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先代魔王の忠告

こんばんは、第28話投稿させていただきます。

楽しんでいただけたら幸いです。



 誰……?そんな所に居ると危ないよ?早く逃げて…

 男が半透明な事もさっきまでそこに居なかった事も気にせずにそんな間の抜けた事を思っていると男は嬉しそうな顔をして喜んでいる。なんというか結構なおじさんなのに人懐っこそうな笑顔だ


『おいおい、自分が死にそうなときにこんな怪しい奴の心配何て嬢ちゃんどんだけお人好しなんだよ。まぁ、そんなお人好しでもなければ後継者に認めてなかったんだけどなぁ~。あいつがどう判断するか見物だな』


 カラカラと笑っていた男は急に真面目な顔になると最初に出て来た時と同じ質問を繰り返してきた。


『それで嬢ちゃん、アレは嬢ちゃんならあともう少しで殺せるのに諦めるのか?言っとくが嬢ちゃんの師匠とやらが来てもアレは容易に殺せるものじゃないぞ。下手すると目を潰されていても死者が出る。まぁ、嬢ちゃんが殺しても対価は必要になるけどな』

「な…んで…そんな…事…分…る?」


 男の言葉に息も絶え絶えに質問する。くそ…上手くしゃべれない


『無理に喋らなくて良いぞ~、頭の中で考えてれば今の俺にはわかるからなぁ、ちなみにその質問の答えは俺があの竜の正気の部分だからだ。伊達に何百年も竜なんてやってないからなタダでは死なん。ちなみになんで嬢ちゃんの前に居るのかはまた今度説明してやる』


 相変わらずカラカラと笑い男は聞いてくる。


『それで?嬢ちゃんはどっちを選ぶ?死者が出る方か?それとも自分が何等かの対価を払ってでもあれを殺すのか?』


 その対価が何かは分からない。でも、死にかけの私が対価を払うことで誰かが死なないならそれが一番良い気がする。


「どう…すれば…良いの?」


 目の前でニコニコしている男に再び問いかける。


『そうかそうか嬢ちゃんが殺してくれるんだな‼なら話は簡単だ。実は嬢ちゃんはもうその力を持っている。あとは意識を集中してその力に形を与えてやるだけだ。そのための呪文は今ならわかるはずだ』


 男に言われた通りに意識を集中すると次第に頭の中に言葉が浮かんでくる。それを今はもう動かなくなってきている口で懸命に唱える。


「我が…名に…おいて…命じる…世界の…理を…正し…彼の者に…最後の…審判を…与えよ」


 呪文の詠唱が終わり左手を無理矢理持ち上げその魔法を唱える


「ラスト…ジャッチ…メント…」


 息も絶え絶えながらも唱えた魔法が発動し、赤、青、黄、緑、橙、黒、白の七本の実体のない剣が私の上に現れる。

 剣はそのままドラゴンに向かって飛びドラゴンを切り付け傷を負わせていく。ドラゴンも目が見えないながらに剣を攻撃し抵抗する。

 そしてとうとう決着が着く。七本の剣はドラゴンの首に刺さり、剣が共振を始めた。一本一本のエネルギーを増大させ、そのエネルギーの爆発でドラゴンの頭を吹き飛ばし絶命させる。


『エクセレントォ、嬢ちゃんよくやった‼』


 朦朧とした意識の中、半透明の男がそんな言葉を言うのが聞こえる。

 これは死んだなぁ…でも、他の子が死ななかったなら良いか…私は結局純粋にこの世界の人間じゃないしね…

 最後にそんな事を考えながら私はゆっくりと目を閉じた。





「ここは・・・?」


 目を閉じて暫らくして意識が鮮明になってくると私は真っ暗な空間に居た。

 あぁ、レスナと会ったあの空間みたいな物か…ということは、私は死んだんだろうなぁ、享年8歳か…前世よりも早かったなぁ、レスナに死んだらそこが寿命だと言ったけど正直笑えない。


「よぉ~、嬢ちゃん元気かぁ~?」


 一人で落ち込んでいるとさっきの半透明な男が呑気に話しかけてきた。

 いやいや、死んだかもしれないのに元気か?はないでしょ?


「うん?嬢ちゃんは別に死んでないぞぉ~、まぁ、手当てがあと一歩遅かったらそのままお陀仏だっただろうけどな。それじゃあ、俺が困る」


 カッカッカと笑いながら私の顔から考えていることを察し私がまだ生きている事を教えてくれた。


「さ~て、じゃあ、嬢ちゃんに何が起こったのかを説明して行くとするか。何から聞きたい?」


 まだまだ混乱の中にいる私に男は軽く聞いてくる。

 混乱する頭でとりあえず最初の疑問を口にする。


「じゃあ、貴方は誰で何者ですか?」


 この人が私の殺したドラゴンだというのは本人?が言っていたので間違いないだろう。問題は私にどう関わってくるのかだ。


「あ~、そういえば自己紹介がまだだったなぁ、わりぃわりぃ、うっかりしてたわ」


 頭を掻きながら軽い謝罪をして、男はとんでもない自己紹介を始めた。


「俺の名前はストリア・グランデ・トワイライト、かれこれ600年は生きた竜で、最近まで黄昏の魔王をやっていた者だ。この姿は人に擬態した姿だな」


 男の言葉に思わず頭を抱えてしまう。

 なんてこった…絶対に魔王や勇者なんて物には関わらないで生きて行こうと思っていたのに…やっぱり、学校に何て来るんじゃなかった…

 先生にしても魔王にしても何で厄介ごとの方が向こうからやって来るんだ⁉

 とりあえず落ちつけ私、相手が名乗ったのだから私も名乗らないといけないだろう。


「えっと…私の名前はコハクです。それで、次の質問なんですけど私の頭痛と殺戮衝動なんかは貴方が原因ですか?」


 とりあえず、来てしまった物は考えても仕方がない。今は、私の体調が悪くなった原因の究明が先だ。まだ生きているみたいだし、この先も頭痛と殺戮衝動に悩まされるのは勘弁して貰いたい。


「あ~、うん、それに関しては本当にすまねぇと思っている。嬢ちゃんの推測通りあの症状は狂化した俺の所為だ」


 男改めストリアさんは、頭を掻く姿勢はそのままに罰が悪そうな顔で説明をしてくれる。


「嬢ちゃんの体調不良は俺のスキル《インサニア》の所為だ。嬢ちゃんの称号の中に魔王候補者ってのが有るだろ?あれは、魔王になれる奴を《インサニア》が発動した原初の魔王に教える効果もある。まぁ、あの称号が《インサニア》の影響を受けるとは流石に俺も予想外だったけどなぁ、全くあの女神本当に適当な仕事しやがる…」


 はぁ~っと溜息をつきながら私の症状について説明をしてくれる。なるほど、要するに全部レスナが悪い‼


「なるほど色々突っ込みたい所も有りますけど、要するに女神であるレスナが全部悪いってことですね」

「そういうことだな」


 レスナ、殴る拳は一発ではなくなってしまったよ…


「じゃあ、次の質問です三つほど一辺に質問するんで簡単に答えてください」

「了解だ」

「まず、先程から言っている《インサニア》って何ですか?《インサニア》は私にも発動する危険性はありますか?また、何で急に貴方の姿が私に見えるようになったんですか?」


 それら三つの質問にストリアさんは順番に答えてくれる。


「スキル《インサニア》は要するに原初の魔王って呼ばれている奴らにとって呪いみたいなものだな。こいつが発動するとその魔王はどんどん自分が自分じゃ無くなって行く。終いにはさっきの俺の体みたいに殺戮と破壊の根源みたいになっちまう。ちなみに二個目の質問に関係するんだが、嬢ちゃんもステータスの中にSPって奴が有っただろう?そいつがゼロになると発動する。要するに嬢ちゃんにも発動する可能性は十分に有る。ちなみに対処法はSPを使い切る前に次の奴にバトンタッチすることだな。最後の質問だが嬢ちゃん最後に《フィジカルフルブースト》って魔法使って俺の目を潰した際に大量の血を被ったり飲んだりしただろ?魔王の継承には先代の血を飲むっていう儀式が有ってな、嬢ちゃんが俺の血を飲んだことによって魔王の継承が済まされて俺と嬢ちゃんの間に繋がりが出来て俺の姿が嬢ちゃんに見えたって事だろうな。要するに嬢ちゃんは新しい黄昏の魔王になったって事だ」


 私のした質問に一気に答えてストリアさんは伸びをしだす。

 ちょっと待って⁉私知らないうちに魔王を継承しちゃったって事!?


「あの…今からその魔王を辞退する事って出来ますか?」

「んなもん出来るわけねぇだろ…」


 私の言葉に呆れたように答える。

 くそ…私の夢は今、完全に潰えた…


「あ、あとな、嬢ちゃん。あのフィジカルフルブーストって魔法。今後は、使わない方が良い。七属性の相互作用やら反発作用で通常の魔法より遥かに強い魔法になっているが、その所為で体が耐えられなくて自壊して行く。使う度に死にかけるなんて嫌だろ?つか、あんな戦い方してたら命がいくつ有ってもたりねぇぞ?」


 ガックリと項垂れている私にストリアさんは注意をしてくれる。


「使いませんよ。元々師匠に対抗するために考えた魔法でしたけど一歩踏み出した途端に保健室にお世話になったから今まで封印していた品物ですよ?」

「嬢ちゃん。あの威力を一教師にぶつけようと思ってたのか…」


 え?なんか引いてる?別に使う気はありませんでしたよ?


「さて、結構時間も経ったし、そろそろ質問タイムは終わりだな」


 穏やかな笑みを浮かべてストリアさんは、質問終了を告げてくる。私的にはまだまだ質問したいことが有るんだけど恐らくもう限界なのだろう。ストリアさんの体は最初見た時よりも遥かに薄く透明になっている。


「今後の事だが、多分嬢ちゃんが目を覚ましてそう遠くない内に俺の部下が迎えに来るはずだ。後の事はそいつに聞いてくれ。それとな、魔王として動く決心が付いたならまず暁の魔王か白夜の魔王を頼れ、話は通してある。あと運が良ければ憤怒の魔王を頼っても良いかもしれねぇ」


 今後の事を話してくれる間にも彼の姿はどんどん希薄になっている。

 その彼は静かに笑顔を浮かべて私の頭を撫でる。


「本当は嬢ちゃんが魔王になるまでに厄介ごとを全部片付けておいてやりたかったんだがごめんな全部押し付ける形になっちまった」


 頭を撫でながら謝罪してくる彼は私に最後の言葉を残す。


「嬢ちゃん。金髪金目の女に気を着けろ」


 その言葉を最後に黄昏の魔王ストリア・グランデ・トワイライトは次の人生に旅立って行った。


あともう少しで学園編が終わりになる予定です。

まだ魔王領に行くまでの話も書く予定なのでもうしばらく過去のお話にお付き合いください。

女神殴りカウンター:2

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