黄金の乱入者
おはようございます。
第226話投稿させて頂きます。
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『くそ‼動きが速い‼』
肉の塊を突き破ってグロテスクな狼に向けて武器を振るうフェルが毒づきながら刃を翻して次の攻撃を仕掛けるが第七の厄災はそれも嘲笑うかの様にヒラリと躱し、尻尾の触手を周囲に爪をフェルへと向けて反撃してくる。
ギリギリの所で尻尾の触手を避け再び攻撃を仕掛けようとすると第七の厄災が遠吠えをして血の槍を飛ばして攻撃をしてくる。
『くそ‼‼避けられない⁉』
『グワァ‼』
『ガァ‥‥』
俺はギリギリで敵の攻撃を避ける事が出来たが避けられなかった人も多かったらしく通信機から複数人の苦痛の声が聞こえてくる。
『毒を受けた者は直ぐに後方へと下がれ‼無理をするな‼』
クリストさんの指示が聞こえて来て複数人の人がキャンプ地のある方へと駆け出して行く。
第七の厄災は撤退する人達を逃がす気は無いらしく再び血の槍を形成すると逃げる人達にも向けて血の槍を飛ばす。
『今、戻りました‼』
そんな声と共に複数の矢が逃げる人達に向かっていた血の槍と俺達に向かってきた触手を射抜く。
『うへ・・・なんですか?あれ?さっきまでと全然に姿が違うじゃないですか‼』
走って戻ってきたのか少しだけ息を切らした湊瀬さんが心底嫌そうな声音でそう言うと弓に矢を番えてフェルに向かっていた触手に向けて放つ。
湊瀬さん加わったその後も俺達は素早い敵に向けて決定打を与えられないまま、一人また一人と毒や怪我で戦線を離脱する人が増えて行き、戦いがどんどん不利になっていく。
そんな中で第七の厄災が一際醜悪な笑みを口元に浮かべ、再び大きく遠吠えをする。
『血の槍だ‼全員避けろ‼』
今の形態に為ってから血の槍を飛ばす前に頻繁に行ってくる動作を見てフェルが指示を出すと第七の厄災はこちらを嘲笑うかのように嗤う。
『『『『『『何⁉』』』』』』
当然の如く血の槍が来ると思い、回避行動に移ろうとしていた俺達の足元には何時の間に来ていたのか第七の厄災の肉塊が溶けた様にドロドロの状態になって足に纏わり付く。
『皆さん⁉大丈夫ですか⁉』
射手ゆえに少し離れていた湊瀬さんから通信が入り、援護射撃が第七の厄災に向けて飛んで来る。
俺達を拘束して高を括っていたのか続けて血の槍を生成しようとしていた第七の厄災は鬱陶しそうに湊瀬さんを睨みつけ飛んできた矢を尻尾の触手を伸ばして攻撃を行う。
「‼」
湊瀬さんは高速で迫る触手を何とか避けるがバランスを崩して転んでしまいその体に肉片が絡みつき動きを封じる。
湊瀬さんが現状で面倒だと感じたのか第七の厄災は再び高速の触手を湊瀬さんに向けて放つ。
『『夢ちゃん‼』』
転んでしまった湊瀬さんに向けて戌夜と早乙女さんが声を上げる。
俺も含めて全員が湊瀬さんに迫る触手を何とかしようとするが足を固定して来る肉片はビクともしない。
最悪の結果がもうすぐ実現してしまうという時に通信機から声が聞こえる。
『若い者達をこれ以上やらせはせんぞ‼』
触手が湊瀬さんに届くまであと数cmという所でグッと触手が何かに引っ張られたようにしての動きを止める。
『やっと捕まえたぞ‼この化け物め‼貴様は私等と共に消えろ‼』
第七の厄災の方に目を向ける鎧の至る所が破損しているレクセウスさんがと様々な部位を欠損した状態の不死の騎士団の人達が全力で第七の厄災を抑え込んでいる。
『暁の魔王様‼我等と共にこの怪物へと引導を渡してくだされ‼』
そう言いながら持っている大剣で第七の厄災の胴体を突き刺し、地面に縫い付ける。
レクセウスさんと不死の騎士団の人達が隙を作ってくれている間に拘束を解いたフェルが悔しそうな声音で応答する。
『・・・すまねえ。あんたらの行動とコハクに対する忠誠心に最大限の敬意を・・・《日輪》、契約に従い。我が呼びかけに答え、その真なる姿で我が敵を打て』
レクセウスさんの通信に答えると第六の厄災戦でも聞いた《日輪》の真の姿を開放する言葉を口にすると憤怒の国で感じた程ではないが周囲の温度が上昇し、フェルが炎の剣を不死の騎士団の人達と第七の厄災に向けて振り下ろす。
『コハク様に伝えてくだされ。お体の回復を心より願っております。我等は一足先に永遠の暇を頂戴いたします。ワト殿、コハク様の事を頼みましたぞ』
レクセウスさんが俺だけに通信でそう伝えて来たのと同時にフェルの攻撃がレクセウスさん達を包み込み跡形もなく消し飛ばす。
「・・・必ず」
その光景を何も出来ずに見ながら最早返事の返って来ない相手に向けて俺は一人レクセウスさんへと返事をする。
『各員‼即時撤退する‼急げ‼』
作戦時間の終了が近いために第七の厄災で失った人達の事を悲しむ暇もなく撤退をする為に馬から降りた場所に向けて走り出そうとした所で周囲にパキリと何かが割れる音が鳴り響き、地面の下から第七の厄災が這い出して来る。
———嘘だろ・・・まだ生きてるのかよ‼
レクセウスさん達の死を嘲笑うかのように姿を現した第七の厄災は流石に無傷では無かったらしく足の一本と尻尾の触手を全て失った姿で忌々しそうに俺達の事を見て唸り声を上げると後ろを向いて逃げの体制を見せる。
『逃がすな‼殺せぇ‼』
刃を形成している炎が弱々しくなってしまった《日輪》を構えて駆けだしながらフェルが全員に向けて指示を出すが撤退の準備を始めていた俺達は直ぐには動き出せず第七の厄災は走り出そうと残った三本の足と胴体から新たに生やして足替わりにした触手に力を籠める。
「畜生‼逃がすかぁぁぁぁぁぁぁ‼」
悔しまぎれに走りながら俺が怒鳴ったのと同時に第七の厄災が走り出す。
「あは♪あの肉塊の中にこんな本体が入っていたんだぁ♪」
そのまま速度を上げて走り去ろうとする第七の厄災を追いかけているとあの日、会議室で立花さんから発せられたのと同じ口調の声が聞こえて来て第七の厄災が蹴り飛ばされ真横に吹き飛ぶ。
何が起きたのか分からないのは周囲の皆も第七の厄災も同じなのか驚き、足を止める。
黄金の髪に黄金の瞳の乱入者はこの場に似つかわしくない楽し気な声音で俺達にも聞こえるように喋り始める。
「あは♪あの子がいないから期待して無かったけど此処まで出来れば上出来だね♪」
そう言うと片手に持つ真っ黒な片手剣をクルリと回して更に言葉を続ける。
「この場に居る勇者の子達は初めましてだね♪僕の名前はエリス・ケール♪君たちの最大の敵だよん♪」
そう言って目が笑っていない笑顔で自己紹介を終えると第七の厄災へと武器を向けた。
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