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目を覚ました女の子

おはようございます。

ブックマークありがとうございます。

第264話投稿させて頂きます。

本日、2話投稿です。このお話は1話目です。

楽しんで頂ければ幸いです。

 カチコチと言う時計の音でゆっくりと意識が覚醒し、ゆっくりと目を開ける。

 窓から入る朝の陽ざしに顔を顰めながらのそりとソファーに横たえていた体を起こす。

 バキバキと体を慣らしながら私は伸びをして私がリビング(ここ)で寝る羽目になった女の子へと目を向ける。

 昨晩、何者かによって家の敷地内に置いて行かれた少女は今も変わる事無く、タオルを引いたもう一つのソファーの上で静かに眠っている。

 ———全く、どこの誰だか知らないけど深夜に迷惑この上ない・・・置いていくなら運ぶのまで手伝って欲しかったよ‼

 昨晩、彼女をリビングまで運んだ苦労を思い出し、内心でやや的外れな文句を言いながら私は給湯器からお湯を汲み、タオルなどを用意しながらもう一度女の子の方へと目を向ける。

 ———それにしても、暗い中でも思ったけど本当に奇麗な子だなぁ・・・

 新雪の様に白く透き通った肌に黄金比に則って乗せられた様な顔のパーツ、伸び放題だが艶の有る美しい茶色の髪。血塗れでも霞む事無く美人だと分かる。

 ———いや、さすがに血塗れはまずいよ・・・事件だよ・・・警察沙汰だよ‼

 内心でそんな突っ込みをしつつも彼女が友人であるゆーちゃんとひーちゃんに繋がるなら警察に引き渡すわけにはいかない。

 そんな事を考えながら用を終えた私はタオルと洗面器を持って再びリビングの方へと行き、少女の前へと立ち、眠っている彼女の服へと手を伸ばす。

 昨日は流石に運び込むだけで力尽きてしまいそのままで寝かしてしまったが衛生的にも家の中の惨状的にも彼女の体を奇麗にする事が最優先と考えて服を脱がしていく。

 ———とりあえず体を拭いておいてお風呂は目が覚めてから入ってもらおう。問題は言葉が通じるかとこの子が犯罪者じゃないかだけど・・・

 そんな事を考えながら彼女の服を脱がしていると私は唐突に顔を引きつらせる。

 ———この子、着痩せしてたのか・・・

 軍服風の服のブレザーを脱がせ終えて中のワイシャツのボタンを外した途端に彼女の胸部装甲が姿を現し、私はその大きさに戦慄する。

 自分には無い彼女の胸部装甲に戦慄しながらお湯にタオルを漬け、しっかり絞ってから彼女の顔や手足、服に覆われていた部分を拭いていく。

 一通り彼女の体を拭き終えてから裸のままの彼女にタオルケットを掛け、真っ赤に染まった洗面器のお湯を捨て、同じく真っ赤になったタオルと血が固まりバリバリになっている彼女の服一式を持ち、洗濯機に放り込み漬け洗い後に通常洗いを選択し、洗濯を開始する。

 彼女の服は所々に刃物で切られたような穴が開いているが無いよりはマシだと考えてとりあえず洗っておく事にする。

 そのまま自分はお風呂場へと入り、汗と彼女から自分に付いた血を洗い流す。因みに私の服は後で別に洗濯をする。

 汗と血を洗い流した後で新しく用意しておいた服を着てキッチンへと移動し、パンをトースターへと入れ、冷蔵庫の中を見て冷凍食品も切れているのを確認してバターを出して置く。

 死んだ姉と父から料理をする事をきつく止められているので今日は買い出しに行かないといけないと溜息を吐いてからトーストにバターを塗り、噛り付く。

 簡単な朝食を終えてから今現在、この家にいる唯一の家族である猫のご飯を用意する。


「あんみつ~、ご飯だよ~」


 眠っている彼女を起こさないよう小声で飼い猫を呼ぶと二階から「にゃー」と声が聞こえて来てチリンチリンと鈴の音を鳴らして真っ白な毛並みの猫が下りて来る。

 愛猫を一撫でしてからご飯をあげて私は使った食器を洗浄する。

 一通りの片づけを終え、寝ている彼女をあんみつを撫でながら観察する。

 ———結構、音を出してたけど起きる気配がないなぁ・・・体を拭いてる時も起きなかったし・・・

 何時頃から眠っているのかは解らないが彼女が異常な程に眠っている事に少し・・・かなり不安を覚えながら膝の上のあんみつを撫で続ける。

 彼女が目覚めなければ彼女の持つ情報は当然の事ながら私の元には入ってこない。その事に多少の焦りを感じながらあんみつを撫でているとあんみつは不満そうに「にゃー」と鳴く。

 そんな事をしている内に一時間程の時間が経ち、洗濯を終えた事を告げるアラームが聞こえたのであんみつを降ろして洗濯機の方へと行き、彼女の服と下着を取り出す。


「あれ?服に開いてる穴が広がってない・・・?」


 取り出した服の破れが酷くなっていない事に首を傾げる。

 疑問に思い、他人の服なので悪いと思いながらも穴に指を入れて破ろうとするように力を入れてみる。

 結果として破れている穴に指を入れて引っ張っているにもかかわらず穴は広がる所かビクともしない。挙句の果てに幾ら漬け置き洗いをした所で残ると思っていた血の汚れはどういう訳か奇麗さっぱり無くなっている。

 不思議な出来事と不思議な素材で作られた服に昨夜話していた不思議な出来事の話を思い出しながらベランダの物干し竿へと干して置く。

 自分の分の洗濯を終えた所で時間的にも丁度良い事を確認して荷物を纏めて足元にいるあんみつに声を掛ける。


「あんみつ、私は少し買い物に行ってくるからリビングで寝ているあの子の事を見ていてくれる?ご褒美にチュ〇ルを買ってきてあげるから」

 あんみつそう言うと彼女(あんみつ)は機嫌が良さそうに「にゃ~」と一声鳴いて彼女のいるリビングへと歩いていく。

 ———昔から思っていたことだけどあの子、人の言葉を完全に理解してるよね?

 あんみつに対するそんな感想を胸に抱き、私は食料と眠っている彼女用の簡単な衣服を購入する為に家から三駅離れた街へと出かける。

 馴染みの服屋さんで彼女に着せる為の仮の服を一先ず購入する。

 ある程度のサイズは先程、体を拭く時に慄きながら測ったが彼女の好みも有るだろうし、何より正確ではないだろうから本命の物は後日、彼女を連れて購入する。

 そんな事を考えながら白と黒のワンピースを一着ずつ購入する。

 ———スパチャをくれた皆、ありがとう。皆とお父さんの仕送りのお陰で彼女の服が買えるよ。

 心の中でスパチャをくれた人達にお礼を言いながら帰りのスーパーで買う物を考えながら服屋さんを出る。

 駅に向かって少しだけ急いで歩を進めているとここ数日で見慣れてしまった顔を見つけて思わず顔を顰める。

 私がそいつを見つけたのと同時に相手も私を見つけたのか顔にニヤリと笑みを浮かべて近寄ってくる。


「やぁ、秀麗高等学校、一年A組の宮城 黒羽さん。例の神隠し事件についてお話し聞かせて貰えませんかね?」


 ニヤニヤとそう言いながら近づいてきた男は何処かの新聞社の記者らしく何処から聞きつけたのか私が行方不明になった二人と一緒にいた事を調べ、尚且つ件の行方不明を神隠しだと囃し立てている男だ。

 前を塞ぐ様に立つニヤついている男の顔を睨みながら足を止め、内心で舌打ちをしながら口を開く。


「何度も言っていますが私から貴方に話せる事なんて何もありません。邪魔だから早くそこどいて貰えます?」


 睨みながらそう言い、横を抜けようと体を動かすと男は更に前を塞ぐ様に移動してニヤニヤしながら口を開く。


「連れないなぁ~。お宅に干されてた服の事も聞きたいしちょっとそこのファミレスに入ろうよ~。おじさん奢ってあげるからさぁ~」



 ———この男、家まで来たのか・・・本当に悪質‼

 家にまで来て挙句の果てにしつこく進行方向を塞ぎ続ける男にいい加減頭に来て最後の手段を使う為に息を大きく吸い込んだ所で後ろの方から声が聞こえる。


「お巡りさん‼こっちっす‼女の子が変な男に絡まれてるっす‼」


 後ろの方から男の人の声が聞こえて来て後ろの方から走ってきた帽子を被った男の人に手を掴まれる。


「走れ‼」


 手を引かれて言われるがまま驚いた様子の記者の横を走り抜ける。

 正直言って咄嗟に走れた自分を私は盛大に褒めてあげたい。

 記者の男から離れて駅の改札付近で私と同い年か一つ上ぐらいの男の人は私の手を放し、こちらを振り抜かないまま口を開く。


「いきなり悪かったな。怪我はないか?」

「あ、はい。助けてくれてありがとうございました」


 私の事を心配してくれた男の人にお礼を言うと彼は顔を隠すように帽子の鍔をクイッと引っ張ると言葉を続ける。


「そうか、あいつは君の家も知っているみたいだから帰ってからも気をつけろ」

「あ‼名前を教えてください‼」

「・・・そのうち解るさ」


 私に注意をして去って行こうとする男の人に咄嗟に名前を教えてと思わず言ってしまうと男の人はそのうち解ると意味の分からない事を言って改札を抜けてさっさと去って行ってしまう。

 彼の言葉の意味が解らず私も首を傾げながら改札を抜けて家の最寄り駅まで戻り、スーパーに寄って冷凍食品と彼女用のお粥のレトルトパック。あんみつ用のチュ〇ルの購入を済ませて急いで家に帰る。

 鍵を開けて中に入り、しっかりとチェーンと施錠をしてから私はふと家の雰囲気が何か違う事に気が付き、買い物袋を置いて姉の木刀を手に持ち、を立てないようにゆっくりとリビングへと向かう。

 隠れながらゆっくりとリビングを覗くと異変に直ぐに気が付く。

 私が出る時には安らかな寝息を立てていた女の子が上半身だけを起こしてボーっとした様子で虚空を見つめながら膝の上で丸くなっているあんみつを撫でている。

 寝ている時にも奇麗だと思っていたが実際に起きて動いていると一つの芸術作品を見ているような奇妙な感覚になってくる。

 そんな感覚の所為か持っていた木刀が壁に当たりコンっと小さく音を立てる。

 やらかした事に若干慌てているとリビングの方から声が聞こえて来る。


「あなたは、だぁれ?」


 若干幼く聞こえる声につられて彼女の方を向くと 青と紫の金目銀目(ヘテロクロミア)の瞳が私の事を不思議そうに見ていた。


此処までの読了ありがとうございました。


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