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戦闘実習

こんばんは、第26話投稿させていただきます。

楽しんでいただけたら幸いです。


「え!?やっぱりあのパーティー、コハクちゃんも来てたの⁉私全然分からなかった」

「うん、最初は大広間の方に居たんだけどアラン君にお城の図書室に連れて行ってもらってずっとそこに居たからね」


 授業終わりにリルと二人で食堂に行きながらこの前の第二王子の誕生日会の話をする。

 国のパーティーから早一か月、私達はめでたく二年生になった。今から食堂でアラン君達とお昼を取りながら明々後日の実習の打ち合わせをする予定だ。


「あぁ~、だからアランさ…ゴホン…アラン君も姿が見えなかったんだぁ。でも、狡い、私もコハクちゃんのドレス姿見たかったのに独占するなんて…」

「いや…そんな狡いって言われるようなことではないでしょ…」


 そんな取り留めの無い話をしながら食堂に入ってアラン君達を探していると先にこちらを見つけたアラン君が手を振っている。


「二人ともこっち、こっち」

「ごめんね。ずいぶん待った?」

「全然。僕達もさっき来たところだよ。」

「あれ?あと二人は?」


 席を取っているテーブルにはアラン君しか居らず。テトとリスト君の姿は見えない。


「あぁ~、二人とも腹の虫に耐えかねて今列に並んでいるよ。ここは僕が取っておくから二人も先に昼食を持って来なよ」

「アラン君は良いの?」

「リストが一緒に持ってきてくれるから僕は大丈夫。行っておいで」

「うん、じゃあ、お言葉に甘えて先にお昼持ってくるね。リル行こう」


 ジト~っとした目でアラン君を見ているリルの手を引き列に加わる。彼女はなぜ彼をジト~っとした目で見ていたのだろう?

 お昼を取りながら明々後日に行く場所や各人のポジションを確認していく。

 場所はルミナル高原、狙う魔物はラビット系の魔物

 私達の引率の先生はイクス・ゴルデュフィス・ゲネディスト教諭、要するに師匠(せんせい)だ。

 ポジションはテト、アラン君、リスト君が前衛、リルが後衛、私は前衛、中衛、後衛だって…

 ねぇ?知ってる?私って一人しかいないんだよ?君達にしても師匠(せんせい)にしても魔術師や魔法使いの立ち位置ってちゃんと理解してる?

 まぁ、今更文句も無いけどさ…


「じゃあ、確認はこんな感じで大丈夫だね。明日は皆で外出許可を取って町でポーションやなんかを買いに行こう。じゃあ、今日は解散で‼」


 そう締めくくり皆で食堂を出てる時にリルが話しかけてくる。


「あ、そうだコハクちゃん。パーティーに着て行ったドレスってまだ持っているの?」

「へ?あぁ、あのドレスだったらパーティーが終わった時に師匠(せんせい)に返却したよ。私の物じゃないしね」


 ごめんなさい、嘘です。実はあの後返そうとしたら師匠(せんせい)にそのまま押し付けられて、余り使っていないアイテムボックスの肥やしになってます。なんでそんな事を今頃聞いてくるんだろう?


「え…返しちゃったの…後でもう一度着て見せて貰おうと思ったのに…」


 いや、それは勘弁してください。ドレスって動きにくいし汚れないように気を使うしで着慣れていないから滅茶苦茶疲れるんです。

 ええ、女らしくない事は分かっています。前世で妹に鈍い事や女を捨てていること以外は良い主婦だと散々言われました。


「あ~、ごめんね。今度何かで埋め合わせするから…」


 異常にがっかりしているリルに目を泳がせながらついそんな事を言ってしまうとプーっと膨れていた顔が急に笑顔になった。


「約束だよ。言質取ったからね」


 さらっと怖いことを言い。一緒に部屋に向かう。

 ちなみに私がこの約束を後悔することになるはまた別のお話である。



 さて、時は進んであっという間に実習の日が来た。私達と他のパーティーの子達はルミナル森林に着いた。


「良いですか。ラビを既定数である10匹討伐したらこのアイテムポーチ入れて戻ってくるんですよ。解体の仕方は後で皆に教えます。遠くに行っても良いですけどその場合はラビ以外の魔物にも十分注意しなさい。もし、ラビ以外の魔物に遭遇してしまった場合は、戦闘は行わず。この魔道具を打ち上げて隠れなさい。使い方は座学で教えたとおりこの玉形の魔道具を空に向けて思いっ切りぶん投げるだけです。一回ぶん投げてしまえば、此処に居る全教師に連絡が来ます。絶対に安全を重視すること‼」


 引率の先生の一人が全員に緊急時の対応を再説明しているのを聞き、私達はそれぞれのパーティーに別れて討伐をしに行くのだった。




「ふ~、これで7匹目、あとちょっとだね」


 襲い掛かってくるラビを切り伏せてアラン君が一息つきながらそう言う。


「なんか、結構簡単に終わりそうだな」

「テト、相手はラビとはいえ魔物だ。気を抜かないようにした方が良い。それに俺達は強化魔法を使っている。比較的簡単に終わるのは当然だよ」

「まぁ、確かになぁ。悪りぃ、リスト油断しないようにするぜ、それにしても、強化魔法さまさまだな。自分で掛けないと楽でいいや」


 魔物の中で比較的弱い魔物であるラビでも、私達みたいな子供では結構強敵である。私達は《ライトニング・オーラ》を全員に使っているから他のパーティーに比べると楽に倒せるのだろう。ちなみに全員に魔法をかけたのは当然私だ。

 慣れない戦闘で皆疲れたみたいだし少し休憩した方が良いかな


「あと3匹だね。一回この辺で休憩しておく?」

「そうだね。一回、休憩したほうが良いかもね」


 皆で草原に座り休憩をとる。


「あ、そうだ。皆これ食べる?」


 そう言ってアイテムポーチから一昨日皆で街に行った時に買った焼き菓子を出す。


「わーい♪コハクちゃんありがとう♪」

「ありがとう。いただきます」

「てか、お前アイテムポーチにお菓子何て入れてたのかよ」

「携帯食は持ってきても良いって書いてあったからね。疲れた時は甘いものが欲しくなるし、保存が効くこのお菓子なら良いかなって思って一昨日街で買っておいたんだよ」

「ははは、コハクらしいね。いただきます」


 皆で焼き菓子を食べながらどうするかの相談をする。


「で、次はどうするんだ?まだこの辺りでラビを狩り続けるか、それとも狩場を移すか?」

「そうだね~。この辺りは他のパーティーもいるし取り合いになる可能性も有るから少し離れた所に有る湖の方に行こうと思っているんだけど皆はどう思う?」

「私は、賛成かな。何組かのパーティーは早々に先生たちの居るキャンプ地から離れたところに行ってるからそっちの方が効率も良いと思う。」

「「「同じく賛成」」」

「じゃあ、もうすこし休んだら場所を移動しよう」


 行先が決まりもう少しだけ休憩を取りつつ私は地図を広げ次の目的地を確かめていると湖の方角からふと嫌な予感がした。だが、この時の私は外に出て魔物を狩っているのだから気を貼っているだけだと思い。その感覚を無視してしまった。






「ヨシ‼これで10匹目‼後は先生たちの所に戻るだけだな‼」


 休憩をしてから一時間程して私達は課題である10匹のラビの討伐を終えることが出来た。それにしてもこの辺りに来てから妙に頭痛が酷い。


「あれ?コハクちゃん顔色が悪いけど大丈夫?」


 体調の悪さが顔に出ていたのかリルが心配そうに聞いてくれた。


「あ~、うん、此処に来てからちょっと頭痛が酷いけど大丈夫だよ」

「コハクっぽくないな大丈夫か?」

「顔色もあんまり良くないね。大分時間も経っちゃったし、急いで先生達の所に戻ろう」


 皆で体調を気にしてくれている。本当この子達は優しい子達だ…

 それにしても本当におかしいくらい頭痛が酷い。

 スタート地点に戻る用意をしているとザッザッと足音が聞こえてくる。

 足音にいち早く気づいた私は足音の方を見て思わず思いっ切り嫌そうな顔をしてしまった。そこには高慢ちき勘違い貴族のデイルと過去に私にボコボコに負けたナウゼリン率いるパーティーが私達の行く手を塞ぐように立っていた。人間、頭痛にプラスして嫌悪感を覚える人間を見てにこやかにしているのは難しいものです。


「おや~?テルト殿率いるパーティーにこんな所で出会うとは奇遇ですなぁ~。今は何をされているのかな?」


 なにが奇遇だよ‼この囲み方は最初から全部見ていての陣形だろ‼


「やあ、ヴァトラー殿。本当に奇遇だね。僕達は今課題の10匹目を狩り終えたから元の場所に戻る準備をしていたところだよ」

「ほぉ、さすがですなぁ、して、そちらの彼女は随分調子が悪そうに見えるが大丈夫なのですかな?」


 リスト君とテトが後ろに隠すようにしてくれていた私を目ざとく見つけ心配しているふりをしてくる。

 くそ…この頭痛良くなるどころかどんどん酷くなって来る。あまり、こいつに弱っている姿を見せたくないのに…


「そうだね。彼女の体調が良くないみたいだから僕達は早く戻りたいんだ。そこをどいてもらえるかな?」


 アラン君は落ち着いた様子で穏やかに道を開けるように頼む


「ふむ、体調の悪い人間が居るなら急いだほうが良さそうですなぁ~。では、相談なのだが、そちらの狩ったラビを半分我々に譲ってもらえるなら道を譲ろう」


 このボケなすび‼相変わらずおかしな要求をしてきやがる‼マジでこの世から消し去ってやろうか‼

 誰にも気づかれない様に殺傷能力の高い《ウインドウエッジ》を使いそうになりふと正気に戻る。

 おかしい?今の私の状態は明らかにいつもより気性が激しくなっている?


「悪いけど、その取引に応じるつもりも応じる義務も無いよ。ちゃんと自分達の力で目標の数を倒しなよ。分かったらそこを退いてくれ、早く先生達に彼女を診て貰わないといけないんだ。こんな所で時間を無駄にしてる暇はない」


 彼にしては珍しく厳しめの口調でデイルの提案を蹴る。


「ハッ、応じる義務は無いと言ったが先に此処に居たのは我々なのだよ。よって君たちは我々の取り分を横取りしたという事だ。迷惑料も込みで半分請求して何が悪い。大体、貴族である我々がなぜこんな所で汗水流し魔物の討伐などしなければならない?こんなのは底辺どもの仕事だ。分かったらとっとと獲物を置け‼」


 そんなデイルの言葉に場の空気が殺気立ってしまった時、ソレは唐突にその場に現れた。

 全長10mは有りそうな黄昏色というのか分からないけど不思議な色合いの片腕、片目の手負いのドラゴンが物凄い風を起こしながら私達の前に降り立った。


コハクが魔王になるまであともう少しです。

予定より長くなってしまって驚いています。

まだまだお付き合い頂けたら幸いです。

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