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皇帝と師匠

おはようございます。

第236話投稿させて頂きます。

お気に入り登録ありがとうございます。とても励みになります

今回も第三者視点で帝国サイドです。

楽しんで頂ければ幸いです。

 アルバルトと宰相のコックはバタバタと廊下を走り、討伐隊の待つ謁見の間の扉を大きな音を立てて開く。

 バンと大きな音が鳴り、扉が開き、待機させられていた討伐軍の生き残り達が驚いた様子でアルバルト達の方を見る。

 送り出した時よりも大幅に数が減っているがアルバルトは気にも留めずに玉座へと歩く。


「あは♪うっさ♪」


 唯一、エリス・ケールだけがアルバルトが傍を通った時に文句を口にするが上機嫌なアルバルトは師のその文句すら聞き流して玉座へと付き、口を開く。


「皆の者‼よくぞ生きて戻って来た‼脅威と魔族から国を救った事大儀であったぞ‼」


 アルバルトが尊大な態度でそう伝えるとエリス・ケール以外の兵達は臣下の礼を返し、次の言葉を待つ。

 兵士達の態度に更に気分を良くしたアルバルトは言葉を続ける。


「犠牲も多かったそうだが、よくぞ戻って来た。貴様らには報酬も用意してある。次の戦に備えて貴様らは休むと良い。我が師とハヤシバ、カシワバ、オオカタにはまだ話が有るので残ってくれ。コック、兵に飯と報酬を渡してやれ」


 アルバルトの言葉でエリス、林葉、柏葉、大方を残して他の兵達が退出するとアルバルトは足を組みエリス以外の者達を見下しながら口を開く。


「それで?予の兵があそこまで減っている理由と予の課した命令を実行出来なかった理由を聞こうか?」


 コックから報告を聞き、魔王の死体が見られると期待していたアルバルトだが謁見の間に入り、討伐に向かわせた自分の兵が極端に減っている上に銃を考案したバーガンまでもがこの場に居ない事で最初に感じていた高揚感は失せ、怒りと落胆が込み上げて来ていた。

 それでも兵達の手前、何とか怒りを抑え込み兵達の士気を上げたのは彼等に責任を取らせる訳にはいかない上にまだまだ役立って貰わなければいけないからだ。だが、エリス以外の残した者達は違う。

 彼らは曲がりなりにも討伐軍を率いさせた責任者であり、半数以上をそれも虎の子の銃兵と責任者のバーガンまでもを失うような事態を起こして置いてお咎め無しという訳にはいかない。

 そんな無言の圧力を感じているのか林葉が顔を青くして口を開く。

 別に林葉達もアルバルトの事が怖い訳ではないがアルバルトの持つ《オロチ》や帝国の軍との戦闘や自分達に掛かっている呪いの事を考えると素直に怯えた様子で謝罪をすれば面倒事が少なくて済む為、演技を混ぜて謝罪を行う。


「も、申し訳ありません・・・途中までは何も問題は無かったのですが・・・黄昏の魔王の乱入という予想外の出来事が起こり・・・陛下からの任務を遂行中に襲撃され部隊も任務も失敗してしまいました・・・どうかお許しください・・・どうか我々にもう一度チャンスを頂けないでしょうか・・・」

「ご、ごめんなさい」

「すまねぇ・・・」


 頭を垂れて謝る三人を、見下しながら考える。


(フン、対して怯えてもいないくせに白々しい・・・だが、演技でも自ら罰を求めるのなら扱いやすいか)


 そこまでの事を考えてからアルバルトは先程まで話していたエリュナとの話を思い出しながら林葉達に対しての罰を口にする。


「そうか、ならば貴様らにチャンスをやろう。今から一週間後、クラシア王国である作戦が決行される貴様らはそこに実行部隊として赴け、成功すれば今回の失敗はチャラにしてやる」

「「「・・・はっ‼必ずや成功させて見せます‼」」」


 三人が声を揃えて返事をしたのを確認し、アルバルトは一つ頷くと謁見の間に来た本当の理由を思い出し、エリスを見て口を開く。


「さて、話は変わるが我が師よ。先駆けで魔王を一人討ったとの報告を聞いているがそれは真か?」


 師が相手をした以上、コックの持ってきた情報が真実だと解っていながらもエリスへと確認を取る。

 確認をするとエリスは何時もの笑みを崩さずに口を開く。


「うん♪倒したよ♪」

「誰だ‼誰を討ったのだ‼」


 あまりにサラリと言うエリスに多少のイラつきを覚えながら問い詰める。


「うん?憤怒の魔王だよ♪」

「・・・そうか、憤怒の魔王か・・・黄昏の魔王ではなかったのだな・・・」

「それが君に何の関係が有るのかな?」


 殺したのが憤怒の魔王だと知り目に見えて落胆するアルバルトに少しだけイラっとした様子で問いかけるとアルバルトは顔を上げて口を開く。


「あぁ。いや。少し意外な魔王の名が出たので驚いただけだ。して、我が師よ。憤怒の魔王の死体は一体どこに?持って来ているのですよね?」


 エリスから発せられた多少の殺気に焦りながらも見せしめの為に死体の在りかを問うとその言葉を聞いて膝をついている林葉が顔を顰める。

 その林葉の様子を疑問に思い問いかけようとする前にエリスが何時もの様子で口を開く。


「うん?普通に君達に解らない所に埋めて弔ったよ♪」

「どういうことですか‼あれは見せしめに使うのが普通ですよ‼」


 エリスの言葉に驚き声を荒げるアルバルトにエリスは何でもない様子で口を開く。


「あは♪それはお前達の理屈だろ♪それに彼を殺したのは君達じゃない僕だ♪彼の死体をどうしようが僕の勝手だろ♪他人の成果を奪うなよ♪」


 エリスの小馬鹿にしたような言葉がアルバルトに投げかけられるとアルバルトは顔を真っ赤にして口を開く。


「黙れ‼貴女が我が軍に付いて行き得た成果ならそれは我が国の成果だ‼ハヤシバ‼貴様は何処に埋められているのか知っているのだろう‼即刻死体を掘り起こして・・・」


 激昂し、林葉に憤怒の魔王の死体を掘り起こして来いと命令を出そうとした所でアルバルトの首元に黒い刃が突き付けられる。

 眼だけを動かし剣を突き付けているエリスの事を見るといつもの笑みを消し、苛立たし気に口を開く。


「お前に勝手をする権利はないと言っているだろう?これ以上僕を怒らせるなら今すぐその首を飛ばしてやる」

「わ、わかった。すまなかった我が師よ・・・」


 ドスの効いた声音でそう言うエリスに向けて不本意ながらの謝罪をするとエリスはその顔に何時もの笑みを戻し、剣を引いて口を開く。


「あは♪最初からそう言っていれば良いんだよ♪それじゃあ、僕はそろそろ行くよ♪くれぐれも余計な事はするなよ♪」


 楽し気にそう言いクルリと後ろを向いてエリスは歩き出す。


「大体にして自分の為に戦争を起こす奴と自分の大切な者の為に動ける人間なら比べる余地もないだろうよ」


 小さな声で呟かれたその声はその場にいる誰の耳にも届くことは無かった。


此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ちいただければ幸いです。

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