第七の厄災討伐戦・1
おはようございます。
第224話投稿させて頂きます。
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「総員。即時、戦闘準備‼さっさとぶっ殺してさっさと撤退すんぞ‼」
遠くから此方に向かってくる気色悪い巨大な肉の塊を睨みながら指示を出すフェルの言葉で黄昏、暁、憤怒の合同軍は素早く臨戦態勢に入る。恐らく、あれが第七の厄災なのだろう。
今回の戦闘は帝国が協力的ではないため予めフェル、オウル、クリストさん、俺達の間で制限時間を決める事になった。
制限時間は帝国が軍率いてここまで来るであろう予測タイム約二時間。
最高の形はその二時間の間に第七の厄災を討伐して離脱する。最悪の形は二時間以内に帝国が此処まで来て第七の厄災を討伐できない場合だ。最高の形も最悪の形も時間になれば黄昏の国の転移装置から回収用のゲートが開かれる。
———ゲートが開かれるまでに倒せなければコハクに命はない・・・
そう思いながら無意識に剣の柄を強く握っているとポンっと肩を叩かれて声を掛けられる。
「ワト殿‼そう、気を張りすぎなさんな‼貴殿一人でやるわけではないのだ。もう少し肩の力を抜かれよ」
青銀の全身鎧を身に纏った騎士が緊張を和らげようとしているように声をかけてくれる。
「レクセウスさん?」
声をかけてくれたのは黄昏の国の剣術指南役で不死の騎士団と言う騎士団を率いることになった人だ。でコハクとの朝練以外で俺やほかの人達にも訓練を付けてくれている。
そのレクセウスさんは鎧で見えないがニカリと笑ったような雰囲気を出し、言葉を続ける。
「まずは我等、アンデットが先陣を切る。ワト殿達はまず、毒から保護してもらえる魔法をかけて貰ってくるのがよかろう」
そう言ってポンっと俺の背中を俺の背中を軽く叩き、フェル達の方へと軽く押し出す。
レクセウスさんはさっき彼が言っていた様に常に鎧を身に着けているアンデットで鎧の下は骸骨で理由は言われていないが何かしらの理由で鎧は脱がないらしい。
レクセウスさんの言葉でこの戦いでの段取りを思い出す。
まずは死なないアンデットの人達が第七の厄災に攻撃している間に生身の有る人達は対毒の魔法掛けて毒を防ぎ、総攻撃を仕掛ける予定なのだ。
「・・・すみません。レクセウスさん。ありがとうございます。」
「うむ‼敵の討伐に意気込むのも良いが急いては事を仕損じますぞ。さぁ、まずは敵を打つための準備に行ってきなされ‼では‼我らは出陣する‼」
そう言って皆の所に行くように促してくれ、部下と馬の方へと歩いて行くレクセウスさんにもう一度お礼を言ってから緊張した面持ちで話している乾達の方へと向かう。
「よっ、レクセウスさんのお陰で少しは冷静に戦えそうか?」
「あぁ、レクセウスさんに感謝してるよ」
近くに行くと乾がアライさんに魔法をかけてもらいながら話しかけてくるのでそれに返事をしながら乾の後ろに並ぶ。
———保護魔法をかけてくれるのってアライさんなのか・・・
そんな事を考えているうちにアライさんが詠唱を終え、乾を見え難い水の膜の様なものが覆う。
「ふぅ・・・勇者の最後は和登さんですね。そこに立ってください」
保護用の魔法が一人一人にしか掛けられないというデメリットが有るらしい。
アライさんに促され大人しく立ち、魔法を掛けてもらう。
魔法を掛けてくれた後でアライさんが少しだけ悔しそうな顔で口を開く。
「良いですか?事前に説明されたと思いますがこの魔法は肌からの毒の吸収を防ぐ効果があります。でも、相手が厄災である以上、完全に防ぐ事が出来る保証は有りません。違和感を感じたらすぐに戦線を離脱してください。本当はボクも戦いたいですけど無理でしょうから・・・頼みましたよ」
「必ず・・・ありがとうございます。」
アライさんは今回、毒から防護の魔法を掛ける為にこの場に来ており、戦闘には参加出来ない。
理由はこの魔法がアライさんにしか使えなく(コハクも使えるかは不明)、この魔法の燃費が悪いらしく使った後に殆ど魔力も残らないらしい
注意事項を聞き、アライさんにお礼を言ってから防毒マスクを受け取り、再び乾の所へと行くと戌夜と早乙女さんも同じ場所にいる。
「あれ?湊瀬さんは?」
「あ、狗神先輩。お疲れ様です」
「先輩。お疲れ様です」
「よ、湊瀬さんならアライさんに魔法を掛けてもらった後、毒対策をしっかりしたワイバーンを一頭借りてあそこで不死の騎士団の人達と一緒に一足先に戦場に出ている」
乾が親指で指さす方向を望遠鏡を使って見たのと同時に遠くで一瞬強い光が瞬くとその光が尾を引いて第七の厄災である肉の塊が伸ばす触手を引き千切りながら肉の塊本体へと突き刺さり血が噴き出す。
「実際、あの化け物の触手を上空で湊瀬さんが引き受けてくれるお陰でレクセウスさん達も戦いやすそうだ」
下の方に視線を移すとレクセウスさんや骸骨騎士、ゾンビ兵等の人達が毒ガスや噴き出した恐らく毒だと思われる血等を苦も無く避けながら駆け抜けて敵本体へと攻撃を加えていく。
———それにしても、普段あまり見ないけど死霊系の人達ってこんなに黄昏の国に居たんだなぁ・・・
普段はレクセウスさんぐらいしかあまり見ない不死の騎士団の人達の動きに舌を巻いてみていると後ろから声を掛けられる。
「ここに居たか、そろそろ準備が整う。一人先行してるがお前等も準備してくれ」
振り返るとフェルが防毒マスク着けた状態でこちらに近寄って来る。
「「「「あ‼ハイ‼」」」」
全員で声を揃えて返事をし、俺達も防毒マスクを着けて馬へと乗り、戦地へと駆け出した。
この時の俺達は誰一人欠けることなくこの戦闘を終えられると信じていた。
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