もう一人の大切な人へと向けて
おはようございます。
第302話投稿させて頂きます。
今回も黒羽視点になります。
楽しんで頂けたら幸いです。
家を出て直ぐに小さなトラブルが有ったものの私とお姉は無事に目的地の水族館へと着く事が出来た。
お姉と一緒に水族館の中をゆっくりと歩きながら見て色とりどりの魚やペンギン、ラッコなどを見て回り、イルカのショーの入場券を貰い、時間まで再び館内を見て回る。
イルカショーの時間になりお姉と一緒に中へと入ってショー見学する。
不満なのはショーを見る為の席が前列のイルカに近い所だった為にプールの水が飛び跳ねて私は結構濡れてしまったのにお姉は魔法を使ったのか少しも濡れていなかった。
そんな一幕も有り、楽しい時間は過ぎるのが早いというロジックの通りにお昼の時間になり、私達は水族館の敷地内に有るレストランへと足を運ぶ。
席に着き、料理を注文して一息ついてから私はお姉に今回の目的の一つでもある質問を投げかける。
「そういえばお姉。何個か聞きたい事が有るんだけど良い?」
「ん?何?」
水のグラスを持ちながら首を傾げて私の言葉の先を促すのを見てから私は質問を投げ掛ける。
「お姉って狗神先輩のこと好きなの?」
「ゴフッ‼」
———・・・あっ、咽た。マジでかぁ・・・あのお姉が・・・しかもなんて面倒くさい人を・・・
動揺で咳き込むお姉の反応でまさかの反応に私は内心で驚いていると復活したお姉が気恥ずかしそうに口を開く。
「えっと・・・、うん、まぁ、その通りだね・・・」
———はいぃ‼お姉から肯定のお言葉をいただきましたぁ‼
些かおかしな内心に目を瞑りながら私は次の質問を投げ掛ける。
「やっぱり前世から好きだったとか?」
「?彼とは白の時には会った事がないと思うけど・・・」
私の質問にお姉が首を傾げて不思議そうな顔をしたまま答える。
お姉の言葉に私は少しだけ愕然としてしまうのと同時に「あっ、やっぱりお姉はお姉だ」と思う。
実はお姉と狗神先輩は小学生の時に会った事が有るのだが私の口からそれを言うのは面白くないので今は黙っておく。
不思議そうに首を傾げているお姉に笑みを向けながら私は誤魔化す為に口を開く。
「あっ、そうなんだ。まぁ、お姉が狗神先輩を好きなら私は全力で応援するから頑張ってね♪」
え?お姉と嫌っている狗神先輩がくっつく事に反対しないのかって?あの人が人間的には良い人なのは知っているし、人としては嫌ってないよ?
嫌っている理由はあの人がお姉を好きだって事だし、あの人が一方的にお姉を好きなら全力で邪魔してやるけどお姉も好きだっていうのなら私には応援の二文字しかないよ。
誰に対しての言葉か知らない分からない物を脳内で答えながら私もグラスを持って自分の水を飲もうとグラスに口を付けたタイミングでお姉が口を開く。
「えっと、うん。ありがとう・・・それでクロ。告白してくれたけど一回振っちゃった相手に自分から告白するのって結果は絶望的かな・・・?」
「ゴフッ‼」
お姉の言葉に今度は私が咽た。
———先輩、もう告白してたんか・・・そしてお姉はそれを振ったんか・・・でも、先輩の様子を見る限りまだ諦めてないみたいだし、放っておいても良いだろうけどお姉が気にしてるから癪に障るけど少しだけ手助けしてあげるか・・・
内心で楽しくそんな事を考えてから私はお姉にアドバイスをする。
いやぁ、お姉とこんな風に恋バナが出来るとは思わなかったなぁ・・・
「それなら大丈夫じゃないかな。でもお姉。大切なのはきちんと気持ちを伝える事だよ。明日のお祭りの時にでも先輩に告白してみたら?」
「・・・うん、ありがとう。クロ」
お姉が私にお礼を言ったタイミングで丁度、頼んだ料理を店員さんが持って来てくれて私達は昼食を摂り、次へと向かう。
「へぇ、この水族館にこんなに大きな深海魚のコーナーなんて有ったんだ・・・」
「うん、お姉が入院した後に新しく増設されたみたい」
お昼ご飯を食べ、私達は再び水族館の中を歩き、お姉が入院してから増設された深海魚のコーナーを見る。
二人で並んで歩きながら少しだけ不気味な深海魚を見ながら私は周囲に人が余りいない事を確認してから今日、お姉と二人で出かけたもう一つの目的の為にお姉に声を掛ける。
「・・・お姉。少しだけいいかな?」
「うん?」
一際大きな水槽の前で声を掛けると私の言葉に不思議そうに振り返ったお姉に今はもういなくなってしまったシロちゃんの事を重ねる。
お姉にもシロちゃんにも失礼な事だとはわかっているが私はどうしても伝えたかった事をシロちゃんに伝える為に口を開く。
「ごめん。お姉。今から言う事はお姉じゃなく。シロちゃんとして聞いてもらえるかな?お姉にもシロちゃんにも失礼な事だとは分かっているんだけどどうしても言っておきたいんだ」
「うん。良いよ」
お姉は優しくそう言ってくれると私の近くまで来る。
そんなお姉に抱き着き、お姉の顔を見ない様にしながら私はシロちゃんに向けて句を開く。
「・・・シロちゃん。私と出会ってくれてありがとう。ちゃんとお別れの言葉を言えなかったけど・・・大好きだよ。絶対に忘れないから・・・」
今日の本当の目的を口にすると私は気持ちが高ぶってしまったのかお姉を抱きしめたまま涙が溢れて来る。
そんな私をお姉がどう捉えたのか分からないがゆっくりと私の体にお姉の手が回される。
少しだけ気恥ずかしく感じているとお姉の声が聞こえて来る。
「・・・私も、黒羽さんと出会えて良かったです。ありがとうございました。大好きですよ」
「シロちゃ・・・」
お姉の声なのにお姉ではない声を聞き、私は思わず顔を上げてお姉の顔を見るとそこには何処か寂しそうな顔をしたお姉の顔が目に映る。
「・・・途切れた。彼女もどうしてもクロに伝えたくて無理をして少しだけ出て来たみたい・・・でも、もう戻ってしまった」
確実にお姉だと分かる声音で喋る彼女に私は再びお姉の肩に顔を埋めて口を開く。
「お姉・・・少しだけこのままで良い?」
「気の済むまでこのままで良いよ」
シロちゃんにちゃんとお別れを言えてシロちゃんがそれに答えてくれた事が嬉しくてでも、それがなんだか寂しくて私は次に進む為に少しだけお姉を抱きしめたまま涙を流した。
此処までの読了ありがとうございました。
次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




