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侍女の反乱

おはようございます。

第261話投稿させて頂きます。

今回は和登視点です。

楽しんで頂ければ幸いです。

「イヌガミ様、起きてください」


 バタバタと複数の人間が走り回る音の中に明確に俺の事を呼ぶ声が聞こえて来て意識がはっきりとして来る。

 声に反応して目を開けようとしていると声の主は少しだけ困ったような声音で言葉を続ける。


「ふむ。まだ起きる気配がございませんね。では、失礼して‼」

「うわ‼」


 最後だけ元気なそんな言葉と同時に俺の体が斜めに傾き、悲鳴を上げて床に転がる。

 顔を顰めながら見上げるとコハクの専属メイドであるリューンさんがいつものメイド服では無くてコハクのコートを着て(黄昏の魔王の格好で)立っている。


「おはようございます。イヌガミ様。お体の調子は如何でしょうか?」


 小首を傾げながら俺の事を見下ろす彼女の顔を見て自分が医務室のベッドに寝かされていた事とその理由を思い出し、彼女の質問に答えず慌てて質問を口にする。


「コハクはどうしたんですか⁉」


 俺のした質問にリューンさんは少しだけ驚いたような顔をするが直ぐに無表情に戻り、質問を無視してしまった事を気にした様子も無く口を開く。


「ふむ、お体に不調は無い様で安心致しました。・・・コハク様は戦場へ行かれました」


 最後のコハクに関する事には苦虫を潰したように顔を顰めながら答えてくれたリューンさんにコハクを止められなかった俺も同じような顔をする。

 ・・・そう言えば直前にコハクに散々叩かれたけど意外にも体に痛みが無い。


「・・・イヌガミ様。体の調子が良いのならば一つお願いしたいことが有るのですが宜しいですか?」


 顰めていた顔を更に顰めながらリューンさんは言葉を続ける。


「当然の事ですが命の危険が有りますので拒否して頂いても構いません。むしろコハク様の意志を尊重してくださるのなら拒否して頂いた方が正しいのかもしれません」

「内容は?」


 内容を聞かない事には返事は出来ずリューンさんに問いかけると彼女はすみませんと申し訳なさそうに小さく呟いてから内容を話し始める。


「依頼内容は記憶の無くなったコハク様の救助、又はご遺体の回収です・・・」


 遺体と言った所で手に力を入れて言う彼女に質問をする。


「コハクはまだ生きているのか?」

「恐らく。イヌガミ様が目覚める少し前にタチバナアオイが転移陣にて送られてきました。その事を考えるとまだ生きておられる可能性が高いかと・・・ですが、先程も申し上げた通り、命の危険がございます。断って頂いても・・・」

「その頼み引き受けた」


 リューンさんの言葉を途中で遮り、彼女の頼みを引き受ける有無を告げながら立ち上がる。

 そんな俺を驚いた様に見ながら彼女はポツリと呟くように問いかけて来る。


「頼んでいる立場で言えた事ではありませんが本気ですか?死ぬ可能性の方が高いのですよ?」

「好きな女の子を助けられるんならなんだってやるさ」

「直球ですね」


 リューンさんの言葉に自分の顔が赤くなるのを感じながら俺は疑問を口にする。


「お願いを受ける事は俺にとっても望む所だけどリューンさんは勝手に決めてしまって大丈夫なのか?」


 俺が疑問を口にすると彼女は何でもないという様に口を開く。


「ええ、問題はございません。現在、わたくしは黄昏の魔王としての権限をコハク様より譲渡されております。私が何をしようとコハク様に怒られる謂れは有りません」

「なるほど・・・それで、手筈は?」


 内心で逞しいと思いながらリューンさんから手筈を聞く。


「手筈は簡単です。イヌガミ様にはこの探知機を持ってコハク様の所まで《リング・オブ・トワイライト》を使って飛んで頂きます。イヌガミ様がコハク様の所に付いたらこちらで転移装置を起動させて回収させて頂きます。イヌガミ様には転移装置が完全起動するまで時間を稼いで頂きたいのです」


 そう言われて俺は指輪の存在を思い出し、首元に手を伸ばすがそこに何時もぶら下げていた指輪が無い事に焦り、周囲を見回すとベッドの近くに有った机の上にコハクに送ったペンダントと一緒に置かれているのを見て少しだけ複雑な気持ちになりながらペンダントと共に机から取り、ペンダントをポケットに入れ、準備の出来た事を告げるとメイド長がネージュと月夜を連れて医務室に入ってくる。


「それとイヌガミ様、ネージュと月夜をお連れください。きっと力になってくれます」


 そう言われてネージュと月夜が俺の方へと歩いてくる。

 月夜はこれから起こる事を予測しているみたいだが俺の顔を見るとメイド長の手から離れ、定位位置の服の内ポケットにスッポリと収まる。


「イヌガミ様、どうかよろしくお願い致します」

「お願い致します」


 メイド長とリューンさんが二人揃って頭を下げて来るのを見て俺は一つ頷き、口を開く。


「最善を尽くします。《コリドー・オープン》」


 かつてルファルデ法国から憤怒の国へと言った時と同じキーワード口にし、出現したゲートにネージュと一緒に足を踏み入れる。

 ゲートの中を二人で走っていると少し離れた所に出口の光が見えて来る。

 ———俺を助けに来てくれた時は、彼女はどんな気持ちだったのかな・・・あの時とは立場が逆だな・・・

 まだ、こちらに来たばかりの時にクラシア王国で殺されそうになった時の事を思い出しながら今度は俺がコハクを助ける為に出口へと向けて駆けていると出口に近づくにつれて月夜専用のポケットに入っていた月夜が警告するように足で俺の腹部をトントンと三回叩く。

 危険の警告を受け嫌な予感のした俺は《バルドル》を抜いて出口へと突きを繰り出しながら飛び込む。

 目に光が飛び込んできて顔を顰めるが色の戻って来た景色の中で金の髪の少女が空中で一回転して距離を取り、俺へと話しかけて来る。


「あは♪なんで君がここに?」


 辛うじて生きていてくれたコハクへと駆けて行くネージュを目の端に捉えてから俺は帝国で襲撃してきた少女を睨みながら剣を構え直した。

此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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