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不機嫌な誕生日会/先代魔王の命

こんばんは、第25話を投稿させていただきます。

今回は視点移動が有ります。

☆印から別の人視点になります。

楽しんでいただけたら幸いです。

「はぁ~」


 煌びやかなドレスを着た貴婦人やピシッとした礼服を着た紳士たちを見ながらため息をつく。

 自分の恰好が普段の制服やワンピースじゃなくヒラヒラとした淡いブルーのドレスなのもため息の要因だ。


「はぁ~、やっぱり何が何でも村に帰るべきだった」


 アラン君達と友達になって早数か月、一年生が終わり今は春休みだというのに私は春休み返上で師匠(せんせい)に付き合い。お城で開かれている第二王子の誕生日会に出席させられていた。

 なぜ、このパーティーに出席させられたかと言うと師匠(せんせい)の弟子であることを貴族に紹介して余計な弟子を取らされないようにするためらしい。要するに虫よけの役割だ。

 結果として一部の貴族からはこいつが居なければ自分の子供を弟子に出来たのに見たいな顔をされている。私無事にこのパーティーから帰れるかな?

 はぁ~、せっかくこの春休みで新しく出来た弟に合えると思ったのになぁ~

 大体、第二王子の誕生日会だって言うのに当の王子本人が他の貴族達も見たことが無いってどういう事なの?この国独自の習慣みたいだけど成人である16歳になるまで王族はその正体を隠すらしい。よっぽど色々なことが有ったんだなぁ~

 そんな事を考えながらパラパラと本のページを捲っていると聞き覚えのある声が聞こえて来た


「あれ?コハクそんなところで何してるの?」

「アラン君。こんにちは、見ての通り此処で貴族に好奇の目で見られながら本を読んでいるよ」

「あぁ、なるほど…ゲネティスト教諭の初弟子だもんね。それは好奇の目で見られるか…」

「まったく。いい迷惑だよ。こっちは貴族でも何でもないただの平民なのに春休み返上で挨拶の仕方や礼儀作法を叩き込まれた上に顔も知らない第二王子の誕生日会に連れてこられるなんてどんな罰ゲームだよ‼って感じだよ。こっちはまだ可愛い弟の顔すら見てないのに…」


 はぁ~っと追加で溜息をつきアラン君に愚痴を言う。

 ちなみにパーティーを組む事になってから訓練等で皆で行動することも多くなり仲もよくなったので今ではアラン君もリスト君も私とリルをちゃん付けしないで呼んでくれるようになった。


「そういえば、ゲネティスト教諭との個人稽古ってどんな事やっているの?」


 私の気分を変えようとしてくれたのかアラン君は別の話題を振ってくる。本を閉じながら質問に答える。


師匠(せんせい)との稽古?魔法そっちのけで主に近接戦闘の稽古ばっかりだったよ…剣術、格闘術、槍術、斧の扱い方等など…最近では二刀流や弓術何て物も有ったなぁ…」

「…」


 遠い目をしながら今までやった近接戦闘の訓練の話をするとアラン君は、まずい、振る話題間違えたっというような顔をしていた。


「あ~、そうなんだぁ~。えっと…その本は何を読んでいたの?」

「これは単純に水属性の魔法に関する研究書だよ。やること無いし、本でも読んで時間潰そうと思って持って来たんだ」

「あ、それならこの城の図書室に行ってみない?此処で人目に晒されているよりは幾分ましだと思うけど?」

「え?でも、勝手動き回ったらお城の人に叱られるんじゃない?」

「さっきコハクが面白くなさそうな顔していたのを見ていたから先に陛下にお城の図書室に友達と行っても良いですか?って聞いて許可取ってあるから、大丈夫」


 なんというか…相変わらず根回しが良い…お城の図書室かぁ、そこに行けば魔王に関する本も有るかな?お言葉に甘えて連れて行ってもらおう。


「大丈夫ならお願いしようかな。」

「うん、じゃあ、行こう」


 アラン君と二人でパーティーの行われている大広間を抜け出し、私達はお城の図書室に向かって歩き出す。


「あ、そういえばコハク、ドレス姿可愛いね」


 廊下を歩いている途中でアラン君は唐突に私の恰好を褒めてくれた。


「ありがとう。私的には動きにくいし、早く着替えたいんだけどね。まぁ、馬子にも衣裳って奴だね。」

「フフフ、普段見ない格好だから少し驚いたよ」


 そんな他愛もない話しをしながら図書室に着いた。はぁ~、さすがお城図書室もなんか豪華そうだ。


「さぁ、着いたよ~。何か面白い本が有ると良いね~」


 ドアを開けてくれたアラン君にお礼を言いながら中に入りお目当ての本の有りそうな本棚まで行き本を物色する歴史書や伝説の書かれた本に一通り目を通してみるが奇妙なことに魔王に着いて書かれていそうなページが軒並み破られてしまっている。

 諦めずに本を探していると一冊だけ他の本に隠されるように置いてあるボロボロの本が目に入った。

 奥の方から引っ張り出し本のタイトルを口に出して読む


「勇者伝記?」


 あぁ、やっぱり勇者も居るんだぁ。でも、今お呼びなのは勇者じゃなくて魔王なんだよなぁ~。まぁ、勇者伝記でも多少は魔王の事が分かるかな?

 ボロボロの本がこれ以上痛まないように慎重にページを捲っていく。

 内容は簡単に言うと、勇者がどんな偉業を成し遂げたのか等が書かれている様だった。

 様だったというのは、ボロボロすぎて読むのが困難だったからだ。でも、この本のおかげで多少の収穫もあった。

 この本によれば勇者も魔王も十人ずついるらしいこと、勇者は異世界から召喚されるらしいこと、勇者は魔法と同じ土、雷、風、火、水、闇、光の七属性に暁、白夜、薄明が入り十人になり、魔王は七大罪、傲慢、嫉妬、暴食、怠惰、強欲、色欲、憤怒に勇者と同じ暁と白夜、薄明の代わりに黄昏が入ることなどが分かった。

 てか、十人も魔王が居るならますます私が魔王にならなければいけない理由が分からない。

 大体、魔王になってほしいって言うんならどの魔王になって欲しいかぐらい言っておけ‼って感じだよね。まぁ、言われても絶対にならないけどね。

 それにしても、勇者とか魔王ってこの世界にとって重要な事じゃないの?何でこの本以外でそれらの記述を見たことが無いんだろう?

 そんな事を考えながらため息を一つつき、勇者伝記を閉じまた別の本を探すのだった。








 

                             ☆


「はぁ~」


 右手で頬杖を突きながら一年前の戦闘で切り落とされ未だに血を流し続ける左手を凝視する。


「全く、状態異常になってるわけでもねえのに未だに血が止まらないってあの嬢ちゃん一体どういう切り方してくれたんだ?」


 はぁ~っとため息をつきながら左手から視線を外したところで、うちで一番古い付き合いの悪魔であるクロノスが声を掛けてきた。


「ご報告があります。我が魔王」

「う~す、クロどうした?」


 軽いノリでクロノスに応対し、報告とやらを聞く


「魔王様の剣の修理が一本終わったとの事でしたので持ってきました」


 この間の戦闘でボロボロになり、修理に出していた愛剣の一本を見せてくる。


「お、わりぃな、でも、その剣は暫らくお前が保管して次に魔王になる奴に渡してくれ。俺にはもう必要の無いものだからな」


 右手で湯呑を取り暁の坊主の作った緑茶に口を着ける。うん、うまい。


「呑気にお茶を飲んでいる場合ではないですよ‼詳細な説明をしてください‼」


 呑気に茶を啜っているとクロノスが怒りながら理由を求めてくる。おいおい、怒っても結果は変わらないぞぁ~


「詳細な説明も何も簡単な話だ。この前の戦闘で俺が固有魔法の最後の一回を使っちまったって話はしただろ?もうすぐインサニアが発動して狂化する。だからその剣は要らないって事だ」

「だからあの時すぐに我々を呼んでくだされば左手と右目を失って更に固有魔法の使用回数を使い切るようなことにはならなかったかもしれないと言ったではないですか‼」

「いやぁ~、俺としてはあの時にお前らを呼ばなくて良かったと思ってる。逃げた時に追跡スキルを使っても追跡できなかったし、あそこにお前らを呼んだら誰一人無事に帰って来れなかっただろうからな。そんな事になったら俺の次に魔王になる奴が困るだろ?」


 ズズーっと音を鳴らし湯呑の茶を啜りながらクロノスに自分の考えを言う。この世界に転生してから早600年、600年ぶりの緑茶はやっぱうめぇなぁ~

 実際、戦った感じとして家の幹部連中でもあの嬢ちゃんには敵わないだろう。あれは、少女の皮を被った何かだ。今でも相対した時の嫌な感じが消えない。


「それでも‼私は我が魔王にご自分の事だけを考えて頂きたかった…」

「クロ…お前にはわりぃが俺は長く生きた。そろそろ次の奴にバトンタッチする時だ。まぁ、今後の不安要素を取り除いてやることは出来なかったけどな」


 湯呑を置き口調を改めクロノスに一つの命令を与える


「クロ…いや、クロノス。お前に一つ命令を与える」

「…我が魔王の命とあれば何なりと…」

「そう不満そうな顔をするなって、良いか?俺が狂化したら俺の後を追え、狂化した魔王は次の魔王候補を襲う特性が有る。」

「要は狂化した我が魔王に襲われている次の魔王を確保しろという事ですか?」

「まぁ、そんなところだな。ただし、狂化した俺に殺されそうになっても助けるな。どのみち狂化した俺程度に殺されるようじゃ役に立たない。俺を殺して更に数日様子を見てからお前の判断でそいつを確保しろ。それが俺の最後の命令だ」

「…御意」

「頼んだぞ。それといい加減そのよそよそしい態度やめないか?いつもみたいに似非紳士面してる方がやりやすいぞ」

「そういうことであればいつも通りの対応に戻りましょう。我が魔王の最後の命確かに承りました。」


 いつもの口調で話しだすクロノスを見て一つ頷く。これで俺の後継の事は大丈夫だろう。問題は俺の後継者がどれぐらい残っているかだけどな。

 そんな事を考えつつ再び湯呑を持ったところでクロノスが喋りだす。


「ところで我が魔王、今まで溜めていた仕事は片付いたのですか?」


 湯呑を持つ手をピタリと止めて思わずクロノスから目をそらす。


「まさか終わってないとは申しませんよね?」


 …ヤバイ、マジ切れの笑顔だ。


「あぁ~うん、まぁ、それなりに…」

「今日中に片を着けないといけない案件が多数あったと記憶していますが?」

「あ~うん、そういえばあったかなぁ~、ちょっと傷やなんかの痛みで全然終わってないけど~」

「今日中に急いで処理してくださいね。もちろん寝ないで処理してください」


 穏やか~な笑顔で無慈悲に死刑宣告をしてくる悪魔を見ながら思わず言葉を発してしまう


「ちょ‼おま‼怪我人に寝ないで仕事しろって悪魔かよ」

「悪魔ですから、それにいつも通りで居ろと言ったのは我が魔王です。大体普段から少しずつでも終わらせていればそんな大変では無かったはずでは?」

「うん、はい、確かにその通りです」

「分かったのなら早く仕事してください」


 そんな無駄口を叩きながら俺は湯呑を置き仕事を始める。

 あ、あと俺の後継の奴の為に色々なところに根回ししといてやらないとなぁ~。

 あぁ、この穏やかな日常がもう少しだけ続いて欲しいと願わずにはいられない。



さて、コハクが魔王になるまでカウントダウンに入りました。

まだまだ幼少期は続きますがお付き合い頂ければ幸いです

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