襲撃者・3
おはようございます。
第242話投稿させて頂きます。
活動報告でも報告させて頂きましたが前回は私の体調不良で投稿できず申し訳ありませんでした。
今回は第三者視点です。
楽しんで頂ければ幸いです。
「はあ‼」
気合共に武器を振り上げ襲い掛かって来る敵を両断し構え直して神薙 賢治は周囲を再び警戒する。
武器を構えながらちらりと視線を動かすと少し離れた所で本来なら護衛対象である人物が自分と同じ勇者の少女を守りながら襲撃者を切り伏せる。
何故、護衛対象に少女・・・坂月 命が守られているのかというと坂月は自身が放った攻撃で襲撃者・・・人が死んでしまった事にショックを受け戦意を喪失してしまっていた。
この世界では勇者と言われ前線に駆り出される事も多くあったが魔物を殺す覚悟は持てっても若干18歳の少女に人を殺す覚悟は出来ておらず一人切り伏せた時点で戦意を喪失してしまった。
(坂月さんはもう戦えませんね・・・相手がどのくらい居るか分からない以上今のままでは
ジリ貧ですね・・・)
現状を再確認した神薙が武器を構えて向かってくる敵の攻撃をいなしていると近場の敵から嬉しくない会話が聞こえて来る。
「城の方は目的を達した。城に行った者達と町の者達も直ぐに此方に合流すると連絡が来た」
報告を聞いたウルミという武器を使う隊長格の襲撃者は小さく舌打ちすると報告に来た男に指示を出し、自分も武器を構え直してレティシアの方へと駆けて行く。
「レティシア様‼坂月さん‼」
自分に向かって来る敵を切り伏せ、急いで離れた所に居る二人に駆け寄ろうとするが行先に更に邪魔な襲撃者が立ち塞がる。
「邪魔です‼」
立ち塞がる襲撃者を切り伏せると切り伏せた者とは別の敵が更に立ち塞がる。
(次から次へと・・・これでは間に合わない・・・)
内心でイラつきながら走ってはいるが立ち塞がる敵に阻まれレティシアの所へたどり着けずウルミを持つ男が手を振り上げレティシアへと向けてその凶刃を向ける。
「何⁉」
男の凶刃がレティシアへと届く寸前、神薙が奥の手を使おうとするのとほぼ同時に三つに別れた刃を持つ短剣がウルミの刃を地面に縫い付け、男が驚愕の声を上げる。
驚き足を止めた男に緑色に所々に赤い染みの付いたフーデットケープを着た小柄な人影が近づき男の腹を蹴り飛ばす。
「ぐぁ‼」
男が蹴り飛ばされて吹き飛んで行くのと同時に複数の魔法を使い神薙の足止めをしていた襲撃者達を拘束して小柄な人影は振り向き、短剣を回収してレティシア達の近くに行き、神薙に向けて声を掛ける。
「神薙さん‼撤退します。走って‼」
へたり込んでしまっている坂月を立たせ、レティシアと坂月の手を取りドアの方へと向けて走る。
その姿を見て神薙も慌てて後を追う。
「コハクさんですよね?」
走る三人に追い付き後ろを走りながら神薙は小さな声で緑色のケープ人物に話しかけると
緑色のケープ人物が振り返り口を開く。
「正解です神薙さん。走りながらで申し訳ないですけど現状は?」
走りながら現状を報告し合い離宮の部屋の一室の中へと入る。
「まさかそんな事になっていたなんて・・・良かった・・・アメリアを助けてくれたのね・・・ありがとう。コハク」
アメリアに状態に対するコハクからの報告にレティシアは顔を青くして聞いていたが無事だと聞いてほっとした様子でコハクに礼を言う。
「レティ、お礼は後、今はここから離脱することが先決だよ」
ドアに家具を引き摺ってきて簡単なバリケードを設置してからコハクはアイテムボックスから魔法陣の書かれた紙を取り出し、設置する。
「焼失型の転移陣を起動させたからさっさと移動しよう。込み入った話はまた後で」
そう言うと転移陣と呼んでいた魔法陣を発動させると中に入るように促す。
コハクの指示に従い魔法陣に入ろうとすると先程から黙っている坂月が暗い顔のまま口を開く。
「私行けません・・・人を殺して皆に合わせる顔が有りません・・・」
襲撃者とはいえ先程人を殺したことがまだ尾を引いているのか坂月はブルブルと体を震わせながらそう口にする。
そんな坂月を見てコハクは坂月に近付くと声を掛ける。
「坂月さん。本当なら貴女には今すぐにでもケアが必要なんだろうけど今ここは安全じゃなく時間がない。ここに残っただけ危険度が高くなる。悪いけど抵抗するのなら無理やりにでも連れて行く」
有無を言わせない口調で坂月の手を取り、コハクは転移陣へと歩いて行く。
坂月も多少の抵抗を見せるがコハクはそんなことは意にも介さず坂月を引き摺って行く。
「二人も早くこっちに・・・「コハク‼ミコトさん‼危ない‼」」
四人で同時に転移陣に入る為にコハクが神薙とレティシアを呼んでいる途中でレティシアが悲鳴に近い叫びを上げて駆る。
それと同時に窓が割れ、襲撃者の一員が距離を詰める。
「あは♪やっぱり貴女を逃すのは得策じゃないね♪」
そんな声と共に真っ赤な筋を一つ空中に描き、衝撃で四人は縺れる様に吹き飛ばされ転移陣の中へと消えていく。
「あは♪逃げられちゃった♪」
役目を終え、燃え尽きる魔法陣を見ながら標的に逃げられたというのにさほど残念そうな様子もなく楽しそうにそう言うと襲撃者は未だにバリケードを壊そうと奮闘している者達へと撤退の指示を出す為に歩き出した。
此処までの読了ありがとうございました。
次回もごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




