息を吐き、疑問顔の私に向けて説明してくれる。
「前に俺が初恋の子に告白する為にこっちで一人暮らしをしているって言った事憶えている?」
彼の言葉にゆっくりと頷く。
———あぁ、そう言えば初恋の子がいるって言っていたなぁ・・・
つい先程まで彼の初恋の相手についてコロッと忘れており、今になって思い出して少しだけ気分が沈む。
そんな私に狗神君が言葉を続ける。
「その子、コハクの前世の白さん」
「はい?」
彼の言う事が今一分からなくて顔を上げて彼の顔を見ながら首を傾げると狗神君は苦笑を浮かべながら口を開く。
「俺も驚いたんだけど俺の初恋で告白しようと思っていた子がコハクの前世の白さんだったんだよ。俺達、同じ小学校の生徒で小学校の図書室で初めて会ったんだけど憶えてないかな?そこで白さんに助けられたのが切欠だったんだけど・・・」
そう言われて小学生ぐらいの記憶を思い返してみると確かに昔図書室で男の子を一人匿って助けた事が有るのを思い出し、彼に向けて頷く。
「あれが俺。俺が好きだったのは転生する前のコハクだったんだよ」
彼の言葉に今の今まで忘れていた事を申し訳なく思っていると、彼はまだ言葉を続ける。
「コハクに告白した事で俺の目的は達成していたわけだ。まぁ、結果は撃沈だったけど・・・」
そう言った彼に私は言うなら今しかないと思い意を決して狗神君の顔を見て口を開く。
「あの、狗神君。あの時の告白に対する答えなんだけど・・・今からでも答えの変更って受け・・・」
私がそう口にした途端、ピューという音がしてバァンっという音共に暗い空に大きな光の花が咲き、私の言葉はかき消されてしまった。
此処までの読了ありがとうございました。。
次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




