魔王の帰還・1
おはようございます。
前回は急にお休みさせていただき申し訳ありませんでした
第296話投稿させて頂きます。
今回はコハク視点になります。
楽しんで頂けたら幸いです。
―――体が軽い・・・
黒羽を後ろに下がらせてハナズオウへと向けて駆けている途中、私は内心で自身の体の変化に驚きながら駆ける。
体の状態が絶好調な事にはシロの時にも不思議に思っていたが私に戻ってクロを見た時にその疑問が解消された。
魔法属性《快癒》、傷を癒し、病を癒し、欠損した個所を完全に再生させる。治癒の魔法以上に稀有で目にした者全てが奇跡だと口にする。
そんな特殊な力が黒羽には宿っていた。
―――まぁ、正直に言うと今の黒羽には魔法は使えないので恐らく私の治療をしてくれたのは今の黒羽ではないのだろうが・・・
そんな事を考えながら前へと踏み込むのに合わせて私はハナズオウに向けて左手に持つ剣を振るうと相手は石で出来た大剣で防ぐ。
武器だけでも破壊するつもりで切り付けたのに石で出来ているとは思えない強度の大剣に内心で舌打ちをしながら私は一度距離を取る為に剣を弾き、相手の体勢を崩してその隙に一度距離を取り自分も体制を整える。
―――やっぱり、体が鈍っているな・・・剣が一本なのもこいつらが相手ではが心許ないな・・・
シロとして生活していた間にすっかりと訛っている体と右手に無い重みに少しだけ心細さを感じながら私は再び剣を構え、敵に向けて駆ける。
先程と同じ様に頭を狙って剣を振り被るがハナズオウも先程より早く大剣で防御の体勢を取る。
その様子を見て私は振るおうとしていた手を途中で止めて相手の大剣を足場にして跳躍し、
相手の頭上を飛び越えるのに合わせて右の頭に突きを繰り出し、頭を潰す。
「グァァァァ」
「まずは一つ」
着地して体勢を立て直してもう片方の頭を潰す為に死角から回り込む。
「オクタ・サーティーン・ライトニングアロー」
右の頭が潰れているにも拘らず私の動きに反応してきたハナズオウに向けて13本の雷の矢を放つ。
ハナズオウは大剣で急所を守り、雷の矢を防ぐが複数の矢が腹部や腕に刺さり、電流が流れハナズオウの体を麻痺させる。
「これで二つ」
ハナズオウの体が麻痺している間に相手の体を駆け上り、もう片方の首を刎ね、ハナズオウから離れるように跳躍してハナズオウから目を離さないように地面に降りる。
「しぶといな・・・やはり二つ同時に潰さないとダメか・・・」
警戒しながらハナズオウを見ていると予想していた通り、潰した右の頭が少しずつ再生して行くのを見て内心で舌打ちをしながら押し切る為に必要な手数が足りない事を歯がゆく感じる。
―――せめて《タケミカヅチ》と《シナツヒコ》だけでも復活してくれていたらオリジンの言葉を実践しなくて済んだのに・・・
今の自分だけの力では倒せない事を悔しく感じながら私は次の行動に移る。
「オクタ・コキュートス」
氷の魔法でハナズオウの拘束し、動きを封じ、その隙に私は和登君の元へと向かって駆け出す
「コハク‼」
近くまで行くと私が戦っている間にポーションを飲んで回復したのか私の意識が戻った直後よりも顔色が良くなった狗神君が私の名前を呼び駆け寄ってくる。
「本当にコハクだよな?」
駆け寄ってきた狗神君は心配そうな顔をして私にそう問い掛けて来る。
その問いに私は少しだけ笑みを浮かべて答える
「正真正銘、私だよ。狗神君。ありがとう。私たちを守ってくれて・・・それと・・・他にも色々・・・」
彼に対して言いたい事も謝罪したい事も沢山有るが今はそれ処では無い為、今は短く済ませる。
正直に言って諸々の謝罪等を省き、お願いを口にするのは気が引けてしまうが時間が無い為に私は意を決して口を開く。
「狗神君。言わないといけない事は色々有るんだけどまずはアレを倒さないといけない。だから・・・私のお願いを聞いてくれる?」
「もちろんだ」
断られる事を予想して怖々と訊ねた私に狗神君は内容も聞かずに即答してしまう。
そんな彼に私は内心で泣きそうになりながら笑みを作る。
恐らく、私の顔は泣き笑いになっているだろうがそれでも口を開く。
「内容はちゃんと聞いたほうが良いよ。でも、ありがとう。私と一緒に戦ってくれる?」
「あぁ、だからもちろんだ。コハクがそう言ってくれて嬉しいよ」
何とかその言葉を言った私に狗神君は笑みを浮かべて答えてくれる。
「・・・ありがとう。」
狗神君のその言葉を聞き、私は再度お礼を言って左手に持つ剣を彼に向けて構え、オリジンに言われた事を思い出す。
『《アメノミナカヌシ》のスキル。クラスペディアの花護には幾つか効果が有るわ。その内の一つはスキルを使った相手からその人の為の武器を生成できるわ。使い方はその相手に向けて剣を刺してスキルを発動させるだけよ。もちろん対象になった人には傷一つつかないわ』
そう言って私と同じ顔で笑った胡散臭い現女神の初代黄昏の魔王の顔を思い出しながら私は狗神君へと向けて《アメノミナカヌシ》を突き刺した。
此処までの読了ありがとうございました。
次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




