禍時の竜
戦闘シーンって難しいですね…
こんばんは、第27話投稿させていただきます。
楽しんでいただけたら幸いです。
皆様、評価ポイントやブックマーク登録ありがとうございます。
面白いお話に出来るように頑張っていくのでこれからもよろしくお願いします。
不意に、本当に不意にそのドラゴンと目が合う。私を見た?
「うぐぅ‼」
ドラゴンと目が合った途端に今までとは比べ物にならないレベルの頭痛が襲って来て思わず頭を押さえてうずくまる。
マズイ、真面目に痛みで動けない…。それにさっきから殺戮衝動とも破壊衝動とも分からない感覚まで襲って来ている。ひょっとしてこのドラゴンが原因?
「コハクちゃん‼」
ドラゴンの登場にその場にいる全員が固まってしまっている中、リルが悲鳴にも似た声を上げ私に近寄ってくる。
「全員、退避‼テト!肉体強化を使ってコハクを抱えて走れ‼」
リルの悲鳴で我に返ったアラン君の指示が各人に指示を出す。けど、少し遅かった。
ドラゴンの翼が起こした強風に私を含めえた全員が吹き飛ばされる。
「アラン、テト、コハク、リル無事な人はいるか⁉」
リスト君が無事を確認する声が聞こえる。
「リスト君、あまり大きな声を出さないほうが良いよ。ドラゴンに気づかれる可能性が有る。それより吹き飛ばされた方に行って安否を確認しよう」
運よく彼の近くに飛ばされていた私は、頭痛と変な衝動に耐えながら返事を返し皆の安否を確認する案を持ちかける。
「コハク、無事で良かった。でも、まだ体調が悪いみたいだね。俺が確認に行ってくるから此処で待ってて」
「分かった。気を付けて…」
私の状態を見てリスト君が一人で確認に行き、少ししてリルと気を失っているテトとアラン君を連れて来た。デイルのパーティーはまだ見つけられなかったらしい。
「確かリスト君が緊急時の魔道具を持っていたよね?今から二人に強化魔法を掛けるから気絶している二人を連れて逃げて、安全そうなところでその魔道具を投げて助けを呼んで、状況の説明をお願い」
言うが早いかで二人に《ライトニング・オーラ》を掛ける。
「待て、コハク、何で君が数に入ってないんだ?」
リスト君の言葉にリルも驚いた顔になる。
「私はこんな状態で動けないし、此処に残るよ」
私の言葉に二人が反対の声を上げる前に言葉を続ける。
「それに、あのドラゴンなんかわからないけど私に用事が有るみたいなんだよね。私が一緒に逃げたら追って来ると思う。だから私が此処に残るのが最善ってこと。反論は聞かないよ。私が頑固なのは知っているでしょ?お願い、早く私を助けたいと思うならさっきの指示通りに動いて」
それにさっきから来ている殺戮衝動と破壊衝動で私が彼らを殺しかねない。今はまだ正気を保っているけど何時おかしくなるかも分からない。
「……分かった。なるべく急いで助けを呼ぶから何処かに隠れて生きることを絶対に諦めないでくれ。リル、行こう」
「了解。辛い決断をさせてごめんね。リルの事をお願い。」
まだ何かを言いたげなリルを促し、一人ずつ背中におぶって駆けて行くのを見送りながら私は二人とは逆の方向に向かって歩き出す。
「はぁ~、あんた空気が読めるのか物凄いストーカー気質なのか分からないけど此処まで先を読まれるとかなり腹が立つわね」
リル達が逃げた方とは逆の湖の方に向かうとさっきのドラゴンが待ち構えている。幸いだったのはリル達と話している時にこっちに来なかった事か…
「で?聞いても無駄だろうけど貴方は何?私になんの用なの?」
相変わらず続く頭痛を無視して帰ってくるはずもない問いを投げかけ、アイテムボックスから短剣と四本の長剣を取り出す。
「《ヘキサ・ブレードダンス》、《ヘキサ・ライトニング・オーラ》」
魔法を掛けた剣が私の周りに浮き待機するのと同時に目の前のドラゴンも戦闘態勢を取り空中に飛翔する。
湖畔を走りながら四本の剣をドラゴンの腹部に向けて飛ばす。
ギャインという金属音と共にドラゴンの鱗に四本とも弾かれ私の元に戻ってくる
「やっぱり剣は通らないか…」
本で読んだ通りの硬さに正直うんざりしながら走り続ける。
空中に居るドラゴンが大きく息を吸う。マズイ‼ブレスを使って来る時の予備動作だ‼
回避行動を取った私に向けて放たれたブレスが外套に当たり外套が燃え始める。慌てて脱ぎ去り身を低くして地面の段差に逃げ込みブレスを回避する。
悔しいけど師匠の本読んでドラゴン系の魔物に関する知識を持っていて良かった。
くそ…ライトニング・オーラを使っていても追いついてくるのか…結局の所、リスクを考えて戦っていたら今の私で勝てるわけないか…
相手に効くかどうか一か八かになるし、当たるか分からないけどこのまま死ぬよりは使える手は全部使う方が良いか…
まずはこいつを地べたに引きずり落とす!
「ヘキサ・エレトロマグネティックプロジェクション」
二本の剣をレールに見立て配置し、三本目の剣を弾体としてセットする。その三本に電流を流し磁場を起こし相互作用で加速させて打ち出す。
加速した弾体はもう一度ブレスを吐こうとしているドラゴンの翼の片方を千切り飛ばし地面に落下させる。
よし‼これで一方的に空から攻撃される事は無くなった‼
落下したドラゴンから距離を取るために立ち上がったとたん前方から風の塊が直撃し吹き飛ばされ木に体を打ち付ける。火の次は風のブレスを使ったの!?
「か゚は‼」
木に打ち付けられた衝撃で肺の中の空気が押し出される。
「ゲホゲホ」
咳き込みながら立ち上がり態勢を整えよう賭していると地響きと共にドラゴンが私の前に歩いてくる。
マズイ、早く態勢を立て直さないと…
『キタイハズレダジツニキタイハズレダ』
頭と体の痛みに耐えながら立ち上がると不意にそんな声が聞こえて来る。このドラゴンが喋ったの?
『イマノコウホシャドモガココマデキタイハズレダトハオモワナカッタ…ニゲタニンゲンスベテヲコロセバスコシハマシニナルカミテミルホウガオモシロソウダ』
そんな事を言って逃げたリスト君達の方にドラゴンが行こうとする。
ちょっと待て!私がどう出るか見る為に彼らを殺す?ふざけるな‼絶対に行かせない‼
「ヘキサ・フィジカルフルブースト‼」
コイツを皆の所に行かせないために私は封印していた七属性全てを束ねた肉体強化を使う。
体は鱗に阻まれて剣が通らない。左手は無いけども致命傷にならない。なら、このドラゴンの無事な左目を狙う‼
浮かせていた最後の剣を空いている右手で握りドラゴンの顔に向かって一気に地面を蹴る、鋭い痛みと共にボキッという鈍い音がして地を蹴った右足の骨が折れ、皮膚が裂けて血が噴き出す。
痛みを我慢し、跳んだ勢いそのままに両手に持っている二本の剣をドラゴンの目に突き刺す。
突き刺した途端今度は両手が折れて血が噴き出すが無視して無理やり剣を捻り動かすと大量の血が噴き出し自分とドラゴンの血で血塗れになる。
「Gyaaaaaaaaaaa」
さっきまで人の言葉を喋っていたドラゴンが痛みからか大きな咆哮を上げ暴れ回り、右腕で私を掴み木に向かって投げる。
「ガハ‼」
木に叩きつけられ、口から血を吐き出す。内臓が幾つか潰れたみたいだ。もはや麻痺して痛みすらない。
あぁ、これは確実に死ぬなぁ…
うつぶせに倒れこみ折れた足と両腕を投げ出し、ドラゴンの方を見ると視界を潰されて暴れまわっている。
良かった旨く視界を奪えたみたいだ。これで私が死んでも皆の所には行けないし、師匠が来てくれれば討伐も容易いだろう……
そんな事を考えながら目を瞑ると不意に声が聞こえて来た。
『よぉ~、嬢ちゃんあともう少しで殺せるのに諦めちまうのか?』
無理矢理に目を開けるとそこには半透明な見知らぬ男が立っていた。
次回でドラゴンとの戦闘が終わる予定です。
魔王になってしまった経緯などの説明もする予定なので楽しんでいただけたら幸いです。




