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転移陣に散る赤・2

おはようございます。

第244話投稿させて頂きます。

今回も和登視点です。

楽しんで頂ければ幸いです。

 乾達4人が出て行ってから少ししてメイド長と早乙女さんが人数分の椅子を持って来てくれて俺達はそこに腰掛けコハクの帰りを待つ。

 湊瀬さんは乾について行ってネージュを探しに行ったらしく一緒には戻って来なかった。


「コハク様はまだ戻らないのか・・・今のような精神状態で何かあればそれこそ取り返しがつかない・・・リューンもメイド長も何故平気な顔で送り出せるんだ・・・」


 皆で腰掛けてコハクの帰りを待っている中、メルビスさんだけは落ち着きの無い熊の様にウロチョロウロチョロしており、メイド長に呆れたような視線を向けられている。


「メルビス宰相。少し落ち着きなさいな。貴方、リューンが生まれる時も卵から孵る時もそんな様子じゃなかったかしら?しかも先代様と同じ様に」


 待っている間にとお茶を淹れてくれながらそういうメイド長にメルビスさんはピタリと止まってから機械的に席に着き、大人しくなる。

 ・・・なんだろう・・・すげぇ面白れぇ・・・

 そんな事を思って言い合いをしているメルビスさんとメイド長を見ているとメルビスさんがジロリと俺の方を見て口を開く。


「余裕そうな顔をしておられますが宣言させて頂きましょう。ワト殿に子供が出来たらきっとワト殿も同じ事をしますよ。まぁ、私の場合は今は別の理由ですが・・・」


 ・・・それは今は関係なくない?

 不安を隠すために他愛もないくだらない話をしながら待っていると10分ぐらいたった所で乾と湊瀬さんがネージュを連れて戻って来る。

 ネージュは最初に会った時の天真爛漫さがなりを潜めて落ち込んだ様子で湊瀬さんに抱かれている。

 そんなネージュを皆で相手をして更に20分ほど経った所で複数の魔法陣の一つに変化が現れる。

 魔法陣の一つが光だし、その中に人の輪郭を作り出していく。


「コハク様‼」


 メルビスさん声を上げて駆け寄るが人影がコハクより少しだけ小さい事に気が付き足を止める。

 その脇をメイド長が駆け抜けて人影に近寄る。


「大丈夫ですか?」


 転移陣から現れた藍色の髪をツインテールにして不安げな表情を浮かべる少女に目線を合わせて顔に少しだけ笑みを浮かべながら訊ねる。


「は、はい。大丈夫です。えっと・・・貴女がメルビス様ですか?」


 少女が緊張した面持ちでメイド長に尋ねるとメイド長は首を振り口を開く。


「いいえ、わたくしはメリッサと申します。僭越ながらこの城でメイド長を任されております」


 メイド長が名乗ると少女は素直に頭を下げ、口を開く。


「間違えてしまい申し訳ありません。私の名前はアメリア・・・アメリア・フュリー・クラシアと申します。一応、クラシア王国の第二王女です・・・姉様・・・コハク様に城を襲撃した者から助けてもらいここに来ました。あね・・・コハク様からここに来たらメルビス様の言う事を聞くように言われていましたので間違えてしまいました」


 メイド長に謝り、国の事について良く勉強しているのか自分の身分と名前を言い辛そうに口にした少女はここに来た経緯は口にする。

 実際、少女・・・アメリアさんが自分の身分と名前を口にした際には俺達勇者組には何とも言えない空気が流れた。

 そんな俺達の反応に気付いているのかいないのかは分からないがメイド長とアメリアさんの話を聞いて彼女に近付いたメルビスさんが自己紹介を済ませ。

 アメリアさん、メイド長メルビスさんの三人で話をしだし、少ししてメイド長がアメリアさんの手を引いて俺達の方へと歩いて来ると俺達へと彼女の事を紹介してくれる。

 彼女は最初に名乗った通り、クラシア王国の第二王女でクラシア王国の中では珍しく魔族やその他の種族には偏見が無いらしくコハクと仲が良いらしい。

 メイド長達は、最初は彼女を用意した部屋へと通す予定だったようだが彼女の要望で此処に残る事になったらしい。

 一通り彼女の事と現状を説明してくれた後でメイド長はアメリアさんに俺達の事を説明すると彼女は目を大きく見開きガバリと俺達に向けて頭を下げて口を開く。


「貴方様方が勇者様でしたか・・・この度はわたくし達の国・・・国王や第一王女エリュナが先導し、皆様にひどい仕打ちをいたしまして誠に申し訳ありませんでした。クラシア王国の王族として皆様にお詫び申し上げます・・・」


 そう言って頭を下げる彼女に俺達は何とも言えない顔で顔を見合い代表して俺が口を開く。


「あー、アメリアさんだっけ?君の国を許すことは出来ないし許す気も無いけど君が気に病んで頭を下げる事はないよ。そもそも、君に至っては合うのも初めてなんだ。そんな君に謝罪を求めるほど狭量なつもりはないよ」

「お心遣いいただきありがとうございます・・・」


 頭を下げたまま動かない彼女にそう伝えるとアメリアさんはゆっくりと顔を上げて礼を言って来る。

 まだ余り接点はないが年齢とクラシア王国の国の人間にしてはしっかりした子らしい。

 そもそもがさっきも言った通りこの子とは初めて会う上に彼女に直接危害を加えられた訳でもない。寧ろコハクが助けに行ったという事はこの子は味方だろう・・・

 立花 葵の事も有るから警戒は続けるけどそれ以外で彼女に何かを言うつもりは今のところない。恐らく他の皆も一緒だろう。

 俺達がそんな話をしている中でメイド長はメルビスさんの座っていた椅子を俺達の近くへと持って来て彼女を座らせて再びコハク達が戻るのを待つ。

 そんなやり取りが有ってから更に15分程が経った時に再び先程とは違う魔法陣が輝く。

 先程の様にメルビスさんが近くに寄ろうとした瞬間、アメリアさんが来た時とは違い何かが縺れながら光から飛び出し、壁へとぶつかる。


「ぐふ‼」


 低い男の声が壁に叩きつけられた瞬間に響き、4人の人が床に倒れる。


「お婆様‼姉様‼」

「コハク‼」

「「坂月先輩‼」」

「神薙先生」


 各々が口々に現れた人物を呼び、4人に駆け寄ろうとする。


「く・・・レティ‼大丈夫⁉」


 騒がしくなった周囲にコハクが最初に身を起こし、近くの腹部が赤く染めっている女性に向けて声を掛ける。

 その様子にふと足を止め、周囲を確認すると先程までと違い転移陣に真っ赤な液体が飛び散っている。

 コハクが呼び掛けた事によって女性の方にも意識が戻ったのかゆっくりと目を開き、苦しそうに口を開く。


「目は・・・覚めて・・・いるから・・・大丈夫よ・・・貴女は・・・無事?」


 明らかに無事ではない出血をしている女性がそう言うとコハクは顔を歪めながら口を開く。


「私は貴女のお陰で無事だよ。あまり喋らないで!直ぐにポーションを使うから・・・」


 そう言うとコハクはアイテムボックスからポーションを複数取り出し、女性の傷口に掛けたり女性に飲ませたりするが傷口は俺達にポーションを使う時と違い一向に塞がる様子を見せない。


「なんで・・・?」


 ポーションが効かない事に動揺するコハクに向けて女性はゆっくりと口を開く。


「私の・・・治療を・・・する必要は・・・ないわ・・・それより・・・アメリアは・・・近くに・・・いる?」

「お婆様‼」


 女性の言葉に反応してアメリアさんが止めていた足を動かして女性へと駆け寄る。

 その姿を見て女性は安心したように笑みを浮かべて口を開く。


「アメリア・・・そこに・・・居たのね・・・ごめ・・・んなさい・・・ね・・・怖い・・・思い・・・をさせて・・・しまって・・・」


 アメリアさんを見てそう謝罪しながら女性はゆっくりと目を閉じて行く。


「メイド長‼ポーションを‼メルビス‼医療班を呼んで‼」


 手を真っ赤に染めながらそう叫ぶコハクの指示を聞き、メイド長とメルビスさんは部屋を飛び出して行った。


此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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