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お祭りデート・2

おはようございます。

第304話投稿させて頂きます。

今回は和登の視点です。

楽しんで頂けたら幸いです。

 どうなっている?一体、今何でこんな状況になっているんだ?

 数分前までの怒りを忘れて俺は今、事態の中心で混乱している。

 目の前にはこちらに飛び掛かってこないか心配になる様な顔でコハクの事を睨む俺のストーカーにして宮城さんや乾達に協力して貰いながら極力避けていた吉川 涼香が立ち、俺の隣には可愛らしい笑みを浮かべたコハクが立っている。

 そんな状況が数秒続いたが吉川が俺の隣に立つコハクに何を思ったのか敵意むき出しで口を開く。


「ちょっと‼あんた何様!?今、私が和登と話しているのよ‼部外者はどっか行きなさいよ‼」

「部外者じゃないですよ?彼と待ち合わせをしているのは私です」


 癪に障る甲高い声で威圧する様にコハクに話しかけるが彼女は笑みを崩さないまま自分が俺の待ち合わせ相手だと吉川に話す。

 正直、自分を威圧するように話しかけてくる奴に向けて自分の立場を口にしてしまうのは悪手ではないかと思うがそんな俺を置いてコハクは言葉を続ける。


「そもそも、部外者というのなら私と和登君の約束が先約ですし、貴女の方が部外者だと思うので退場して頂いてもよろしいでしょうか?」


 笑みを崩さないままに邪魔なのはお前だというコハクに吉川は顔を真っ赤にして怒りでワナワナと震えている。

 キッと今まで見た事がないくらいに目を吊り上げて口を開く。


「なんて口の利き方なの‼貴女、私を誰だと思っているの‼私は吉川ホールディングスの社長の娘よ‼どこの馬の骨か知らないけど私の邪魔をするのならタダでは済まさないわよ‼」


 俺が友達と話しているときに割って入る時と同じ言い回しでコハクを威嚇する吉川にいい加減にうんざりして口を挟もうとするとそれより早くコハクが不思議そうに首を傾げて口を開く。


「正直、えっ?誰?って感じですね。吉川ホールディングスの社長の娘さんと仰っていましたが有名なのは貴女のお父様で貴女は運良くそのお父様の元に娘として生まれただけでしょう?親の威光で威張られても、それが?としか思いませんよ?そもそも、和登君だって困っていませんでしたか?」


 コハクの言葉に吉川はますます怒った様子で口を開く。


「黙りなさい‼誰の許可を取って和登の名前を呼んでいるの‼貴女なんかが気楽に和登の名前を呼んで良い訳が無いでしょう‼」


 コハクが俺の事を下の名前で呼んでいるのが気に食わないのか吉川が怒鳴り散らすと囲んでいる周りの女子達までそうだそうだと野次を飛ばす。俺から言わせればお前が言うなだ。

 これ以上此処にいればコハクと一緒にお祭りを回る前に疲れ切ってしまうと感じてそろそろこいつ等から離れようと考えていると唐突に俺の腕にコハクが自分の腕を絡ませて腕を組んで少しだけ俺に体を近づけてから口を開く。


「誰に許可って私は和登君から下の名前で呼んで欲しいと言われていますし、貴女に許可を取る必要はないですよね?」


 コハクの言葉に吉川を含めた周囲の女子達が驚いた様子で初めて黙る。

 ———てか、確かにコハクに下の名前で呼んで欲しい有無を伝えた事は有ったが彼女には条件を出されていたんだけどなぁ・・・

 昔、彼女にそう言った時の事を思い出しているとコハクは言葉を続ける。


「そもそも、貴女方は自分の気持ちを優先して彼や周囲への迷惑を考えていませんよね?今だって、この様な公共の場で一人を囲って逃げられない様にして通行の邪魔にもなる様な事をしている人達に私と彼の関係をとやかく言われる筋合いはありません。貴女方の感情を好意と呼ぶのは自由ですがそれで他人に迷惑をかけるような方々に和登君を譲る気はありません。それでは無駄な事に時間を使いましたが私達はこれで失礼します。行こう。和登君」


 吉川が何かを言う前にコハクがそう言って腕を組んだまま歩き出し、俺はそれにくっついて歩き出す。壁のようになっていた女子達はコハクと俺が近づくとまるでモーゼが海を割る様に左右に分かれて道が出来る。

 女子の壁を越えた所で後ろから吉川が何かを喚いている声が聞こえてきたがコハクが密着している事にドギマギしてしまっていた俺には内容は全然聞き取る事が出来なかった。


「ふぅ、あの手の子の相手ってどこの世界でも疲れるものだね」


 女子の壁共が見えなくなってからコハクは少しだけ疲れた様子で息を吐いてから何時もの口調で話しかけて来る。

 腕を組んだままゆっくりと歩き、俺は申し訳なさから口を開く。


「その・・・悪かったな。アイツの相手をさせて・・・」


 コハクが来てから対応を全部コハクにさせてしまった事を謝ると彼女は先程とは違う笑みを浮かべて口を開く。


「狗神君が謝る事なんて何もないよ。それにあれは私が少しだけ頭に来ただけだしね」


 自然な笑みままそういうコハクの言葉に内心でホッと胸を撫で下ろすのと同時にコハクの言葉が少しだけ気になる。

 ———名字呼びに戻った・・・

 その一点にちょっとだけ残念に思っていると歩きながらコハクが言葉を続ける。


「狗神君。花火が上がる時に穴場のスポットって知ってるかな?」

「へっ?うん、幾つか知ってるけど・・・」


 唐突に振られた話題に俺は些か間抜けな声音で返事をするとコハクは楽しそうにクスクスと腕を組んだまま笑って口を開く。


「話したい事も有るから花火はそこで見たいな・・・良いかな?」

「あぁ、期待していてくれ。所でコハク・・・この腕組は何時までする・・・?」


 楽しそうに笑う彼女を見ながらそろそろ彼女の体温と柔らかさに色々と勘違いしそうになりながら問い掛けるとコハクは見上げる様に俺を見て少しだけ不安そうな顔で口を開く。


「えっと・・・嫌だったかな?君が嫌ならすぐに離れるけど・・・?」

「いやいやいやいや‼俺は全然嫌じゃないけどコハクが嫌じゃないかと思って・・・ほら、その、名前も名字に戻っちゃったし・・・」


 コハクの言葉に慌てて否定しながらも自分の願望をちょーっとだけ口にするとコハクはホッとした様に笑ってから口を開く。


「それなら良かった。下の名前で呼ぶのはさっき言った話したい事にも関係しているからもう少しだけ待ってくれないかな?」

「もちろん」


 コハクの言葉に様々な期待が駆け巡るがそれらを何とか抑え込み、コハクをエスコートしながら祭りの会場に入る。


「それに、あんな出来事で正式に名前で呼ぶようになってたまるか・・・」


 最後にコハクが何かを言っていたが彼女の声が小さかった事と会場の喧騒で聞き取る事が出来なかった。

此処までの読了ありがとうございました。。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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