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隻眼、隻腕の少女

おはようございます。

第292話投稿させて頂きます。

今回もシロ視点になります。

楽しんで頂けたら幸いです。

「あぁ、来てしまったのか・・・」


 わたしの顔を見て同じ顔をした少女がわたしよりも少し暗い声音で呟く。


「・・・貴女は何者ですか?」


 普通に考えれば目の前の女の子がコハクなのだろうがオリジンさんの言葉を思いだし、彼女に問い掛ける。

 わたしが彼女にそう問い掛けると彼女の顔に不快そうな表情を見せた後再び口を開く。

 心なしか彼女から発せられる圧が増したように思える。


「腹立たしい・・・」


 そう言った彼女の手にはいつの間にかボロボロで色の褪せている水色の刀身を持つ剣が握られている。


「こんな姿になりたいが為にワタシは捨てられたのか・・・」


 その言葉と同時にわたしの目の前から彼女が消え、後ろから気配を感じる。


「非常に腹立たしい・・・」

「っ‼」


 どこに行ってしまったのかと周囲を警戒すると後ろから彼女の声が聞こえ咄嗟に前に転げ出るが背中に焼けるような熱さと痛みが走りくぐもった声が漏れる。


「この程度も避けられないなんて不甲斐ない。何故、ワタシじゃなくてこいつなんかが・・・」


 憎々し気にわたしの事を見ると彼女は剣を構え直し、わたしへと向けて駆けてくる。


「ちょ・・・話を・・・」


 無言で振るわれる剣を自分の持つ黒い剣で何とか受け止める。

 オリジンさんの言う通り、彼女にと話をする事が出来ない事に焦りを感じながら相手の押し込みに負けない様に剣を握り直す。

 ———コハクの記憶のバックアップを受け取って紛いなりにも剣が使えるようになっていて良かった・・・

 内心で相手の剣を受け止められた事にホッと息を吐きながらわたしはそれを顔に出さないように注意をしながら口を開こうとすると相手が先に口を開く。


「やはり、剣の腕も劣化品か・・・コハク(あの女)は本当に全て捨てるつもりだったのか・・・地位も剣の腕も責任も一番大切なあの人への思いも・・・」


 そう呟くと何故かわたしに対する嫌悪感が増したように顔を顰めてわたしの腹部に蹴りを入れて来る。


「かはっ‼」


 腹部に走った激痛と一緒に口から空気が抜け、相手との間に距離が出来てしまう。

 腹部の痛みに思わずその場に蹲ると相手はわたしの事を見下しながら口を開く。


「情けない。これがワタシの半身かと思うと腹が立つ」

「どうして貴女はわたしの事をそんなに嫌うの・・・?」


 理由も無く向けられる悪意にわたしが痛みに何とか耐えながら立ち上がり、彼女に聞くと目の前の女の子はその瞳に怒り以外にも蔑む様な光と呆れた様な光が混ざり込みながら口を開く。


「口を開けば何で何でと・・・お前を見ていると本当に腹が立つ・・・コハク(あの女)に選ばれたお前には所詮捨てられたものの気持ちなんてわからない‼」


 そう言って再び剣を振り被り、襲い掛かってくる彼女の剣を自分の剣でギリギリ捌きながら大きな声で彼女に反論する。


「だから‼その気持ちを教えてと言っているの‼」


 その言葉と一緒に今度はわたしから彼女に切り掛かるが相手は危なげの無い動作で軽々と避ける。


「理由も分からずに襲い掛かられて悪口を言われるのは納得できない‼」


 黒羽さん達といる時にはあまり感じた事の無かった怒りを感じながら大声で相手に向かって怒鳴ると相手は少しだけ驚いた表情を作って口を開く。


「怒りの感情は有るのか・・・」

「?」


 彼女の言葉の意味が分からずに武器を構えたまま首を傾げると彼女も剣を構えたまま少しだけ考え込み、口を開く。


「その感情に免じて少しだけ答えてやる。お前、自分が可笑しいと思った事が有るだろ?例えば誰かを恨んだり、怒りが沸かなかったり、悲しい出来事に反応しなかったりだ」


 彼女の言葉に一瞬だけドキリとする。

 確かにわたしは黒羽さんと一緒に映画を見ていても黒羽さんがわんわん泣いてしまっている悲しいシーンで何も感じ無いし、例の記者に嫌な事を言われても黒羽さん程怒りが長続きしない。


「何故何故言うお前に教えてやる。お前はコハク(あの女)が普通の子として生きられたらという正の感情を集めた理想だ。そしてワタシは負の感情の塊だ‼そんなワタシがお前を憎んで何が悪い‼啜れ‼《クラミツハ》‼」


 その掛け声と共に彼女の持つボロボロの剣から棘が飛び出し、刀身が赤く染まる。


「《血凱》」


 赤く染まった剣を横に振ると剣先からまるで風化するかの様に消えて行き、彼女に血の様な液体が纏わりつく。


「オマエハモウ、ココデシネ」


 初めてわたしの意識が覚醒した時に見た鎧を纏って半身である女の子は獣の様な動きで私を殺す為に駆けだした。


此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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