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失敗

おはようございます。

第262話投稿させて頂きます。

今回は第三者視点です。星の後は少しだけコハクの視点になります

楽しんで頂ければ幸いです。

「失敗だな。時間を掛けすぎた」


 グラディア帝国・クラシア王国共同軍の後方キャンプ地の開けた場所で一際豪奢な椅子にだらしなく座りながらアルバルトは顔を顰めながら師匠と化け物の女との戦いの決着を遠目で見て溜息を吐きながらぼそりと呟く。


「失敗ですか?予定外の敵でしたがこちらが押しているのには変わりないかと・・・」


 アルバルトの呟きを聞き、護衛の男は不思議そうな顔で訊ねるとアルバルトのは馬鹿にしたような視線を向けた後で話し出す。


「押していようが関係ないイリアには攻撃も侵入も許さぬ魔法障壁がある。展開までに時間が掛かる品物らしいがこれ程時間が掛かってしまっては最早手遅れだろう。あの化け物め・・・手間を掛けよって」


 憎々し気に遠くで膝を着いているコハクを忌々しそうに睨むアルバルトに脇から軍を率いる責任者が声を掛けて来る。


「このまま撤退いたしますか?」

「他に何か選択肢が有ると言うならば言ってみろ」


 男の言葉に少しだけ不満を滲ませながらアルバルトが問うと男は一礼をし、案を口にする。


「はっ、僭越ながら提案させて頂きます。エリス様の投入で下がらせた魔導士共に広範囲殲滅魔法を唱えさせ、撤退と共に放つのです。そうすれば相手にも多少のダメージを与えられるかと」

「面白い。その案を採用してやる」


 男の話を聞き、アルバルトはニヤリと笑うと男の案を採用する。


「光栄の極み。して、エリス様はどうなさいますか?」

「我が師がこの程度の事で死んだら苦労せんわ。多少の文句は飛んでくるだろうが構わん。実行しろ」

「はっ‼直ちに実行に移します」


 アルバルトの言葉にニヤリとした笑みを浮かべ一礼した男が去るのを横目で見ながらアルバルトが戦場へと目を戻すとそこには闖入者が一人増えていた。


 アルバルト達が不穏な会話をしている中、和登とエリスはお互いに武器を構えながら睨み合っている。

 自分より格上の相手を前に和登は緊張から汗が噴き出してくる。

 余裕な様子のエリスと違い、緊張状態の和登の耳にコハクの様子を見に行ったネージュの声が届く。


「勇者‼あるじ、まだ生きてる‼」


 唐突に聞こえてきたネージュの言葉にとりあえずコハクが生きていた事に秘かに安堵していると目の前の敵がゆっくりと口を開く。


「あは♪ひょっとして彼女を助けに来たのかな♪いい判断だけど、君だと役者不足じゃないかな?」


 軽口を叩くエリスの持つ真っ黒な刀身に赤いルーン文字の浮かんだ剣を見て和登は険しい表情をしながら口を開く。


「そんな事は百も承知してるさ。それより、その剣は《オカミノカミ》か?」


 和登の言葉を聞き、エリスは一瞬何を問われているのか分からないという顔をしたが直ぐに理解しながら顔に笑みを浮かべながら答える。


「あは♪使えそうだから貰っちゃった♪今の名前は《マガツガミ》っていうんだぁ~♪」


 何でもない事の様にそう言うとエリスは和登との距離を一気に詰めて剣を振るう。

 ギリギリで《マガツガミ》の凶刃を《バルドル》で受け止め、鍔迫り合いになる。


「あは♪時間稼ぎをしたかったみたいだけど無駄無駄♪君も彼女も皆死んでそれでお終いだよ」


 そう言われて鍔迫り合いの態勢から剣を打ち付けられコハクの居る方に大きく飛ばされる。


(くそ‼帝国で戦った時に分かってたけどやっぱり俺だと相手にならない・・・)


 和登が態勢を立て直すのと同時にエリスは地を蹴って開いた距離を詰めにかかる。


(まずい・・・)

「《サイプレス・サーヴァント》‼」


 此方に向かってくるエリスに咄嗟に魔法を使って応戦する。

 複数の光の球がエリスを囲みレーザーを放つ。


「あは♪この魔法は厄介だね♪」


 言葉とは裏腹に余裕を持ってレーザーを回避し、和登へと迫り、目の前に着地する。


「あは♪ゲームオーバーだよ♪」


 無邪気な少女のような笑みを浮かべて《マガツガミ》を振るって和登の命を刈り取ろうとその首に凶刃が迫る。


「‼」


 《マガツガミ》の刃があと少しでその首を落とすという所でエリスは何かを感じ取ったのか刃を引いて和登から大きく距離を取る。

 和登も慌てて態勢を立て直して距離を取ると先程まで和登が居た場所に空から火の玉が落ちて来る。


「アルバルトめ・・・ふざけやがって・・・・」


 落ちて来た火の玉を皮切りに大量に降ってくる火の玉を忌々し気に見てからエリスは火の玉を避けながら移動し丁寧な動作で地面に落ちていた《ネメシス》を拾い上げると和登に向けて声を掛ける。


「あは♪邪魔が入っちゃたから僕はこの辺でお暇するよ♪生き残りたいなら早くここから逃げた方が良いよ♪チャオ♪」


 そう言って最早和登達の事など眼中に無いと言った様子で帝国、王国の共同軍の陣地へと向かっていくエリスを横目で見ながら和登もコハクとネージュの元へと向かう。

 二人の元へとたどり着くとネージュが必至に火の玉からコハクを守っている。

 コハクとネージュの元に辿り着き、和登も魔法で二人を守る。

 コハクの様子を見ると僅かに上下する胸で辛うじて生きていると言うのが分かる程度で決して安心できる状態では無い事を確認し、和登は顔を顰める。

 コハクの状態を確認してから魔法で自分達に向けて落ちて来る火の玉を打ち消して少しすると和登達の足元に見覚えのある魔法陣が展開される。


(やっと来たか・・・)


 内心で安堵の息を吐くのと同時に転送が始まり周囲を白い光が包み始め転送が開始される。

 火の玉の振ってくる中、開始された転送に少しだけ安堵の息を吐くと魔法陣の光とは別の光が目に入りその瞬間、地面が大きく揺れる。


「なんだ⁉」


 何かしらのエラーが起こった事を察するが魔法陣はそれでも起動を続けて転送を行っている。

 懐にいる月夜が気でも狂ってしまったかの様に暴れ回ったのを感じて咄嗟の事に和登はコハクとネージュを抱きしめて衝撃に備える。

 周囲が完全に光に包まれた瞬間に轟音と再び地面を揺らすような衝撃が辺りを襲うのを最後に和登とネージュの意識は闇へと包まれた。


 ☆


「ちょ・・・そう・・・してた・・・りひど・・・が」


 ぼんやりとしている意識の中で誰かの慌てているような声が微かに聞こえる。

 ひょっとしたら私の目の前に現れた女の子と男の子だろうか?

 ぼうっとした頭でそんな事を考えていると別の所からも声が聞こえる。


「く・・・ち・・・ふた・・・大丈夫・・・先にこは・・・ちゃんを‼」


 その声が聞こえてきた瞬間にぼやけている視界に翠色の優しい光が見え、全身を襲っていた激しい痛みが消えて行くのを感じながら私の意識は再び闇の中へと落ちて行った


此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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