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スノードロップの花言葉

おはようございます。

第284話投稿させて頂きます。

ブックマーク・いいね、ありがとうございました。とても励みになります。

今回も第三者視点になります。

楽しんで頂けたら幸いです。

 イリア軍とクラシア王国、グラディア帝国の同盟軍の戦闘が行われた荒れ果てた大地に楽しそうに歌う少女の声が響く。


「London Bridge Is Broken down♪ Broken down♪Broken down♪London Bridge Is Broken down♪My fair lady♪」


 歌に合わせて何かを探す様にしゃがんで地面を手で掘る少女は丁度歌の終わるタイミングで手を止め、立ち上がり強張った体をほぐす様に伸ばす。


「う~ん♪やっぱり見つからないなぁ♪」


 少女が探しているのは一本の鍵、先に戦で帝国の兵士に死神と恐れられた少女の持っていたソレを探して少女・・・エリスは小首を傾げながら独り言を口にする。


「おかしいなぁ♪トワちゃんや勇者は粉々に吹き飛んでも帝国の魔法使いの魔法程度であの鍵が壊れる事なんてないはずなんだけどなぁ♪現にあの勇者君の剣は無事だったし・・・もしかして別の世界に飛んだか・・・?」


 少し前に鍵を探す過程で見つけた勇者の剣はかなり前にフルニカ王国で拾った勇者の紛い物に実験も兼ねて渡してしまった。実験に利用されているとは知らずに喜んでいた滑稽な姿を思い出し、エリスは特に何も思う事は無く。鍵が今有る可能性のある場所へと思いをはせる。


「・・・まさか、彼女たちは生きて異世界に・・・ならば空間の亀裂が何処かに・・・」

「エリス様。ここに居られましたか‼」


 周囲に目を向けようとしたタイミングで誰も居ないとは言え敵地で上げられるその大声に流石のエリスも顔を顰めて振り返るとそこには帝国の鎧を着た兵士が立っておりその顔を見てエリスは更に顔を顰めて口を開く。


「君は確か、あの時の広範囲攻撃を提案した・・・」


 内心で余計な事をしてくれた馬鹿と罵りながらそこまで口にすると目の前の兵士は帝国式の敬礼をしながら口を開く。


「憶えて頂いて光栄です。ウツギと申します」


 言葉とは裏腹に若干の憎悪を瞳に宿しながらウツギは挨拶をしてくる。

 内心で演技が下手だと思いながらエリスは探し物を邪魔されている事にイラつきながらエリスは男に問いかける。


「あは♪別に憶えては無いよ♪それで?君は何しに来たのかな?」


 イラつきを男よりもうまく隠しつつ問い掛けると男は姿勢を正したままエリスの問いに答える。


「はっ‼皇帝陛下がエリス様をお呼びです。至急、帝国にお戻りください」

「はぁ?」


 男の言葉にエリスは今度こそ不機嫌を隠しもせずに男を睨む。

 エリスの様子に表向きは怯えた様に男は言葉を続ける。


「エ、エリス様に次の戦での作戦会議に参加して頂きたいとの事です」

「アルバルトに伝えておけ、僕は帝国の人間じゃあない。お前の命令を聞く義務も無ければ戦争に参加する気もない。あんまり調子に乗ってると殺すぞ♪」

「も、申し訳ありませんが、その言葉は直接お伝えください・・・」


 顔に笑みを浮かべず声の調子だけを明るくして男にそう言うと表面上は申し訳なさそうにしながら男はアルバルトへの伝言を拒否する。


「はぁ~・・・しょうがないなぁ。もう少しだけ探し物をしたら行くことにするよ。それで良いね♪」

「・・・承知しました」


 そう言ってエリスが何かを探す様に周囲を見回すのを見ながら男は隠し持っていたナイフを手に持ちバレないようにエリスへと近づく。


「あは♪みーっつっけた♪」


 何かを探していたエリスのその声と共に残った距離を一気に駆け、油断しているエリスの心臓に目掛けてその凶刃を向ける。


「はい♪残念でしたぁ♪」


 あと少しでエリスに刃が届くという所でエリスはそんな言葉と共に身を躱し、男に向けて足を引っかけて転ばしてその身を拘束する。


「あは♪奇襲を掛けたいのなら殺気ぐらい隠しなよ♪ウツギ君・・・いや、第八の厄災ハナズオウ君♪」


 エリスの口から自身の正体を口にされて驚く男に構わずエリスは片手で男を拘束しながらアイテムボックスから縄を取り出し、男を縛り上げて口を開く。


「あは♪バレていないと思った?」


 そう言って手を離したエリスは男の前に回ると愉快爽快と言った様子で言葉を続ける。


「君の正体も目的も最初からバレバレなんだよ♪どうせ半身であるコレ(シレネ)の敵討ちだろ♪」

「きさまぁ‼っぐ・・・」


 そう言って再びアイテムボックスからイリアで手に入れたシレネの首を取り出す。

 その首を見て男はエリスを憎らし気に睨みながら叫ぼうとするがエリスに蹴られて黙らされる。


「あは♪お前等の事なんてどうでも良いんだよ♪とりあえずお前はそこで見てなよ♪」


 シレネの首を地面に置き、エリスは先程見つけたと言った方向に目を向けて男に背を向けて立つ。

 その手にはいつの間にか《エリーニュス》が握られており、エリスは徐に剣を何もない空間へと向けて突き立てる。


「あは♪逃げたのなら追えばいいよね♪《スノードロップ》♪あなたの死を望みます♪」


 エリスが剣の持つスキルを使うと何もない空間にバキリと音を響かせて何も無かった空間に亀裂が入る。


「あは♪やっぱり別の世界に逃げ込んでるか♪」


 目的の鍵を持つ少女が逃げ込んだであろう勇者が居たであろう世界の事を思いながらエリスは再び拘束しているハナズオウの方を見る。


「さて、ハナズオウ君。僕のお願いを聞く気は無いかな?」

「糞くらえだ‼」


 エリスの言葉に間髪入れずにハナズオウが答えるとエリスは顔に笑みを浮かべたままハナズオウの顔面を蹴り上げる。


「あは♪君に拒否権なんてないんだよ♪まぁ、良いさ♪君の意志なんて関係無いからね♪」


 そう言うとエリスは過去に白夜の国から奪い取った『狂化薬』を取り出し、口を開く。


「我が名において何時に新たな名と力を与える。我が名に従い新たな力を得よ。《タイラント》」


 手元の薬に向けてエリス個人の保有するスキルを使用し、『狂化薬』に新たな力を与え、それをそのまま縛られたハナズオウへと向ける。


「まて・・・やめろ‼」


 何をされるのかを悟ったハナズオウがエリスに向かって静止の声を掛けるがエリスは笑みを浮かべたまま注射器を振り上げ、ハナズオウの右目に向けて思いっきり振り下ろす。


「ぎゃあああああああああああ」


 まるで獣の上げるような悲鳴を上げるのと同時にハナズオウの体からグチャグチャとグロテスクな音がして人の形から崩れて変異していく。


「あは♪忘れ物だよ♪」


 変異していくハナズオウの体に向けてシレネの首を投げるとグチャっと音を響かせてシレネの首を吸収する。

 暫くハナズオウの体が変異するのが終わるのを待っていると音が止み、目を向けるとそこには二つの頭を持った巨体の異形が立っている。


「あは♪うまく纏まったみたいだね♪君の仕事は一つだけだよ♪この鍵と同じ物を向こうの世界から持って来てよ♪」


 二頭の異形に向けてそう言うと異形はエリスの言葉に従いエリスの開いた穴へと向けて歩き、穴に入って行く。

 異形が穴へと入り、開いた穴が閉じるとエリスは背を向けて歩き出す。


「あは♪面倒くさいけど現皇帝の馬鹿の所に行くか♪あれが僕の目的を果たしてくれることを期待しているよ♪」


 その一言を残し、エリスはポケットから小さな結晶を取り出すと砕き、帝国の首都の名を口にする。

 エリスの去った戦闘の跡地にはスノードロップ白い花弁が数枚宙に向かって飛んで行った。


此処までの読了ありがとうございました。次回はコハク達の方に戻ります。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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