前にもドアが飛んだの見た事ある・・・
おはようございます。
第222話投稿させて頂きます。
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今回は和登視点です。
楽しんで頂ければ幸いです。
バタバタバタと慌ただしく人が行き来する中を邪魔にならない様に進み、目的地であるサロンへと足を運ぶ。
「よぉ・・・少しは休めたか?」
廊下を歩いて居ると乾が明らかに自分も休めていないと言った様子なのに俺に休めたかと訊いて来る。
現在はコハクの延命措置を終えて帝国へと行く為の準備を黄昏の国、暁の国、憤怒の国、白夜の国の四ヶ国主導で行っている途中で俺達には黄昏の国の宰相であるメルビスさんとフェル、オウル、クリストさんから作戦開始まで休息命令が出されている。
休めと言われたが落ち着かなく、作戦開始までまだ時間が有るにも関わらず集合場所であるサロンに向かっている所だ。
「微妙・・・」
コハクの事が心配で休めと言われても上手く休めず。素直に乾にそう言うと乾は苦笑しながら口を開く。
「まぁ、そうだろうな・・・俺もあんまり寝た気がしねぇし・・・他の奴等も同じだろうよ・・・」
そう言いながらサロンのドアを開けると湊瀬さんや早乙女さん。戌夜も休めなかったのかどことなく疲れた様子でソファーに座っている。
「あ・・・先輩。お疲れ様です」
「狗神先輩。乾先輩お疲れ様です」
「先輩方お疲れ様です」
中に入ると湊瀬さん、戌夜、早乙女さんの順で挨拶をしてくれる。
三人共予想通り疲れている様だ。
「よぉ・・・三人共。お前等もやっぱり休めてないみたいだな・・・」
三人を見て乾も疲れた様子で苦笑を浮かべる。
「流石に今の状態では休めなかったんで何かやれそうな事は無いか訊いて回ったんですけど何も無かったんでサロンに来てみたら夢菜ちゃんと早乙女さんが後から来たんですよ」
「私達も戌夜くんと同じ理由です。皆、忙しく動いているので・・・」
「それにやっぱりどことなく不安そうにしているんですよね・・・まぁ、現状を考えると当然の事なんでしょうけど・・・」
早乙女さんの言葉を最後にその場にいる全員で思わずため息を吐く。
「取り敢えず。宰相さんにでも俺等が出来る事を聞いてみるか?」
暫くサロンで話をした後で乾が宰相さんに何か出来る事が無いかを聞きに行こうと提案してくれたので全員でその案に乗る。
コハクが倒れた今、黄昏の国の指揮をしているのはリューンさんのお父さんで宰相のメルビスさんだ。
コハクが倒れた時の対応は予め決めていたらしく皆がしっかり指示を聞いて動いている。
今現在は相当忙しいだろうけど訊ねて仕事を貰った方が俺達の精神衛生上にも良いだろう。
そんな事を考えながら廊下を歩いて居ると向こう側からリューンさんが忙しそうに歩いて来る。
そんな中でも俺達の事を視認したのか俺達に声を掛けてくれる。
「勇者様方。どうかされましたか?」
何時もよりかなり疲れている様に見えるリューンさんに宰相さんに会いに行き何か手伝える事は無いかと訊きに行こうとしている事を話すと彼女は少しだけ顔を顰めて口を開く。
「落ち着かないのはよくお分かりになりますが出来ればお体を休めて欲しいです。それに今はちょっと面倒くさい者が訪ねていますのでち・・・宰相の所には行かない方がよろしいかと・・・それと、どうしても休めないと仰るのなら宜しければわたくし達を手伝って頂いても宜しいですか?」
来客が居ると言う所だけ一瞬凄く嫌そうな顔をしてから俺達に手伝いを申し出てくれたので俺達はその言葉に有難く乗っかり、リューンさんに付いて行き、支給品の準備などの手伝いをする事になった。
「えっと・・・次は宰相室近くの倉庫から魔法薬と防毒マスク・・・」
用意するものリストに目を通しながら宰相室の近くを通りかかる。
チラリと閉じられた扉に目を向けると唐突に扉の向こうから怒鳴り声が合聞こえて来る。
「ですから‼貴方方にこの国のことに対して口を出す権利は無いと言っているでしょう‼」
俺達の前では常に穏やかに対応してくれている為、その様子に少しだけ驚き、何が有ったのか悪いと思いつつも扉に耳を付け中の会話を聞いてみる。
そうすると小さいが中から宰相さんとは違う男達の声が聞こえて来る。
「そうは言いますがなぁ。メルビス殿。現魔王陛下は不覚にも助けた小娘に不意を突かれ負けたのであろう?そうであれば、一体どれだけの魔族があの小娘に従うと言うのでうかな?」
「左様、左様。教会を焼いたのも我等の追放を許されたのも単に彼の小娘が魔王で有ったからである。その小娘が倒れた今こそサポート機関の後継者である我らの地位を元に戻し、我らの指示する者を新たな王として擁立して国を動かすのが最善だと思わんかね?」
「小娘が目を覚ましたらその擁立した新たたな王に嫁がせれば何も問題は無かろう?あとはお主が首を縦に振れば良いのだ」
何処か悪意のある男達の言葉の中に聞いた事の有る機関の名前を聞き、顔を顰める。
———サポート機関ってあの休みの時にリューンさんから聞いた連中の事だよな・・・その連中が何で此処に?生き残りが居た事にも驚きだけど少し話を聞いただけだけど碌な連中じゃなさそうだな・・・
そんな事を考えながら引き続き中の会話を聞く為に意識を集中させる。
「先程も言った通り貴方方にこの国の事に口出しをする権利は有りません。魔王様の温情で生き残って居るだけの害虫が余り調子に乗らないでいただきたい」
先程よりも声を押さえているがさっきよりも殺意の乗った言葉に扉の向こうの男達が声を上げる。
「ふん。温情だと?あの小娘が我等を殺す覚悟が無かっただけの事であろう?それを恩着せがましく言うでないわ」
「そもそもパッと出の小娘に魔王の立場など最初から不可能だったのだよ。女神様も偶にはお間違いになられる事も有るのだ」
「聞けば今回の件で唯一優れていた容姿も崩れたそうではないか?その様な者を新たな王へと嫁がせてやろうというのだ。感謝すべきではないかね?」
代表して喋っている男達以外にも複数人居るのか口々に男達の言葉に同意する声が聞こえて来る。
「あぁ、もう良い。貴方方とは話にならない。今すぐに出て行きなさい」
俺達と話す時にはまず聞いた事の無い声音の宰相さんの声音に男達は少しだけビビったの様子で口を開く。
「き、貴様。一体何様のつもりで高貴である歴代魔王の子孫である我らにそんな口を訊いt・・・」
「私はこの国の宰相にして偉大なる前魔王の直系の子だ。そして貴様らは我らが親愛なる我が魔王の敵だ・・・死二タクナケレバ消エ失セロ‼」
最後の方だけ少しだけザラ付いた声音に為ったのと同時にバキバキと大きな音が鳴る。
男達が悲鳴を上げたのを聞き、慌てて扉から離れるとそれと同時に扉が吹き飛び、複数人の男達が吹き飛んで来る。
「ひ、ひぃ~」
情けない悲鳴を上げながら逃げて行く男達に先程のザラ付いた声と黒い龍の手がドアの有った空間から飛び出して来る。
「逃ゲルナ愚カ者共‼次二我ガ娘ノ一人二害ヲ及ボスナラバ貴様ラヲ死ンダ方ガマシダト思ワセテクレルワ‼」
怒りに満ちたその声に蹴落とされ思わず尻餅を付き、宰相室のドアが有った所を見ていると伸びていた黒い龍の手がスッと中に納まり続いて黄金色に輝く爬虫類の目がドアの有った場所に現れる。
「・・・ワト殿?」
黄金色の瞳が俺を捉えると驚いた様に目を開き、巨大な黒い龍はバツが悪そうにポツリとそう呟いた。
此処までの読了ありがとうございました。
次回もごゆるりとお待ちいただければ幸いです。




