壊れた世界・1
おはようございます。
第258話投稿させて頂きます。
今回は第三者視点です。
楽しんで頂ければ幸いです。
少しずつ、少しずつ消えてく記憶の中でコハクは目の前で笑みを浮かべながら剣を振るうエリスへと殺意を向ける。
黒い長剣の一撃を双剣で受け止め、鍔迫り合いになった所でエリスが楽しそうに口を開く。
「あは♪まだ動けているみたいだけど流石に限界が近いみたいだね♪さっきより動きが鈍いよ♪やっと効いてきたみたいで少し安心したよ♪」
「効いてきた?どういう事だ?」
エリスの言葉に自分の身に起きている事を知っていると思い問いかけるとエリスは更に楽しそうに笑みを深めて口を開く。
「フフ♪君は今、記憶が消えて行っているだろ?その原因は僕なのさ♪」
そう言うとグッと剣を持つ手に力を入れると《タケミカヅチ》と《シナツヒコ》の刃を引き裂く。
その様子を見てコハクは慌てて後ろに飛び、エリスと距離を取り、破壊された《タケミカヅチ》と《シナツヒコ》をアイテムボックスにしまいながら《オカミノカミ》と《クラミツハ》を取り出す。
コハクのその動作を見ながらエリスは余裕な表情を浮かべながら剣をクルリと回して言葉を続ける。
「あは♪どういう意味か分からないって顔をしているね♪君、前にクラシア王国で勇者の男の子を助けただろ?忘れていると思うけどその時に君と僕は顔を合わせているのさ♪その際に君に向けて投げたあの短剣には特殊な力を宿していたのさ。正式名称、《忘却封剣アムネシア》。記憶を破壊し、忘却の彼方へと誘う魔剣だよ♪本来ならもっと早く効果が表れるはずだったんだけどなかなか効果が出てこなくってね。今になって浸食が進んだ所を見るとやっぱり君に近しい人達を殺したのが効果覿面だったのか?」
心底、楽しそうにそう話すエリスを睨みながら自分が最も得意とする二本の剣を手にし、エリスへと向けて駆けだす。
その様子を面白そうに見ながらエリスも剣を構える。
「あは♪記憶が消えるのが怖くて僕と話をする気も起きないのかな?」
剣で切り結びながら軽口を叩くエリスを仮面の下で忌々しそうに睨みながら口を開く。
「黙れ‼お前と話すことなど何もない‼お前もアルバルトもエリュナも皆殺してそれで終わりだ‼啜れ‼《クラミツハ》‼」
その言葉と共にエリスと切り結んでいた薄い水色の剣の刀身が赤く染まり血の色をした無数の細い槍がエリスへと向けて飛んで行く。
「おっと♪危ない♪」
血の槍を軽々と躱して今度はエリスの方からコハクへと切り掛かる。
エリスからの攻撃を今度はコハクが《クラミツハ》で受け止め、《オカミノカミ》でエリスへと向けて横薙ぎに振るう。
横から振るわれた《オカミノカミ》をエリスは地を蹴り、コハクの頭上を飛び越えるように躱し、コハクの顔へと向けて黒い剣を振るう。
コハクもギリギリの所で躱すが僅かに斬撃が仮面に当たり、仮面の右側が切り裂かれ切り裂かれた部分が衝撃で吹き飛ぶ。
コハクは仮面が吹き飛んだ事に臆さず身を捻じり、空中にいるエリスの脇腹に蹴りを食らわせて蹴り飛ばし、距離を開ける。
「うげ♪結構強烈な蹴りを食らわせてくれるじゃん♪」
脇を抑えながら尚も軽口を叩くエリスに向けて剣を構えながらコハクもゆっくりと口を開く。
「余りお前に時間を掛けられない」
「あは♪じゃあ、もう終わりにするかい?でも、君で僕に勝てるかな?」
コハクの言葉にエリスは些か腹が立ったのか挑発するようにコハクに向かい合う。
「勝つさ。その為に準備をした」
そう言って再びコハクは武器を構えてエリスへと向けて駆け出す。
余りにも普通に突っ込んでくるだけのコハクにエリスは武器を構えて呆れながら口を開く。
「なーんだ♪何か策が有るのかと思ったけど突っ込でくるだけかぁ・・・正直、拍子ぬ・・・」
コハクの行動に正直、飽きたと言った様子で口を開いたエリスの言葉は唐突に後ろから襲ってきた衝撃により途切れる。
エリスが疑問に思い自分の背に目をやると背中には先程の血の槍とは比べ物にならない数と大きさの血の槍が背に刺さっている。
「まさか・・・さっきの小さな血の槍は後ろの死体から血を得る為の目くらましか・・・」
少し前にコハクが《クラミツハ》の力を使って放った血の槍はエリスの後ろに無数に散らばっている死体へと刺さりその死体のちに感染し、今エリスの体に刺さっている。
その事実を確認したのと同時にエリスの体から無数の血の槍が噴き出し、エリスの体を地面へと縫い付ける
エリスの体が行動不能になったのを見てコハクは一気に距離を詰め、エリスの首へと向けて《オカミノカミ》を振るう。
「取ったああああ」
《オカミノカミ》の刃がエリスの首を切り裂き、宙を舞ったのと同時にエリスの体から生えていた血の槍が消え失せ、力無く地面へと倒れる。
その姿を見てコハクはゆっくりと息を吐いてから口を開く。
「後は・・・あの莫迦皇帝と莫迦女王を・・・」
疲労困憊の姿でそう呟くとエリスの死体には目もくれずに歩き出そうとする。
コハクが一歩を踏み出した所でエリスの首が飛んで行った方から声が聞こえてくる。
「あは♪油断しちゃった♪まさか一回死ぬとは思わなかったなぁ♪」
その声に驚いていると近くで転がっていた体がコハクを蹴り飛ばし、コハクとの距離が再度開く。
体制を立て直している間に体は首を拾い上げると切り落とした部分に乗せて振り返る。
「じゃあ♪第二回戦を始めようか?」
そう言ったエリスの体からはこれまでに負わせた全ての傷が消え去っていた。
此処までの読了ありがとうございました。
次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




