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私の行く手を阻むのは

おはようございます。

第251話投稿させて頂きます。

今回は最初と一つ目の星は第三者視点です。

二個目の星の後はコハク視点です。

楽しんで頂ければ幸いです。

 良く晴れた日、クラシア王国が襲撃され、新女王が就任してから数日後。通常ならば多少のモンスターが出はするがイリア魔法王国とクラシア王国を行き来する比較的平和な国境沿いでイリアの軍とグラディア帝国、クラシア王国の同盟軍が向かい合っている。


「イリア魔法王国の魔法騎士団諸君‼今、降伏をするのなら無駄に死なずに済むぞ‼」


 馬に乗った豪奢な鎧を着こんだ馬に乗った男がイリス魔法王国の兵達に向けて見下したように降伏を促す


「クラシア王国、グラディア帝国。どちらの国の騎士団のまとめ役かは知らないが我々は降伏する事はない‼即刻祖国へと帰られよ‼」


 自分たちより倍以上いる敵に対してそう言うイリアの騎士団長に相手側の代表の男は馬鹿にした様子で嘲笑い口を開く。


「フン!数の差も理解できんか・・・全軍‼攻撃開始‼」

「全軍‼迎え撃て‼」


 その言葉を合図に両軍は攻撃を開始した。


 ☆


 イリアとクラシア、グラディア合同軍が戦闘を開始する数時間前。

 黄昏の国の医務室ではコハクのカルテを見ながら医師が難しい顔で口を開く。

 医務室でコハクは嫉妬の国で気が付いた記憶の欠如の進行具合を調べる為の検査を行いその結果について医師と話をしている


「魔王様。検査の結果ですが、やはり・・・記憶にかなりの穴が空いておられますね・・・」


 顔を顰めながら検査の結果を目の前のコハクへと告げるとコハクは一つ頷いた後でゆっくりと口を開く。


「そう・・・私は後どれぐらい私でいられそう?」

「それは・・・魔王様次第になるかと思います・・・現段階では何とも言えません」


 言い難そうにそう言う医師にコハクは更に質問を重ねる。


「そう。じゃあ、質問を変えるね。私は何時まで戦える?」


 医師の言葉を聞き、コハクが質問を変えると医師は更に顔を顰めながら口を開く。


「魔王様が今までに収めて来られた武技、魔法、剣技に依存するものかと・・・《タケミカヅチ》《シナツヒコ》が前より使えなくなってしまった事を考えると恐らくはその武器を用いて使った物から消えていく事が予想されます。魔王様ならしばらくは戦えるかと・・・」

「そっか、じゃあ、帝国とクラシアの軍に大きなダメージは与えられるね」

「作戦を取りやめて治療に専念するべきです」

「治る見込みはないよ。ならば私は次に託す事にする」


 医師に言葉に好戦的な言葉を漏らすコハクに医師は治療に専念する様に勧めるがコハクは聞く耳を持たずに立ち上がる。


「検査をしてくれてありがとう。ユタ少年は狗神君達と一緒に白夜の国へと避難するように手配してくれ。メイド長、10分後に各軍団長達とメルビス、デクリノミア、リューンを会議室に収集してくれ。他の子達には通常業務と狗神君達の撤収準備の手伝いを」

「かしこまりました」


 医務室を出て部屋の前で待機していたメイド長に向けて指示を出し、コハクは一足先に会議へと向かう。

 10分後、会議室に集まった面々は全員が顔を顰めながらコハクの検査結果等の話を聞いている。


「という訳で折角、皆に助けて貰った命だけどどうやら私に残された時間は少ないらしい。予定通りに事を進めよう」


 コハクの言葉に何人かが異議を唱えようとするが代替え案も言えずに反対する事が出来ない。


「それじゃあ、予定通りに・・・解散」


 誰も反対意見を上げられない事を確認してからコハクは席を立ち、自室へと向かう。

 その後姿をその場に居る全員は何も言えずに見送るしかなかった。


 ☆コハク視点


 会議室に居る全員からの視線を受けながら強引に話を切り、私は準備をする為に自室へと向かう。

 部屋のドアを開けて中へと入り、私服から普段はコユキの時に来ている服の黒い物の方に着替えてから帝国とクラシア軍と戦う為に用意していた物をアイテムボックスに入れたり身に着けたりして準備を整えていると部屋のドアが開いて誰かが入ってくる。


「あるじ・・・戦いに行くの?」


 不安そうに私の事を呼ぶ声に振り返るとネージュが泣きそうな顔でドアの前に立っている。

 ネージュと話す為に作業中の手を止める。


「うん。もうあいつ等に好き勝手させたくないからね。このまま行けば確実に魔族の国にも火種が来る。それを防ぐのが、私が魔王として働く最後の仕事だよ」

「ネージュも行く」


 私の言葉にネージュが泣きそうになりながら抱き着いて来る。

 ネージュを抱きしめ返して頭を撫でながら口を開く。


「ネージュ。駄目だよ。私が貴女を連れて行く気がないって分かっているでしょう?夢菜さん達と一緒に逃げなさい」

「主はずるい・・・ずるいよ・・・」


 泣きながら文句を言うネージュを咎めるような視線を向けて来るメイド長に預けて準備を終え、部屋の出口へと向かう。


「・・・それじゃあ、行ってくるよ」

「これほど行ってらっしゃいませと言いたくない事はありません・・・」

「・・・」


 部屋を出てメイド長とネージュにお別れの意味も込めて告げるとメイド長からはお叱りを受け、ネージュには無言で返されてしまう。

 そんな二人に苦笑いを浮かべてから何かを言いたげな二人に背を向け、転移装置へと向けて歩き出す。


「コハク。どこに行く気だ?」


 二人から離れて暫くした所で私の行く手を阻むように狗神君が硬い表情で立っている。


「やあ、狗神君。戦闘服を着込んでどうしたのかな?」


 口元に笑みを浮かべながら彼にそう問い掛けると狗神君は表情を更に硬くして口を開く。


「先に俺の質問に答えてくれ。質問を質問で返さないでくれよ」

「別に何処にも行く気はないよ」


 怒気の含まれたその声音に少しだけ肩をすくめながら適当に誤魔化す。


「噓つくなよ。クラシアの戦争を止めに行くんだろ?」


 私の事を睨みながらそういう彼に「はぁ」と溜息を吐くと私も表情を引き締めて彼と相対する。


「だとしたら何?」


 その言葉と共に殺気を放つと狗神君は少しだけ気圧されるが直ぐに立て直して口を開く。


「俺も一緒に行く。じゃなければこの先に行かせない」


 私がこれからする事をある程度予想していたのか武力行使も辞さないと言った様子で剣を抜き、そう宣言する。

 そんな彼に向けて私は更に溜息を付いてから狗神君に向けて答える。


「悪いけどその主張を聞く気はない」

「それなら・・・‼」


 私の言葉に更に言葉を続けようとする彼に私は《オカミノカミ》と《クラミツハ》で切りかかる。

 驚いた様子で《バルドル》で受ける。


「何を‼」


 驚いた声を上げながら受け止めた剣を押し返し、追撃をして来ようとする彼から距離を取り、二本の剣を構え直しながら口を開く。


「悪いけど時間がないのでね。君は自分の主張を通すために剣を抜いた。だけど私はその主張を聞く気はない。ならば私に勝ってその主張を通して見せろ‼」


 そんな言葉を残し、私は彼に切り掛かる為に再び地を蹴った。


此処までの読了ありがとうございました。

次回は和登視点です。ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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