見つけた‼・2
おはようございます。
第274話投稿させて頂きます。
今回はコハク(シロ)視点になります。
楽しんで頂ければ幸いです。
パシャパシャと言う音と共にストロボが炊かれ、恐らくわたしは死んだ魚の様な目というのをしてカメラという機械の前で立っている。
———おかしいです・・・どうしてわたしは着替えさせられて写真を取られているんでしょう・・・?
そんな事を考えながらパシャパシャとシャッターを切る音と共に時々、「少しだけ顎を引いてちょうだい」とか「右手でスカートのレースを摘まんでちょうだい」などポーズの指定が入る。
声の主である源一郎さんの指示に従いながらわたしは源一郎さんと一緒になって笑顔を浮かべながら何故か一緒に写真を撮っている同じく着替えた確信犯を少しだけ恨めし気な目で見ながら少し前の事を思い出す。
数十分前にわたしは黒羽さんにケーキを食べさせて貰っていたら後ろから源一郎さんと原二郎さんが大荷物を持って現れてわたし達の隣へ座って声を掛けてくれる。
『ハァイ♡黒羽、シロ。奇遇ねぇ。貴女達も休憩かしら?』
『はい』
『ふぁい』
バチンと音のしそうなウインクと共に話を振られたので黒羽さんははっきりとわたしは慌ててケーキを飲み込みながら喋ってしまった為に何だか間の抜けた返事になってしまった。
そんなわたしに苦笑いを浮かべながら源一郎さん達も注文をしている。
お互いにお話をしながら過ごし、一息を着いた所で黒羽さんに手を繋がれ、源一郎さん達が立ち上がり口を開く。
『さて、じゃあ、撮影を始めるわよ。紗良、三階のスタジオを借りるわよ』
『兄さんが建ててくれた建物なんだから私に許可なんていらないわよ』
『今のオーナーはアンタよ。行くわよ。原二郎。黒羽』
そんな衝撃的な会話の後、わたしは黒羽さんに引き摺られながらお店の奥の関係者以外立ち入り禁止の向こうに有ったエレベーターに乗せられて三階へと上がり、あれよあれよと言う間に黒羽さんに着替えさせられて今に至る。
髪型を原二郎さんに後ろで三つ編みにされて着替えている時に黒羽さんから聞いた話では原二郎のお店で取り扱う新作の洋服のポスターを撮影する予定だったのがモデルさんの個人的な都合で出来なくなったらしい。
そして何故かわたし達にその撮影のお話が来て黒羽さんはそれを快諾した。
今日のお出掛けを楽しむことは嘘ではなかったみたいだけど最初からこの撮影が最終目的だったようだ。
そして今、黙っていた事を謝られてからわたしは源一郎さんの指示に従いながらポーズを取り、写真を撮られている。
「よし、次は黒羽の写真を撮って、最後に二人で終わりにするわよ」
一通り私の撮影を終えた後、次は黒羽さんの写真を撮り、それも撮り終わると似た服を着たわたし達にそれぞれポーズを取らせてそれを撮った後で撮影を終える。
「シロちゃん。黙っててごめんね?」
お店を出て、お礼にと今日着た洋服を源一郎さん達から頂き、お礼を言ってから別れて少し歩いた所で黒羽さんが申し訳なさそうに恐々と口を開き、謝ってくる。
「シロちゃん。源一郎さん達の事苦手そうだったから行ったら来てくれないと思って・・・それに源一郎さん達にも口止めされてたの・・・」
「・・・」
少しだけ意地悪で黙って歩いていると黒羽さんは少し焦った様子で言葉を続ける。
「でも、一緒に楽しみたかったって言うのは本当だよ‼そこだけは疑わないで‼」
「ぷっ・・・」
余りにも必死になって黒羽さんが弁明してくるので思わず笑ってしまうと黒羽さんはじっとわたしの顔を見る。
「怒っては無いですから許す許さないは無いですよ。でも、次はちゃんと教えてください。わたし別に源一郎さん達の事嫌いではないですから」
「うん‼ありがとう。約束するね‼」
わたしがそう言うと黒羽さんはホッとした様に次は隠し事をしないと約束してくれる。
その後は再び街の中を散策し、ゲームセンターや小物屋さんを見て回った所で黒羽さんが「えっ・・・」と驚いた様子で足を止める。
「黒羽さん?」
立ち止まった黒羽さんに声を掛けると黒羽さんはわたしの声が聞こえていないのか動揺した様子で「どうして?帰ってきているならなんで連絡してくれなかったの?」と小さく呟いた後で走り出す。
「黒羽さん⁉」
「ごめん‼シロちゃん。後で説明するからちょっとここで待ってて‼」
走って行く黒羽さんはわたしの呼びかけにそれだけ言うと人混みの中へと姿を消してしまう。
仕方がなく人の邪魔にならない場所に移動して黒羽さんが戻って来るのを待つ。
お店の近くで道の端に避けて黒羽さんを待っていると何故か先ほどからチラチラとすれ違う男の人の視線を感じるので先程貰った服の中に帽子も入っていた事を思い出し、紙袋から取り出し、幅広の帽子を被っておく。
暫く待ってみるが黒羽さんはまだ戻ってくる気配がなく連絡手段が無い事に少しだけ焦りを感じ始め、溜息を一つ吐く。
そのまままたボーっとして待っているとタッタッタと小さな子供が走る様な音が聞こえて来たかと思うと「あるじ‼」という女の子の声と共にトンっと腰の辺りに衝撃を感じ驚きながら視線を下に向けると白いワンピースを着て青み掛かった銀色の髪に青い瞳に涙を溜めた小さな女の子が抱き着いている。
今にも泣きそうな女の子をこのままにしてはいけないと思い、女の子に声を掛ける。
「大丈夫?迷子?」
腰に抱き着いたまま首を横に振る女の子に少しだけ困惑していると女の子の走ってきた方向から声が聞こえて来る。
「ネージュ‼」
人込みから男の人が走ってくる。
男の人はわたしに抱き着いている女の子を見つけるとわたしの方に近づいてきて女の子に声を掛ける。
「ネージュ。いきなり走り出して逸れたらどうするんだ?驚かせてしまってすみま・・・」
怒って居るというよりは心配しているといった様子の少し疲れた感じの男の人は女の子に注意をした後でわたしに向けて謝罪しようとして謝りながら顔を上げてわたしの顔を見た瞬間に言葉を切る。
「コハク?」
驚いた様にポツリと零れ落ちたその名前に聞き覚えが無くてわたしはゆっくりと首を傾げて黒髪の男の人の顔を見た。
此処までの読了ありがとうございました。
次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




