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お茶会の招待状

皆さんこんばんは、令和最初の投稿をさせていただきます。

楽しんでいただけたら幸いです。

「ほぉ~、やっとボッチを脱出できたんですか、良かったじゃないですか」


 いつもの稽古後に疲れて床に突っ伏している私から昨日の出来事を聞き、師匠(せんせい)が息も切らさずにそんな事を言う。

 くそ…長時間一緒に稽古をしたのに息一つ上げないなんて化け物め…


「ええ…思いもしなかったので正直言って驚きました…というか、師匠(せんせい)は昨日の時点で知っていましたよね?何で教えてくれなかったんですか?」


 返答におおよその見当はついている物の聞かずにはいられない。だって、言っておけば済むことなんだもん。


「そんなの決まっているじゃないですか貴女を驚かせるためのサプラ~イズですよ」


 あ~ハイハイ、想像通りの反応ありがとうございます。何処のKHだよ…


「ああ、そうでした。昨日貴女宛の手紙を預かっていたんでした。」


 そう言うとポケットから一通の封筒を取り出し渡してくる。

 私宛の手紙?なんかあまり良い物じゃない気がする…

 そんな事を考えながら師匠(せんせい)から手紙を受け取り内容を確認する。


「えっと…、《貴殿を次の休息日に薔薇園にて開催するお茶会に招待します。ぜひご参加ください。Ps よろしければ何かお菓子をご持参ください》って書いてありますね。次の休息日って明日ですけど、これって行かなきゃダメですかね?」


 ぶっちゃけ、貴族の誰かからの呼出しと思われるこの招待状を見なかった事にしたいと思い。つい、師匠(せんせい)に相談してしまった。


「まぁ、常識的に考えて行ったほうが良いでしょうねぇ。別に悪い出会いとは限りませんしね。」

「ですよねぇ~。それにしても追伸で何気にお菓子を要求されているんですけど、普通お茶会ってお菓子とか用意されていますよね?」


 なぜ、この招待状の差出人は招待している人間にお菓子を要求しているんだろうか?


「普通は用意してありますねぇ~。平民の子が普段どんなお菓子を食べているか興味があるんじゃないですか?で?行くんですか?」

「まぁ、行くしかないですよね。お菓子どうしようかな…」

「作れるんですから作ればいいじゃないですか。」

「次の休息日なので材料が無いんですよ。」

「どんなものが必要か言ってくれれば買ってきてあげますよ?」

「その対価は何ですか?」


 この先生がタダで動いてくれるわけがない。きっと何かしらの対価を要求されるんだろうなぁ~。


「別に何も要らないですが、そうですねぇ~。持っていくお菓子と同じものを私にも用意して貰うというのはどうでしょうか?」


 おや?意外にも簡単な要求だ。それなら頼んでも良いかな?


「分かりました。それじゃあ、お願いします。」


 そうしてその日は、師匠(せんせい)にお菓子に使う材料を一通り頼んでから私は部屋に戻ってお茶会当日の準備をすることにした。





 さて、嫌だ、嫌だと思っていると時間という物は早く進む物で私は今お菓子を持って学校の薔薇園の前に来ている。

 はぁ~、手元のリコの実のパイは綺麗に美味しそうに焼けたのにこれからの事を思うと気が重い…

 やっぱりこのまま招待状は見なかった事にしてリルと二人でこのパイを食べちゃおうかなどと言う考えまで浮かんでくる。


「まぁ、此処でこんな事考えていてもしょうがないか…」


 ぼそりと独り言を呟き、薔薇園の中を進んで行くと開けた場所に出る。そこには、前に案内してもらった時には無かったイスとテーブルが有り私をここに呼び出した誰かが座っていた。


「あ、良かった。ちゃんと来てくれた。来てくれなかったらどうしようかと思ったよ。」


 私に気づきそんな事を言いながらニコニコと手を振っている彼の顔には見覚えがあった。

 テトがデイル達ともめている時に私が声を掛けた男の子だ。

 よく見るとルガディン君も近くに座っている。

 此処はとりあえず挨拶をした方が良いかな?


「えっと…お招きいただきありがとうございます。」

「あ、そんな堅苦しい挨拶は良いからこっちに来て座りなよ」


 挨拶をしてお辞儀をしようとするととても砕けた感じで座るように促されてしまった。

 あれ?貴族ってこんなにフレンドリーなものなの?


「あ、はい、失礼します。それとこれ頼まれていたお菓子です。」


 座ってからテーブルの上に持ってきたお菓子を置く。


「わぁ、ありがとう。これは作ってくれたの?」

「はい、作ってきました。リコの実のパイです。お口に合いますかどうかわかりませんが…」

「やった。ストリクサ、これ切り分けてお茶と一緒に持ってきてくれる?」

「かしこまりました」


 私からお菓子を受け取り後ろに居る執事さんに渡す。うん、なんかすごく貴族っぽい気がする。


「さて、そういえば自己紹介がまだだったよね?僕は、アラン・テルト。一応、貴族です。こっちの彼は顔と家名は知っているよね。僕の友人のリスト・ルガディン」

「この前は、君に面倒ごとを押し付けてしまってすみませんでした」

「いえ、こちらこそ決闘の審判やなんかをしてくれて助かりました。えっと、じゃあ、私の番ですね。私はコハクです。家名も無い。ただのコハクです」

「お待たせしました」


 私達が一通り自己紹介を終えたところでお茶と私の作ったお菓子を持ってさっきの執事さんが来た。


「ちょうどお茶も来たし暖かい内に頂こうよ」

「え、あ、頂きます」


 アラン君の言葉で未だに此処に呼ばれた理由が分からないままお茶に口を着ける。

 うん、このお茶良い香りですごくおいしい。


「…おいしい…」

「気に入ってもらえたみたいで良かったよ。このパイもすごくおいしいね。この前のお菓子をリストが急いで食べちゃったのも分かるよ」

「…すみません」


 アラン君の言葉にルガルディン君が申し訳なさそうに謝っている。蜂蜜パイはルガディン君もおいしく食べてくれたようだ良かった良かった。

 さて、そろそろなんで私が此処に呼ばれたのかの本題に入ろう。この前の決闘の労いってわけじゃないだろうしね。


「あの、そろそろなんで私が此処に呼ばれたのかを教えて頂いても宜しいですか?」

「その前にまずはその敬語やめようか?同い年だし僕たちは気にしないから」


 いやいやいや、そういうわけにはいかないでしょ!?こっちは平民だよ!?貴方は貴族だよ!?下手に喋ったらあの世逝きだよ!?私はまだ三度目の人生なんて送りたくないよ!?なんでこの世界の貴族は極端に嫌な奴か極端にフレンドリーな人しかいないの!?


「いや、でも私只の平民ですし…」

「え?でも、テトは普通に話してくれるよ?」


 テト…命知らずな…


「とにかく僕達が気にしないって言っているんだから普通に話してくれて良いよ。名前も様とか要らないからね」


 う~ん、相手が良いって言うならお言葉に甘えさせてもらおうかな…多分、アラン君は引かないだろうし…


「じゃあ、そうさせて貰うね。改めて聞くけどアラン君達はなんで私をここに呼んだの?」


 口調をタメ口にし、改めて同じ質問をする。ぶっちゃけ、相手の意図が全然分からない


「あ、そうだね。単刀直入に言おうか。コハクちゃん、僕達とパーティーを組まない?」

「パーティー?」

「うん、来年二年生になったら魔物の討伐の実技なんかが有るよね。その授業で一緒に行動するパーティーを僕とリストとテトと組まない?もちろんミューウェルクさんも一緒に」


 あぁ~、リルと友達になる前は一人でやろうと思っていたあの授業か、申し出は大変有難いけど幾つかの疑問は残るし、まだ彼らの事を私はよく知らない。


「申し出は嬉しいけど、幾つか質問させて、私をパーティーに加えて貴方達にはどんなメリットが有るの?何で私をパーティーに誘おうと思ったの?七属性が使えて戦力になると思ったから誘ったの?」


 少しだけ意地の悪い質問の仕方をしてみる。もし、純粋に戦力とだけしか見られていないのならこの話は断ろう。


「え?違うよ。まぁ、確かに戦力面でも期待はしているけど、一番の理由は君達と組んだら面白そうだなぁっと思ったからだよ」

「ちょっと待って、そんな理由で碌に知りもしない私をパーティーに誘ったの!?」


 アラン君の言葉に怪訝な顔をしながら言った言葉に対して返された言葉に思わず驚く。


「別に碌に知らなくないよ~。この数日で徹底的に調べ上げたからね」


 そう言ったアラン君の前にさっきの執事さんが一冊のノートと大量の紙の束を置く。

 アラン君はノートを開くと声に出して読み始めた。


「え~と、コハク・リステナさん。リステナ村の村長さんの娘さんで家名の部分は村の代表の親族を現しているから正式な場以外では名乗ってないみたいだね。誕生日は1の月の31日で趣味は料理と読書、読書に関しては神話や学術書等色んなジャンルの物を読んでいるみたいだね。利き腕は左、機嫌が良い時には歌を歌いながら作業する癖が有る。家族構成はお父さん、お母さん、コハクさんの三人、近い内に弟さんか妹さんが生まれる予定みたいだね。おめでとう」

「へ?あ、ありがとう・・・ちょ、ちょっと待って‼私その情報知らない‼」


 思わず立ち上がりなりながらアラン君に問いかける。


「君がこの学校に入学してからご懐妊されたみたいだね。知らないのも当然だよ。」

「というか何で貴方が私の知らない事を知っているの!?」

「言ったでしょ~、徹底的に調べ上げたって、ほら、まだ君に関する事で君が知らない事なんか沢山あるんだから座って、座って」

「コハクさん。すまない。この人はこういう人なんだ」


 カラカラと楽しそうに笑うアラン君の隣でルガディン君が諦めているような顔で謝罪してくる。

 ていうか、今、私に関する事で私が知らない事が沢山あるって言っていたけどまだ何かあるの…?

 席に着き一度落ち着くために紅茶の入ったカップに手を伸ばすと再びアラン君は再びノートを読み始める


「じゃあ、話を戻すね。村での交友関係は結構広かったんだね。主に仲が良かったのは幼馴染のユユさん、ムウ君、テトの三人、一年前に君を含む四人で森に入った所イビルベア率いるブラットベアの群れに遭遇、その際君だけが残り辛くもイビルベアを一匹駆除するも隠れていたもう一匹に深手を負わされてしまった所を現師匠であるゲネディスト教諭に助けられる。その際、学校への勧誘を受けそれに応じる。ここまでが村であったことだよね?」


 彼の言葉にこくりと頷く。まぁ、正確に言うと私が勧誘受けたのは二回だし、熊も私がやられた一匹を除いて全部私が処理したし、師匠に助けられたせいで理不尽な借金が発生したという事実が有るのだが、それは私も師匠も人には言わない。


「学校に入学してからは、ゲネディスト教諭の弟子という事や最初の方の授業で炎系の魔法を教えているクレバス教諭を教諭が想像していた以上の威力の魔法で黙らせたりしたせいで交友関係は全く無く今回の件でミューウェルクさんと初めて友達になった。しかし、実際はクレバス教諭を嫌う生徒の間では見た目の綺麗さやちょっとした時に見せる優しさで結構人気が有る。一部の女子の間では慕う会なんて物も有るみたいだね」


 ちょっ、とまと、何?慕う会ってその情報も私知らない!?てか、一貴族が平民の娘を慕う会って何なのさ!?


「君と同じ部屋になりたくて結構申請書が来ていたみたいだね。全部ゲネティスト教諭が拒否していたみたいだけど。ちなみにこの間の一件で一部の生徒からはヘプタの魔王というあだ名で呼ばれている。二年の授業でも、戦力面で見ている子や慕う会の子達から大量にパーティー申請が来ているね。当然、デイルやそのお付きもミューウェルクさんや君の名前を書いてパーティー申請を行っていて今一番パーティーを組まされる可能性高いみたいだね。以上が僕が調べ上げた事だよ」


 パタンっとノートを閉じ笑顔でカップを取りながら調査結果の報告を終えるアラン君に多少引きつつ、色々と突っ込みたいところが多々有るが一つだけ質問する。


「調査結果がそのノート一冊ならひょっとしてその書類の山は…」

「うん、君に来ているパーティー申請の書類だね」

「で、その中で私が組まされるので有力なのがあのデイルなの?」

「うん、腐っても侯爵家だからね。一番我儘が通りやすいんだよ。君やミューウェルクさんが良いなら何も手を出さないけど彼らとは組みたくないんじゃない?」

「その侯爵家の我儘を上から塗りつぶせるってことは、貴方は公爵家の人間なんだね?」

「うん、まぁ、そんなところかな。それでどうする?」

「はぁ~、どうするも何もこれってもう詰みの状態じゃない?リルにも相談して彼女が良いなら私からも貴方達とのパーティー申請をお願いしたいわ」

「あ、それなら大丈夫。ミューウェルクさんには昨日の内に話して君が良いって言ったらお願いしますって返事をもう貰っているよ」


 …先に言ってよ。てか、昨日リルには言っているんだったら私にも昨日の内に言えばよかったのに…


「じゃあ、パーティーの件は了承して貰ったって思って良いのかな?二年になったらよろしくね。あと、友達としてもよろしく‼」

「はぁ~、なんか完全に外堀を埋められていた気がするよ。此方こそよろしくお願いします」


 こうしてこの学校で初めての友達が出来た二日後に私に友達兼パーティーメンバーが出来たのだった。


次回はちょっと特殊な形になると思います


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