魔王の帰還・2
おはようございます。
第297話投稿させて頂きます。
今回は第三者視点になります。
楽しんで頂けたら幸いです。
「うそ・・・なにをやっているの・・・?」
目の前で起きた出来事に黒羽は思わず声を漏らす。
自身の記憶を思い出し、コハクに戻ったシロは、最初は襲ってきた化け物へと向けて攻撃を繰り出し、ここではちょっと言えない様なグロテスクな光景を繰り出していた。
そんなコハクが相手の頭を二つとも潰した時点で相手を睨む様に動きを止めると化け物の死体を氷漬けにして何とか立ち上がった和登の元へと駆け出し、和登と少し何かを話をした後で手に持った剣を和登へと突き立てる。
一瞬、魔王と勇者という関係から和登の事を始末するつもりかと思い先程の言葉を漏らし、呆然と二人の姿を見ていると和登に突き刺されていた剣をコハクが一瞬、躊躇した後で引き抜く。
「え・・・?」
黒羽は目の前で起きた光景に再び声を上げる。
栓をしていた剣が抜かれて当然、和登から血が噴き出すと思っていたが血は一滴も流れず代わりに光の玉が和登の体から抜かれた剣と一緒に出て来る。
「狗神君、名前を付けてあげて」
「名前?」
剣を下げ、静かだがはっきりと聞こえる声でコハクは和登に光の玉に名前を付けるように促し、和登は少しだけ考えた後で口を開く。
「《アマテラス》《ツクヨミ》」
和登が光の玉へと向けて名前を告げると光の玉が一際輝き、周囲の鉱物が光の玉へと吸収されるように吸い込まれて行き、光の玉が一際光り輝き、光が収まると先程まで光の玉が浮かんでいた場所に二丁の長身の銃剣が浮かんでいる。
「手に取って狗神君」
コハクが和登に向かってそう言ったのと同時に先程化け物がいた場所からバリンと何かが砕ける音が鳴り響く。
黒羽が音のした方に目を向けるとコハクが殺したと思っていた化け物がいつの間にか潰された頭と刎ね飛ばされた頭が再生させて氷を砕いて立ち上がり、コハク達の方を憎々しげに睨みながら向く。
「うそ・・・」
信じられない光景に黒羽が再び声を漏らすとコハク達の方からも声が聞こえてくる。
「狗神君。アイツを倒すには両方の首と心臓の同時破壊が必須だ。合わせて貰える?」
「承知した」
その言葉と同時にコハクが敵に向かって走り出し、和登が二丁の銃剣を構え化け物へと向けて発砲する。
銃弾はコハクを追い越しあと少しで化け物に届くという所まで迫るが化け物は石の大剣で銃弾を防ぐ。
「余所見をしていて良いのかな?」
銃弾を防いだ化け物はニヤリと笑って動き出そうとするがその隙にコハクが懐に潜り込み化け物に向けて剣を振るう。
化け物は慌てた様な様子で大剣を使いコハクの斬撃を受け止める。
「へぇ、流石に受け止められるか・・・でもこれはどうかな?」
鍔迫り合いをしながらコハクは挑発をする様にそう言うと正面から頭をずらすとコハクの頭の有った場所を二発の弾丸が飛び、化け物に命中し、化け物が体勢を崩す。
体勢を崩した化け物の胴体をコハクの剣が薙ぎ払う。
「ふむ、胴体等を攻撃したら足止めにはなるか?」
そう言って化け物の心臓目掛けて突きを繰り出すコハクの攻撃を化け物はギリギリで体勢を立て直し、回避し、忌々し気に唸り声をあげる。
コハクと化け物は暫し睨み合いながら互いに武器を構えて駆け出す。
コハクと化け物が切り結び、和登が化け物の隙を突き、銃弾を的確に当てていく。
そんな戦闘がしばらく続き、再生はしていくものの化け物の体には確実にダメージが蓄積されていく。
「そろそろこの戦いも終わらせようか?」
その言葉と共にコハクが黒い剣で今までの斬撃よりも鋭い斬撃を繰り出し、化け物はそれを受けようと今までと同じ様に石の大剣で防ごうと構えるが黒い剣は石の大剣を今まで切れなかった事が嘘だったかの様に両断する。
「和登君‼」
敵の体勢が再び崩れたのを見て和登を呼ぶコハクの言葉と同時に和登は駆け出し、敵の体を踏み台にして跳躍し、銃剣の剣部分で二つの頭を同時に切り裂く。
それに合わせてコハクの突きが化け物の心臓を破壊する。
頭と心臓の三つを同時に破壊され化け物の動きがピタリと止まり、ゆっくりと後ろへと向かって倒れる。
コハクと和登は暫く武器を構えたまま警戒しているが数分経ち化け物が完全に死んだのを確認して二人は息を吐いて武器を下す。
そんな二人に黒羽は自分を守る為にいつの間にか近くに来ていたネージュの手を握って二人へと向かって歩き出した。
此処までの読了ありがとうございました。
次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




