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お話から考えた事

おはようございます。

第285話投稿させて頂きます。

今回は前半シロ視点、星の後は黒羽視点になります。

楽しんで頂けたら幸いです。

「えっと・・・先程聞かせて頂いたお話はわたしが記憶を無くす前にやった事でわたしは異世界人な上にその世界では魔王であったと・・・」


 黒羽さんから狗神さんとお話をしたと聞いてから三日が経ち、わたしはLanで約束した狗神さんとの待ち合わせで『街』に有る完全個室のカフェで約束通りお話を聞かせて貰っていた。

 わたしが何者なのか狗神さんとはどのような関係だったのか今、私の膝の上でケーキを食べているネージュちゃんとの関係を一通り狗神さんから聞いてわたしは先程の言葉と共に思わず頭を押さえてしまう。


「ああ、俺の言った事は神に誓って事実だよ。」


 狗神さんが神妙な面持ちでそう言うのを見て付いて来て貰った黒羽さんの方を見ると黒羽さんも彼は嘘を吐いてはいないという事に同意するように頷く。

 どうやら黒羽さんも狗神さんがこういう事で嘘を吐く人ではないと知っての反応のようだ。


「とりあえず、今の話が本当だという証拠を見せるよ。ネージュ。申し訳ないけど一度小さい姿で元の姿に戻って貰えるかな?」


 それでもまだ現実味の無いわたしに狗神さんがそう口にすると膝の上でポンッと軽い音がしたのと同時に先程まで感じていた重さが無くなり、目を向けるとわたしの膝の上には翼の生えた蜥蜴の様な薄い奇麗な鱗を持った仔が少しだけ不安そうな顔でわたしの方を見ている。


「・・・」

「ネージュはドラゴンの仔なんだ。驚いたと思うけどこれが一番手っ取り早いと思ってネージュに元の姿を見せてもらった」


 起きた出来事に驚き、何にも言えないでいると狗神さんが拒絶しないで欲しそうに説明をしてくれる。

 そんな中で恐る恐る膝の上に居る龍に向けて手を伸ばすと龍は頭を差し出して来たのでゆっくりとその頭を撫でると気持ちが良さそうに目を細めてくれる。


「かわいい・・・」


 思わず口をついて出た言葉に狗神さんも膝の上のネージュちゃんも何処かホッとしたような様子で息を吐く。

 一通り大人しいネージュちゃんを撫で終えてからわたしは意を決してこちらを微笑ましく見ていた狗神さんに問い掛ける。


「えっと・・・とりあえずは把握しました。それで、わたしはどうしたら良いんでしょう・・・?」


 これからどうすれば良いのかの指針にする為にコハクの事を知っているであろう狗神さんに問い掛けると彼は少しだけ困ったような顔をして答えてくれる。


「えっと・・・とりあえずは君に記憶を思い出して貰う必要がある。でも、問題なのはその方法が解らない」


 彼が言うには最後に会ったコハクの記憶は認知症の様にどんどん消失して行った様で原因も対策も専門のお医者さんでも解らなかったらしい。

 とりあえず、今現在は何も出来ない事が解り、黒羽さんも含めた全員で溜息を吐く。


「あ、そうだ。とりあえず、君にこれを返しておくよ」


 そう言ってポケットから一本の鍵を取り出してわたしに渡してくれる。


「これは?」

「何に使うのか分からないけどもともとコハクが持っていた物でコハクと別れる前も彼女が持って居たんだけど何故か俺の手元に有ったから何かヒントになるかもしれないから返しておくよ。さて・・・話せる事も話したし、そろそろお開きにしようか?支払いは俺がしておくから二人は先に出ていいよ。ネージュ、先に二人に出て貰うからそろそろこっちにおいで?」


 話して貰える事は全て話し終えたのか狗神さんがお開きを口にしてネージュちゃんを呼ぶと彼女は龍の姿のままわたしの膝の上で少しだけ名残惜しそうにしてから素直に狗神さんの方へと向かっていく。


「狗神先輩。何か有ったらまた連絡しますね。行こう。シロちゃん」


 狗神さんの言葉を聞くと黒羽さんが立ち上がってネージュちゃんを一撫でしてからドアを開けて外へと出て行くのに続いてわたしも外に出ようとすると狗神さんが言い難そうに口を開く。


「シロさん・・・恐らくだけど・・・」

「狗神さん。その先はシーッです」


 狗神さんが何かを言いかけた所でわたしは自分の口に人差し指を立ててその先を遮る。


「覚悟の上ですよ・・・」

「・・・すまない」

「いえ、お話。聞かせてくれてありがとうございました」


 そんな会話を最後にしてわたしは黒羽さんの後を追って部屋を後にした。


 ☆


「そう言えば黒羽さん。以前聞いていたからとはいえ、わたしが異世界人だという事やネージュちゃんがドラゴンの姿になった事にあまり驚いていませんでしたね?」


 狗神先輩との話を終えて家への道を歩いている道中でシロちゃんが不思議そうに私の様子を問い掛けて来る。


「うん?まぁ、さっき、シロちゃんも言ってたように事前に私は狗神先輩から話を聞いていたし、何よりネージュちゃんと話す二人の言葉が日本語じゃなかったしね。そりゃあ驚かなくもなるよ」

「言葉?」

「そ、言葉。ネージュちゃんは何処の国の言葉にも当てはまらない言語を使っていたんだよ。二人共、気づいていなかった所を見るとそういう力でも持って居るんじゃないかな?」

「なるほど・・・」


 ラノベでよくある展開を口にするとシロちゃんは感心した様に頷く。


「それにしても、記憶を取り戻す手段も検討が付かないし、とりあえず、思い出づくりの為にネージュちゃんと狗神先輩も誘って皆で何処かに行こうか?」

「思い出づくり?」


 私の突拍子もない提案にシロちゃんが首を傾げるのを見ながら私は寂しさからひきつらない様に笑みを浮かべて口を開く。


「うん。だって記憶が戻ったらシロちゃん達は元の世界に戻っちゃうでしょう?狗神先輩も付いていくだろうし、いつ会えるかも分からなくなっちゃうんだもん。それぐらい良いでしょう?」

「・・・」


 反対はされないだろうなと思って提案した事だがシロちゃんの反応が鈍くて少しだけ不安になる。

 前言を撤回しようかと思い口を開こうとするとシロちゃんが口を開く。


「賛成です‼わたしも黒羽さん達と思い出を作りたいです‼」


 予想していたより食い気味に賛成されて少しだけ面喰いながら私は笑みを浮かべて口を開く。


「本当。じゃあ、皆で遊園地にでも行こう。狗神先輩の関係でちょっと遠くの場所になるけど」

「良いですね‼お弁当作ります‼」

「よし‼じゃあ、狗神先輩に連絡して先輩の予定にもよるけど明後日に皆で出かけよう‼明日はスーパーで買い出ししようね」

「はい‼」


 そのまま二人でじゃれあいながら私達はゆっくりと家への帰路を歩んだ。

 ・・・・この時の私はシロちゃんが記憶を取り戻すという事がどういう事かを深くは考えてはいなかった。

此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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