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銀の死神

おはようございます。

第253話投稿させて頂きます。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とても励みになります。

今回はコハク視点で星の後は第三者視点です。

楽しんで頂ければ幸いです。

 気絶させた狗神君を壁に寄り掛からせて怪我をさせてしまった場所にポーションを染み込ませたハンカチを当てる。

 彼の傷が癒えるのを確認してから私は首から下げているペンダントの鎖を外し、彼の手に握らせる。

 これを貰った時は驚いたし、とても嬉しかったけれど今の私にはもはや持つ資格は無いだろうと彼に返して置く。

 一応、内臓等に致命的な障害が出ないように加減はしたが彼の近くにポーションも置いておく。


「バイバイ。和登君。君の幸せを願っているよ」


 最後に彼の髪を一度だけ撫でてから立ち上がり、私は転移装置のある場所へと向けて歩き出す。

 転移装置のある場所の扉を開けるとメルビスを含めた軍団長達とリューンが少しだけ残念そうな何とも言えない表情で礼を取り出迎えてくれる。

 恐らくだがこの中の誰かが狗神君達に話したのかもしれない。

 そんな事を考えつつ礼をしている皆に対して声を掛ける。


「やあ、皆。待たせたね」

「・・・いえ、あまり待ってはおりません」


 私がそう皆に告げるとメルビスが顔を歪めながら直ぐに待っていないと否定をする。


「そっか、なら良かったよ。リューン。悪いんだけど此処に来るまでの連絡通路で狗神君が気を失っている。私が出た後で彼の回収と手当てを頼む」

「・・・かしこまりました」


 リューンの前を通る時に足を止め、狗神君の事を伝えてまた歩を進める。

 この場にいる皆が何かを言いたげな顔をしているが何も言わずに私が転移装置に乗るのを見送ってくれる。


「メルビス。後の事は手はず通りに。リューンも後をよろしく。皆も後を頼んだよ」


 私の言葉に全員が何も言わずに頭を下げる。

 それと同時にいつも付けている仮面とは違う無地の仮面を被り、転移装置が起動して私の視界が真っ白に塗りつぶされた。


 ☆


 戦闘を開始してから数時間、数の大差に押されながらもイリス魔法王国の騎士団は何とか持ち堪えて戦闘をしている。


「まずいですねぇ。わかっていた事ですけど徐々に押され始めていますねぇ」


 グラディア帝国の鎧を着た兵士の首に剣を突き立て遠くの敵に魔法を放ちながらイクスはのんびりとした口調で言葉にする。


「おい‼イクスのおっさん‼のんびりそんなこと言ってねぇで押し返す案をくれよ‼」


 イクスの様子にまだ若いイクスと同じ意匠のローブを纏った青年が起こった様子で敵兵に魔法で倒す。

 彼らは《七宝》。王により選定されたイリアの高位魔術師の集まりでありイリアが未だに持ち堪えている理由でもある。

 最近代替わりしたばかりの若い光の賢者を見ながらイクスは少しだけ呆れた様にため息を吐くと口を開く。


「はぁ、分かっていませんねぇ。私が魔法以外に(奥の手)を使っている時点で相当切迫しているんですよ。現に普段は口うるさい他の賢者たちから突っ込みがないでしょう」

「知るかそんなもん‼」


 些かふざけた様な問答をしながら敵を倒していくが不利な状況である事が変わるはずもなく挙句の果てに長時間の戦闘に疲れも溜まっていき前線が押し込まれ始めている。


「それに後方では(レイン)が治療をしているんです真面目にやっているに決まっているでしょう」


 のんきな口調とは裏腹に真剣な顔で敵を切り伏せる。


「?アレは何です?」


 敵を切り伏せながら敵の陣に視線を向けると遠くの方で何か筒の様な物を抱えた兵士達が此方に狙いを定め、それと同時に剣を交えていた兵士達が後退しているのが魔法によって強化されている視覚に写る。


「伏せなさい‼オレット・ハイドレート‼」

「はぁ⁉グェ‼」


 直感的に敵の動作がやばいと判断したイクスは後退していく騎士達を追いかけて敵陣へと行こうとしていた若い光の賢者の頭を引っ掴むと有無を言わせずに地面へと叩き付ける。

 その行動と同時に敵の陣営から「放て‼」の怒鳴り声と一緒に複数の火薬の炸裂する音と共にイクスの左肩に鋭い痛みが走る。


「いってぇ・・・何すんだ・・・おっさん‼大丈夫か⁉」


 地面から顔を上げ、文句を言おうとしていたオレットはイクスが肩から血を流しているのと周囲で兵士達が倒れているのを見て声を上げる。

 その様子を見てイクスは珍しく痛みに顔を顰めながら肩を抑えて口を開く。


「おっさんじゃありません・・・迂闊に飛び込もうとする馬鹿がどこ言いますか・・・一度下がりますよ・・・」

「敵の陣営が崩れたぞ‼突撃しろ‼」


 イクスが撤退を口にしたのと同時に敵から突撃の命令が聞こえてくるのを聞いてイクスは小さく舌打ちする。


「私が相手をしますから貴方は負傷した兵士を連れて他の賢者達と撤退しなさい‼」


 半ば怒鳴り声に近しい口調でイクスが指示を飛ばすとオレットは悔しそうに顔を歪めて兵士を担ぎ後ろへと引く。


「これは流石に死にますねぇ・・・全くもって私らしくもない」


 敵の馬が自分の方に駆けて来るのを応戦する準備を整えながら普段の自分とは違う行動を取った事に苦笑を浮かべる。

 敵の馬がもう目の前に来るという時に唐突に自分と敵の間に複雑な紋様の魔法陣が浮かび上がる。


「敵の攻撃だ‼注意しろ‼」


 魔法陣を見て敵が自分達の攻撃を警戒し足を止めるのをイクスも警戒しながら見ていると魔法陣から聞き覚えのある声が聞こえてくる。


「へぇ、態々味方と敵に分かれてくれているのか・・・これはやりやすいな《フォーサウザントルクス・スフィア》」


 魔法陣から出てきた仮面を付けた少女はそう口にすると周囲に数え切れない程の光の球が周囲に浮かび上がり一つの大きな輪を作る。


「《サイプレス》」


 ただ静かにその一言を少女が口にした瞬間、周囲が目を開けていられないレベルの光に包まれた。


此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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