表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
265/332

水平線と黒髪の女の子

おはようございます。

第265話投稿させて頂きます。

本日、2話投稿です。このお話は2話目です。

楽しんで頂ければ幸いです。

 目を閉じているとザーザーと波の音が聞こえて来てわたしはゆっくりと目を開く。


「ここ、どこ?」


 見覚えの無い海と空が続く場所でわたしはキョロキョロと辺りを見回しながら小首を傾げる。

 何処に行けばいいのか何をすれば良いのかも分からずしばらく目が覚めた場所に座っていると不意に後ろから話しかけられる。


「やぁ、こんにちは」


 声のした方を振り向くとそこには見覚えの無い赤毛の男の人が優しい笑みを浮かべて立っている。


「あなたは、だぁれ?」


 後ろに立っている男の人に首を傾げて問い掛けると彼は顔に苦笑を浮かべて口を開く。


「知らない人間に遭遇したら警戒した方が良いよ。本来の君からしたら俺は敵だろうしね」


 そう言って笑いながら彼は何故か私の隣に腰掛ける。


「てき?」


 彼の言っていることが今一分からずわたしは彼を見ながら首を傾げる。


「そう。俺は本来の君に取って倒すべき敵だし、恨むべき相手の一人でもある。まぁ、今は分からなくても問題ないよ」


 彼はそう言って敵という言葉の意味を誤魔化して海と空の境目を見る。


「ここは、どこ?」


 敵という言葉についてこれ以上話す気のなさそうな彼にここは何処なのかと別の質問を投げかけてみると彼は少しだけ困ったような笑みを浮かべた後、しょうがないなぁと言った様子で口を開く。


「だから、もう少し警戒しなって。しょうがないなぁ・・・」


 ———訂正、様子じゃなくて普通に言われた・・・

 若干の不満を感じて彼を見ていると彼はゆっくりと言葉を続ける。


「ここは簡単に言ってしまえば現世と幽世との狭間の世界だね。ここは死にそうな奴や死んで次の人生に行く奴、はたまた何かしらの理由で縛り付けられている奴が来る場所だよ。因みに次の人生をご所望ならこの海を渡って行けばと来世へと行く事が出来る」


 海の方を指差しながら彼は少しだけ羨ましそうにわたしに向けてそう言う。


「わたしはしんだの?」

「今はまだ生きてるよ。でも、君が望むなら次に進む事も出来る。最もいくらそれが楽な道でも君はそれを選ばないのだろうけど・・・」


 そう言うと彼は座っていた砂浜に寝っ転がり言葉を続ける。


「まぁ、今の君は心身ともにボロボロだし、今はゆっくり休むと良いよ。これからまだやる事が沢山あるしね」

「なにをすればいいの?」


 寝っ転がりながらわたしの今後の話をする彼にわたしはこれから何をすればいいのかを訊くと彼は口元に笑みを浮かべながら答える。


「まずは目を覚ますことだね。その後は剣を探すんだ」

「けん?」


 彼の言葉をオウム返しで繰り返すと彼は何かを感じ取ったように上半身を起こして口を開く。


「そう、君が探すのは初代黄昏の魔王の・・・くそ‼もう来たか‼」


 話している途中で彼は少しだけ焦った様子で座っていた場所から飛び退き、わたしから距離を取る。

 彼が距離を取った所で先程彼のいた場所に誰かが降りて来る。


「やぁ、お早いお着きで。言っておくけど俺は彼女に危害を加える気は無いし、君とも敵対する気は無いんだけど・・・見逃してくれない?」


 彼は少しだけ焦った様子でわたしの隣に降りてきた誰かに向けて話す。


「ダマレ、アノオンナノカンケイシャノハナシナンテキクカチモナイ」


 右腕の無い赤黒い鎧を身に纏っている女性?は聞き取り難い言葉で左手の爪を彼に向けて振るう。

 それをギリギリで避け、彼はわたし達に背を向けて逃げ出す。


「俺がここで死ぬ事は無いけどまだ消えられないんでね‼君‼記憶や何かが戻ったら母さんの事を頼んだよ‼」


 意味の分からないことを言って彼はこちらを振り向かずに一目散に去って行く。

 当然、彼を追うと思われた鎧の女性は獣っぽい動作でわたしの方へと来ると私の首を掴み持ち上げる。


「サレ‼アノオトコノイッタコトハ、ワスレロ‼」


 どういう原理なのかいつの間にかわたしの後ろには扉が表れていてその扉が開く。

 首を掴まれたわたしはそのまま開いた扉の中へと突き放すように放り込まれる。

 最後に見た光景はわたしを放り込んだ彼女が彼を追った後に扉が閉じる瞬間だった。

 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・

 光が瞼を透過してわたしは顔を顰めながらゆっくりと瞼を開く。

 目を開けると焦点がゆっくりと会ってわたしの上に乗っていたらしいその子と目が合う。


「ねこ?」

「にゃ~」


 目が合って思わずそう呟くと目の前の彼女は違うあんみつと自分の名前を教えてくれる。

 ———・・・?

 彼女・・・あんみつさんの名前が分かった事に疑問を感じながらわたしはあんみつさんを両手で抱き上げ、ゆっくりと上体を起こす。

 掛けられていたタオルケットが上半身から落ち、自分が何も身に纏っていない事に気が付くが気にせずに抱き上げていたあんみつさんを膝に乗せて辺りを見回す。

 白を基準にした清潔そうな部屋に椅子や何に使う物なのかわからない箱や植物等が置かれた部屋はどう考えても先程までいた何処かとは違い。建物の中みたいだ。


「ここ、どこ?」


 先程と同じ事を口にしながらわたしは何故か両目が見える事と右手に感覚が有る事に違和感を覚える。


「てがある?」


 体に纏わりつく長い髪を押しのけながら自分の右手をマジマジと見て首を傾げていると膝の上のあんみつさんがまた「にゃ~」と鳴くので恐る恐る右手で彼女の頭を撫でてみる。

 しっかりと手入れがされているらしい彼女の毛はふかふかでその感触に思わず夢中になって触っていると自分がいる部屋の隣から何かが当たる音がしてゆっくりとそちらを向くと色白の肌に烏の濡れ羽色の髪と同色のオニキスの瞳を持つ女の子が木の棒を持って驚いた様にわたしの事を見ている。

 恐らくさっきの音は手に持っている木の棒が当たったのだろう。

 慌てている様子の彼女にわたしは首を傾げながらやはり先程と同じ様な疑問を口にする。


「あなたは、だぁれ?」


 若干、発音が怪しい気がするが彼女を見た時に思い浮かんだ言語で訊ねてみると正しく意味が伝わったのか彼女の目が驚いた様に更に見開かれた。

此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ