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暁の国と海王国メルルク

おはようございます。

第281話投稿させて頂きます。

ブックマーク・いいね、ありがとうございました。とても励みになります。

今回も第三者視点になります。

楽しんで頂けたら幸いです。

「やぁ、フェル。久しぶりじゃないか。息災かい?」


 コハクの作った通信機から投影されている柔和笑みを浮かべているテルミアと似ている男に向けてこれから報告しなければならない事を思い溜息を一つ吐き、フェルは口を開く。


「あぁ。久しぶりだな。ラルフ。そっちも現状を考えると息災と言って良いのか分からないが息災そうで何よりだ」


 左手で湯呑を手に取り、緊張からくる喉の渇きを潤す。


「まぁ、帝国の連中から開戦状が来ているから国的には最悪な状態だな。俺は健康そのものだが・・・フェルは腕を失ったんだな・・・で?お前はこんな時にどうしたんだ?顔色が悪いぞ?まぁ、魔族の方でも色々と有った事は報告を受けているが・・・」


 フェルの顔色が悪いのを心配しながら友人であり、海王国メルルクの王であり、テルミアの腹違いの兄であるラルフリード・ハインリッヒ・メルルクはフェルの突然の通信に首を傾げる。


(色々有ってここまで話をしなかったツケか・・・)


 フェルはバツが悪そうにしながら意を決して口を開く。


「あー、その、こんな時になんなんだがラルフに報告しなくちゃなんねぇ事が有ってな・・・」

「報告?まさか、食糧や他の輸入品に規制が掛かるのか?」


 フェルの言い辛そうな様子にラルフ先んじて最悪の案件を予想して口にする。

 メルルクは決して食料に困窮している訳ではないが戦争が起こるかもしれない状況で安定し供給出来、安全性が確保されている食物が断たれるのは手痛い。

 そんな事を考えながらした質問にフェルが苦虫を嚙み潰したような顔をしたのでやっぱりかと思いラルフも意を決する。

 そんなラルフの顔を見てフェルは何とも言えない顔で口を開く。


「あ~、いや、食料の件は何にも問題ない。今まで通りだ・・・」

「?じゃあ、何でそんなに言い難そうにしているんだ?」


 フェルの様子がおかしいのが食料の所為ではないと分かり一先ず安心したラルフが疑問符を浮かべているとフェルがゆっくりと口を開く。


「・・・アと付き合っている」

「は?何だって?」


 フェルの言ったことが聞き取れず顔を顰めて訊き返すとフェルは大きく吸うと再び口を開く。


「テルミアと結婚を前提に付き合っている」

「あ゛あ゛ん?」


 フェルがテルミアと付き合ったという言葉を聞いてラルフの口から低い声が出る。

 実はこの男、テルミアの幸せを願ってはいるがシスコンである。

 腹違いとは言え可愛い妹が良く知っている馬の骨と付き合ったと聞き、思わず低い声が漏れた。


「何時から?」


 一瞬、柄悪く歪んだ顔を直ぐに何時もの柔和な笑みに変え問い掛けるラルフにフェルは思わず耳を倒しながら答える。


「数か月ぐらい前、皆で嫉妬の国に旅行に行った時に・・・」

「へぇ・・・そんなに前からなのに今更報告して来るんだぁ・・・親友だと思っていたのに寂しいなぁ・・・」


 柔和な笑みの下に何とも言えない殺気を隠しながらラルフは言葉を続ける。


「それで?何でその報告が遅れたのか訊いてもいいかな?」


 通信機から投影されているはずのラルフから殺気を感じながらフェルは報告が遅れた事を心底後悔しながらラルフの問いに答える


「あー、テルミアと付き合って直ぐに色々有って連絡が出来なかった・・・申し訳ない・・・」


 心底申し訳ないと言った様子のフェルにラルフは溜息を一つ吐き、口を開く。


「いや、まぁ、そっちが大変だった事は理解している。しているんだが、納得が出来なかっただけだ・・・すまない。だが、テルミアはなんで私にお前とのお付き合いの報告をしてくれ無かったのか・・・」

「あ、それはミアが自分で言ったらお前がうるさいから嫌だって言ってた」


 最後に零した言葉をフェルがしっかり聞き取っており妹の容赦のない言葉を聞かされてラルフはズーンと擬音がしそうな程に落ち込む。

 暫く互いに微妙な空気を漂わせていたが少しして立ち直ったラルフが口を開く。


「で?お前はその報告だけをしに来たのか?」


 フェルが連絡をして来た理由をラルフが訊ねるとフェルはゆっくりと口を開く。


「あぁ、主な理由はそうだな・・・あともう一つ。今度の帝国との戦争で勇者の参戦を許可するつもりは有るか?」


 フェルの意外な言葉にラルフは驚いた顔になり、口を開く。


「こちらとしては大変心強いがコハク様がそれを許さないだろ?」


 ラルフの言葉にフェルも少しだけ顔を顰めて答える。


「ああ、十中八九コハクの奴から抗議が飛んでくるだろうな・・・だが、勇者達(本人達)の希望なんだ。コハクが戻って来たらそう言えば何も言えない」

「・・・だが、恨まれるのだろ?」

「確実に」

「それならば嫌だ。彼女から恨まれるのは嫌だ」

「・・・そっか。まぁ、俺からの報告はこんな所だ。連絡が遅くなって本当にわるかったな・・・」


 心底嫌だと訴えかけるラルフに何とも言えない視線を向けながら通信を終え様とするとラルフが不意に真面目な口調で語り掛けて来る。


「何で勇者殿方は態々戦争なんて物に参加を希望しているんだ?」


 唐突なその質問にフェルは先程とは違った様子で溜息を一つ吐き、答える。


「強くなりたいらしい」

「強く?」


 フェルの答えにラルフの顔に疑問が浮かぶがフェルは悔しそうな表情を浮かべて答える。


「恐らく、これまでの事であいつ等に自分達がもっと動けていたらという考えが生まれてしまったみたいなんだ・・・それで、戦闘経験を積みたいらしい」

「あぁ、君達は皆、過保護だからな・・・」


 フェルの回答にラルフは少し呆れながら答える。

 異世界の事を知らない彼からしたら殺す殺されるのは当たり前の世界なのでフェル達が物凄く過保護に見えていた。

 もっとも彼も妹であるテルミアにはその様な世界には触れさせない様に細心の注意を払っているのだが・・・

 そんな事は棚に上げ少し考えた後、ラルフはフェルに対して口を開く。


「わかった。勇者殿方の参戦に心から感謝する。先方にもその様に伝えてくれ」

「良いのか?」


 ラルフの言葉に言外にコハクに恨まれるぞ?というニュアンスを含めて問い掛けるとラルフは溜息と共に答える。


「御本人達の要望じゃ拒否できないだろ?それにさっきも言った様に俺達も助かる」

「ありがとな」


 渋々と言った様子で答えるラルフにフェルが礼を言うとラルフは少しムスッとした顔で口を開く。


「ただし、一つ条件が有る」

「条件?なんだ?」


 ラルフの言う条件を聞く為に促すとラルフはポツリとしっかり聞こえる声音で答える


「コハク様への言い訳をフェルも全力で一緒にしてくれ」



 ポツリと言ったその言葉にフェルは一瞬、ポカンと親友の顔を見てから笑い出し、了解の意を口にする。

 その後も二人の男は他愛もない話を続け、そろそろ話を終えようとした所でラルフは仏頂面で口を開く。


「最後になるがテルミアを幸せにしなければぶっ殺す」

「あぁ、絶対に一緒に幸せになってやるよ」

「なら良い」


 最後にそんな話をして二ヶ国の王は秘密御会談を終えた。


此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。


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