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まずは休息を摂ろう

おはようございます。

第299話投稿させて頂きます。

今回はコハク視点になります。

楽しんで頂けたら幸いです。

 行きはバスを使って陸路で数時間掛かったがネージュに乗って空路で約三十分。

 私達は宮城邸から少し離れた所に有る川辺に誰も居ない事を確認してからネージュに着陸して貰い、私達もネージュから地面に降りる。


「あっつ‼」


 地上に着き、ネージュから降りた途端にクロは声を上げながら防寒具を脱ぎ手で顔を仰ぐ。

 私と狗神君もネージュから降り、流石に暑いので防寒具を脱いでいるとクロが声を掛けて来る。


「それでお姉。ここからどうやって帰るの?私達、結構汚れているし、家からも結構離れてるよ?このまま歩いて帰ったら目立たない?」


 ごもっともな疑問を口にするクロに狗神君や人の姿になったネージュからも疑問の目を向けられて私は苦笑いをしながら質問に答える。


「もちろん。こんな格好のまま家までは帰れないからね。ここからは私の新しい力を使わせて貰うよ」

「新しい力?」

「えっ・・・お姉って厨二?」

 ———厨二病言うなし‼

 内心でクロに文句を言い、ジトっとした目を向けながら私はクロと狗神君に魔王としての力が戻った際に得た物について説明する。


「魔王の力が戻った際に私に新しい魔法の属性が追加されたんだよ。属性は空間。恐らく、《リング・オブ・トワイライト》の上位互換みたいな事が出来るハズだよ。試しに使ってみよう《ゲート》」


 行き先の宮城邸を思い浮かべながら魔法を使うと見覚えの有る回廊が目の前に出現する。

 狗神君は少しだけ驚いた様子でクロはあからさまにやばいものを見るような目で回廊を見ている。


「え・・・お姉、コレに入るの?絶対ヤバイ奴だよね?何?死ぬの?この世から消えて無くなるの?」


 思っていた以上にビビっているクロに苦笑を浮かべながら私は先んじてゲートを潜り、安全を確かめる。

 ゲートを潜ると見慣れた宮城邸が目の前に現れ、内心でホッと息を吐き、ゲートに首を突っ込んで三人を呼ぶ。


「安全性は保障できたからこっちに来て貰って大丈夫だよ」

 そう声を掛けると狗神君とネージュは直ぐにゲートを潜り此方に来るがクロだけは疑う様にこちらを見ている。

 ———・・・どうでも良いけど何か私になった途端にシロの時と私の時とで態度違くない?

 内心でそんな愚痴を零しながら

 クロの方へと行き、クロの手を握ってゲートを潜る。


「本当に家の前に出た・・・」


 ゲートを潜って目の前に現れた家にクロが驚いた様子でポツリと声を漏らす。


「とりあえず、お風呂に入ってご飯を食べてから話をしよう」


 クロ達にそう言って皆で家の中へと入る。


「あ、そうだ。先にこれ渡しておくな」


 家の中に入って直ぐに狗神君が思い出した様子でアイテムボックスから観覧車のゴンドラから回収した荷物を私達に渡してくれる。

 荷物を受け取った所で狗神君が口を開く。


「じゃあ、俺はこの辺で帰るよ。コハク。ネージュの事を頼むよ」


 そう言って玄関から出て行こうとする狗神君の袖をクロが掴んで引き止める。


「先輩、その格好で帰ったら目立ちすぎます。家で洗濯やなんかもしますから少し休んでから帰ったらどうですか?お姉とも話したい事が有るでしょう?」

「え、良いのかい?じゃあ、お言葉に甘えようかな・・・」


 些か不満そうな所が気になるがそう提案したクロに狗神君は少し驚いた様な顔をするが素直にクロの厚意に甘える事にしたらしい。

 まぁ、確かに今の狗神君の服にはあっちこっちに血も付いているしボロボロな状態なので目立つだろう。


「とりあえず少し此処で待っていてください。お姉、私とお姉とネージュちゃんの三人でまずお風呂に入るよ。先輩は絶対に此処で待っていてください。覗いたら・・・」


 そこでクロは持っていた剣をスッと持ち上げる。


「神に誓ってここで待っているよ」


 両手を小さく上げた狗神君がそう言うとクロは剣を傘立ての中へと置く。

 クロとネージュと一緒に家に上がり、バスタブにお湯を張りながら三人でお風呂を済ませる。

 お風呂から出た後で狗神君用の服を父の服の中から見繕い玄関で月夜と遊んでいた狗神君に声を掛け、月夜と一緒にお風呂へと案内してからリビングでネージュの髪を乾かしているクロ達がちゃんと着替えているのを確認して私は冷蔵庫の中から食材を取り出し、食事の用意を始める。

 少しして料理が終わった辺りで狗神君と月夜が出て来たので四人と一羽で食事を摂り、いざ話をしようとした所で疲れがピークに達したのかクロがフネをこぎ出す


「少し休んでから話をしようか?」


 化け物に追い掛け回されたり、命の危機にさらされたりと疲れて当然といえば当然の状態に苦笑を浮かべながら提案すると同意を得られたので帰ろうとする狗神君を引き止め、私達はまず休息を摂る事にした。

 当然ながらその日は皆起きる事なく起きた時には日付は次の日になっていた。


 ☆


 ネージュと一緒に布団に入って少しして私は違和感を感じてゆっくりと目を開き、目の前の広がる光景に密かに溜息を吐く。

 前世の自室のベッドで眠りに就いたはずなのに目の前には背の高い無数の本棚と床一面の彼岸花が広がっている。

 シロの時に見た事の有る光景だった為に驚く事は無かったが誰の領域化を把握して溜息と共に声を掛ける。


「案外早い再会だったね。オリジン」

「あ、直ぐに私だって解るんだ」


 声を掛けると私とそっくりな顔のオリジンが答える。


「まぁ、前に一度来た事が有るからね。それで?私は何でここに呼ばれたのかな?」


 オリジンの言葉に答えながら私が呼ばれた理由を問い掛けると彼女は少しだけ不満そうな顔をして口を開く。


「ちぇ、ちょっとは驚くかと思ったのにつまらないなぁ・・・まぁ、いいや。私が貴女を此処に呼んだ理由は二つだよ。一つは貴女達が向こうに行く為の方法を教えてあげようと思ってね」


 彼女の言葉に私はその方法に大体の予想を付けながら先を促す。

 まぁ、恐らくだけど空間魔法を使うんだろ言うけど・・・


「二つ目はちょっと訓練をつけて上げようかと思ってね」


 そう言って彼女が指をパチンと音を立てて鳴らすと周囲の光景が変わり広場のような空間に飛ばされる。


「流石に今のままじゃ、あの子といい勝負はできても勝つまでに絶大な犠牲が出るからね・・・私達で稽古をつけて上げる」


 そう言った彼女の近くに歴代魔王の歴史書で見た彼女の半身で私の前世だった少女達が立ち並ぶ。


「私の半身だった魔王達のボスラッシュ。全員に勝てたら向こうに帰る方法と貴女が訊きたい事を一つだけ教えてあげる」


 剣を構える彼女に私は溜息を一つ吐いて立ち上がる。

 稽古をつけてくれるのも向こうへの帰り方を教えてくれるのも感謝すべき事だけど今日ぐらいは休ませてほしかった・・・

 そんな言葉を飲み込み私は《アメノミナカヌシ》呼び出し、構えを取った。


此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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