黄昏の国の内情
おはようございます。
第223話投稿させて頂きます。
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☆は翌日です。
楽しんで頂ければ幸いです。
「先程は驚かせてしまい。誠に申し訳ありませんでした」
そう言って気まずそうな顔をしながら謝り、この部屋の主であるメルビスさんが自らお茶を淹れ、俺の前に置いてくれる。
先程までは部屋にぎっちりと詰まる程の巨大な龍だったが現在はいつも見ている人の姿だ。
突然の怒鳴り声の中、龍の姿になったメルビスさんと目が合い。お互いに一通り固まった後でメルビスさんの方が先に商機に戻り、人型になった後でお茶に誘われて現在はボロボロに為ってしまったメルビスさんの執務室でお茶を貰ったところだ。因みにリューンさん達にはメルビスさんから連絡が行っている。
「ありがとうございます。いただきます」
お礼を言って紅茶を受け取り、一口飲んでから先程の連中の事を訊ねてみる。
まぁ、俺は元々部外者なので黄昏の国の内情を教えてくれるかはわからないけど・・・
「あの、さっきの連中は何なんですか?」
俺がそう問いかけるとメルビスさんは自分も向かい側の席に座り紅茶に口を付けてから顔を顰めて口を開く。
「聞いても面白い話では有りませんよ?」
「構いません。俺が聞いたことです。不都合がなければ教えてもらえませんか?」
少しだけ言いたくなさそうな顔をするが息を一つ吐くと口を開く。
「ワト殿はリューンからコハク様が魔王の任に着いてすぐの時に起きた出来事の事は聞いていますね?」
メルビスさんの言葉に頷くとメルビスさんも頷き、言葉を続ける。
「彼等はその時のサポート機関にいた貴族達の子供や親戚で当時、コハク様の計らいで処刑を免れた者達です」
「そんな連中が何でここに?」
多少の内容は耳にしたが詳しい話が聞きたくて問いかけるとメルビスさんは憮然とした表情で口を開く。
「何処からかコハク様が毒に倒れたとの情報が漏れたようで自分達の復権とルスヒシビシタ教の復活。自分達の魔王の擁立を打診してきたのですよ」
「ルスヒシビシタ教?」
この国で聞いた事のない宗教の名前を聞いて思わず首を傾げてしまうとメルビスさんがあぁ、っと言った様子で説明をしてくれる。
「ルスヒシビシタ教というのはコハク様が魔王に着任される前までこの国に蔓延っていた邪教です。他の宗教と同じく女神、レスナ・ネス・ルスヒシビタ・ベスゼス様を信仰する宗教ナノですが他の宗教と違い。人々への生活の強制、国政への介入、更にはコハク様が就任した際に幼い事を理由に洗脳し傀儡にしようとしたのです。私の父も何とか排除しようと
したのですがサポート機関など様々な理由で邪魔をされていました。結果としてコハク様の洗脳が上手くいかなかった連中が強硬手段に出て、コハク様がそれを返り討ちにし、レスナ・ネス・ルスヒシビタ・ベスゼス様もコハク様の行動を支持なされるような現象が起きた事により撲滅されました。まぁ、それでも何名かの司教等には逃げられてしまいましたが・・・」
そこまで話してから「フゥー」と息を吐き、お茶を一口飲み、言葉を続ける。
「簡単に言ってしまうと先程の奴らはそれらの生き残りがコハク様が倒れたのを良い事に実権を握ろうと現れた訳です。黄昏の国は表向きは安定しているのですが裏を見せれば先程の様な連中が未だに現れるのです。誠に恥ずかしい話なのですが、サポート機関もルスヒシビタ教も我が父が残した負の遺産です」
俺にお菓子を進めてくれながら黄昏の国の内情を教えてくれるメルビスさんに俺は先程彼が言った事で一つ疑問に思った事と俺が聞いてしまっても良い事かを質問する。
「あの・・・さっきの連中に我が娘の一人って言ってましたけど・・・どういう意味で?それと俺にそんな内情を喋っちゃって大丈夫ですか?」
俺がそう質問するとメルビスさんは先程までとは違ったニュアンスで複雑そうな顔をすると少しだけ顔を赤くしながら答えてくれる。
「あれはですね・・・コハク様の後継人は私と憤怒の魔王様が為っていまして・・・実際にコハク様のお世話も随分とさせて頂きましたし・・・もう娘みたいな者というニュアンスと言いますか・・・私にとってはリューンもコハク様も娘なんですよ‼」
最後は自棄になった様子で照れ隠しに少し大きな声を出す。
「・・・失礼しました」
大きな声を出した事にハッとした後で顔を赤くして席に着き大きな声を出した事を謝罪してくれる。
コホンと咳払いをした後で紅茶を一口啜り、口を開く。
「それと皆さんに我が国の内情を話す事はなさらないで大丈夫ですよ。寧ろコハク様が倒れた時点でもっと早くに話しておくべきでした。コハク様がいつ目覚めるか分からない今、連中が貴方達に接触する可能性も無きにしも非ず。ですからね・・・」
そう言ってからメルビスさんは溜息を吐き、カップの中のお茶を飲み干してから口を開く。
「さて、少々長話をしてしまいましたね。ワト殿は明日の討伐戦に参戦されるのですからそろそろお開きにしましょうか・・・詰まらない話に付き合っていただきありがとうございました。・・・コハク様の事をどうか、宜しくお願い致します」
最後に真剣な表情で頭を下げるメルビスさんに俺も短く。だが、はっきりと答える。
「・・・必ず」
そう言ってからお茶を飲み干し、頭を上げたメルビスさんに見送られて必要な物資を取り出してから明日の作戦の為に無理矢理にでも休む事にした。
☆
メルビスさんと話した翌日、俺達は転移装置のある部屋に骨などのアンデットを中心とした部隊の人達と共に立っている。
相手の特性を考えて予めコハクが手配していた人達だ。
骨なのに緊張している様子が伝わってくる中、今回の戦闘の代表であるクリストさんが前に出て声を張り上げる。
「皆!コハクが居ない中よく集まってくれた。今回の戦いはコハクが居ない上に相手国が味方ではないという面で不安も多いが我等と貴君らならこの現状を打破できる‼どうか力を貸してくれ‼では、参るぞ‼」
そういい終えるのと同時に後の転移装置が起動し、俺達はここに来て初めてコハクが居ない中で厄災の討伐に赴く事になった。
此処までの読了ありがとうございました。
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