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化け物の襲来

おはようございます。

第287話投稿させて頂きます。

今回は黒羽視点になります。

楽しんで頂けたら幸いです。

 ———どうして?どうしてこうなった?


 薄暗い建物の中を私はどうしてと自分に問い掛けながら死んだ魚の様な目をして先輩と二人で歩く。


 ———私はただ、夏の心霊番組を見ていた時に横で見ていたシロちゃんが、心霊現象が出る度にビクビクしていて可愛かったからお化け屋敷でも可愛い姿が見れると思って誘ったのに・・・何故、対して仲良くない先輩と仲良くお化け屋敷を回ることになっているのか・・・?


 先輩に対して些か失礼な事を考えているとは承知しているが多分大丈夫だろう。

 何故なら恐らく、私同様に先輩もどうして?っと問い掛けながら歩いているのだろう。その証拠に先輩も何処か死んだ魚の様な目をしている様に見える上に先程から二人揃って驚かしてくるお化けやゾンビ役の人、それらに混ざって来る本物に無反応のまま順路を進む。

 いい加減、驚かし役の人達に申し訳なくなってくる。


「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛・・・・・ヒッ‼」


 とうとうゾンビ役で前から出てきたスタッフさんが余りに無表情で無反応に歩く私達を見て驚いて悲鳴を上げてしまった。


「なんかスタッフさんに申し訳なくなってきたな・・・」

「・・・そうですね」


 先輩の言葉に私は生返事をしてこっちに近づいて来る本物を睨みつけ追い払う。


「えっと・・・さっきから頻繁にスタッフさんが居ない方を睨んだりしているけど理由を聞いてもOK?」


 先程からの私の行動を疑問に思っていたのか先輩が控えめに私の行動に対して問い掛けて来る。

 別に隠す事でもないし、信じる信じないは先輩次第なので私は溜息を一つ吐き、質問に答える。


「別にこっちに近づいて来ようとしている本物を追い払っているだけですよ」

「へ?」


 私の回答が意外な物だったのか先輩は些か間の抜けた声を上げるが直ぐに表情を戻し、口を開く。


「そう言うの分かる人なのか・・・?」

「えぇ、信じる信じないは自由ですが一応」

「ここにもそんなに居るの?」

「えぇ、まぁ、それなりに」

「・・・」

「・・・」

「・・・」


 会話が途切れ、心無しか周囲の空気も重くなったが構わずに二人で経路を進む。

 暫く、無言のまま進むがあともう少しで最後の驚かしポイントで先輩が少し躊躇った様子を見せるが意を決した様に表情を引き締めると口を開く。


「宮城さんはシロさんが記憶を取り戻す事に反対しないのか?」

「はい?」


 記憶が戻ることは普通に考えて良い事なので予想していなかった質問をされて訝しげに顔を顰めながら返事をすると先輩は困った様子で少し考えると首を横に振って口を開く。


「いや、シロさんから何も聞いていないのなら俺が口にする事じゃない。多分、シロさんはちゃんと君に直接話をすると思うから・・・さて、最後のエリアみたいだね」


 先輩の言っている事の意味が解らずに問い詰めようとすると先輩が足を止め、このアトラクションの最終エリアに入ったと教えてくれる。


「ここから先は一人ずつ行かないといけないらしいね。どうする?先に行くかい?」

「・・・お先にどうぞ」

「それじゃあ、お先に」


 壁の貼り紙を見て先輩が問い掛けて来るので先に行くように勧めると先輩は苦笑いだが此処に入って初めて笑みを浮かべて扉の先に消えて行く。

 恐らく、自動ドアなのか先輩が中へと入ってから少しして自動でドアが開き、私もゆっくりと歩を進めて扉の先へと歩いた。

 結果として不毛になったお化け屋敷を出てシロちゃん達と合流して次のアトラクションへと向かう。

 この後も幾つかのアトラクションに乗り、遊園地内のお店でおやつを食べたりして時間を過ごし、とうとう楽しい時間もお終いが近づく。


「4名様。どうぞ~」


 係員の女の人に案内されながら私達は本日最後と決めていたこの遊園地の名物の一つでもある巨大な観覧車へと足を運ぶ。


「あー、楽しかった‼シロちゃん。どうだった?」

「わたしも楽しかったです。黒羽さん。狗神さん。今日はありがとうございました」


 ゆっくりと上へと昇って行く観覧車の中で私はシロちゃんに向けて今日はどうだったかとシロちゃんに訊くとシロちゃんも楽しかったと答えてくれる。


「あぁ、俺も楽しかったよ。二人共ありがとう」


 先輩も笑みを浮かべて今日が楽しかったと言ってくれる。


「・・・最後に良い思い出になりました」


 その後は比較的和やかな空気の中、談笑をしながら観覧車が一周するのを待っていると頂上に着くという所でシロちゃんが何処か意を決した様子でポツリと呟く。

 その言葉を聞いて先輩が顔を強張らせたのを見て少しだけ嫌な予感を覚えながら私は無理矢理笑みを作り、口を開く。


「まぁ、異世界に帰っちゃうからまたこっちに来るっていうのは難しいかもしれないけど行ったり来たり出来る方法を探せばまた何時でも来られるよ?」


 私が無理矢理にそう言うとシロちゃんは何処か寂しそうな笑みを浮かべて首を横に振り、口を開く。


「黒羽さん。ここまで黙っていましたけど恐らく、記憶を取り戻したらシロ(わたし)は・・・」


 本能的に聞きたくないと思う話をシロちゃんが口にしようとするとその途中で観覧車のゴンドラが大きく揺れ、観覧車が止まる。


『ルシェ‼』


 ゴンドラが揺れるのと同時に楽しそうに外を見ていたネージュちゃんが何かを叫び、シロちゃんを守るように近くに来る。

 何が何だか分からなくなって先輩を見ると先輩は驚いた様子でシロちゃんの後ろ側の窓を凝視している。

 先輩の視線を追ってガラス窓を見るとそこには人の姿をしているが大きさが異常な名状しがたい何かが観覧車のフレームに乗っている。

 その何かはゴンドラと観覧車の本体を繋ぐフレームをメキメキと音を立てて破壊していく。

 ガキンっと鈍い金属音を周囲に響き渡らせると一瞬だけ体に不快な浮遊感を感じる。

 見ると化け物は観覧車を破壊してゴンドラを両の手で持ち上げている。

 私達が恐怖と驚きで化け物を見ていると化け物はゴンドラを持って居る両手を大きく振り被る。

 咄嗟に先輩が私達三人を床に座らせて守るように上に覆いかぶさるとそれと同時に遊園地の山側の方へと向けて化け物は私達の乗っているゴンドラをぶん投げる。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」


 突然、襲い掛かる重力と余りの衝撃に私は頭を守りながら悲鳴を上げてしまう。

 恐らく、地面に激突した衝撃と共に私は意識を手放してしまった。

此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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