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さて、此処からは選択の時間だ

おはようございます。

第220話投稿させて頂きます。

ブックマーク・いいねありがとうございます。とても励みになります

一ヶ月お休み頂きありがとうごっざいました。本日から投稿再開いたします。

今回は和登視点です。

本日に話投稿です。楽しんで頂ければ幸いです。

「コハク‼」

「和登‼触るな‼」


 倒れたコハクに近づこうとするとオウルが血相を変えて俺の肩を掴み静止させる。

 よく見るとコハクも俺の方に何時の間にか抜いていた剣を向け、近づかない様に牽制している。


「ぐっ・・・・」


 だが、苦しそうに小さく呻き声を上げるとカランと音を立てて剣を落とし、蹲ったまま苦しそうに呻き声を上げる。

 よく見ると何故か彼女の血が付いた地面がジュウジュウと音を立てて煙を上げて溶けている。

 俺の事を後ろに下がらせてからオウルが鞄から様々な薬品の入った瓶を取り出しながらコハクの状態を見る為に近づき、慎重に診察を始める。

 一通り体温などを確認した後で戌夜の方を向くと真剣な様子で指示を出す。


「・・・・呪毒・・・‼戌夜‼メイド長達に連絡して俺の国からNo.15の医療器具をすぐに送る様に言ってくれ‼あと、ありったけの布とここの温泉の湯を大量に持って来てくれ‼夢菜‼戌夜を手伝ってやってくれ‼他の皆はもっと後ろに下ってくれ‼」

「はい‼」

「は、はい‼」


 オウルの指示を聞いて戌夜と湊瀬さんが急いで部屋の外へと駆け出て行く。

 2人が外へと駆けて行くのと同時にオウルはコハクを抱き起こし、瓶の中身を飲ませようとする。


「わ・・・たs・・に・・・さわ・・・」


 コハクはオウルに抱き起こされ何かを喋ろうとするが毒の所為で喋るのも辛いのか息も絶え絶えオウルを押し退けようとする。

 毒の所為なのか分からないが無事だったはずの手や顔の皮膚が衣服にこすれて捲れ上がり所々に出血が目立つ。

 オウルはムッとしたような顔になると抱き起しているコハクの口に瓶を突っ込み怒る。


「五月蠅い‼俺に毒は効かん‼大人しく時間稼ぎのための処置をさせろ‼」


 そう言いつつもオウルの体はコハクの血に触れた所は腐食しているかの様に煙を上げている。


「オウルさん‼持ってきましいた‼」


 オウルが時間稼ぎだと言っていた処置をしている途中でオウルから指示されていた戌夜と湊瀬さんとメイド長達が様々な器具やタライなどの様々な容器に入れた温泉の水、大量のタオルを持って駆け込んでくる。


「和登‼優‼クリストのおっさん‼戌夜と一緒に持ってきた魔道具の設営を頼む‼光‼フェルと一緒にホースを温泉の湯口に繋いで持って来てくれ‼夢菜‼俺達に触れない様にお湯の入った桶とタオルを渡してくれ‼」

「「「「「解った(りました)‼」」」」」


 オウルの指示に従いアルさん達が持って来た分解されている巨大な魔道具を付いて来た説明書を見ながら皆で組み立てる


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛」


 組み立てを行っていると毒の影響なのか聞いた事の無いコハクの叫び声が聞こえて来る。

 声に驚き振り向くとオウルの手の中で小さな体を捩り苦しんでいるコハクの姿が見える。

 一通りの痙攣が終わるとオウルは手早く衣服を剥ぎ温泉を染み込ませタオルを体に巻いて行く。


「・・・皮膚が」

「会頭・・・」

「主様・・・」

「和登さん‼そっちを支えてくれ‼あとはそこを固定すれば終わりだ‼」


 服を剥ぐのと同時に衣服に皮膚がくっついて来るのを見てメイド長達は悲痛そうな面持ちでタオルを渡し、アルさんは最後のねじ止めを完了させる。

 全ての部品を組み合わせるとよくSF等で見る様なカプセル型の魔道具が完成する。


「オウル殿‼準備が出来たぞ‼」

「ならそこに残った温泉の湯を入れてくれ‼」


 オウルに言われた通りにカプセル型の魔道具に大量の温泉の水を入れて一杯にすると遠目でそれを確認したオウルが所々にタオルを巻いたコハクを抱き抱えて来て慎重にカプセル型の魔道具の中へと入れ、人工呼吸器の様な物を口に付けて蓋を閉める。


「オウル‼持って来たぞ‼」


 蓋を閉めた所でフェルが極太のホースを持って来て魔道具の後ろ部分に接続する。


「準備できた‼湯を流して貰って大丈夫だ‼」


 魔道具にホースが繋がれたことを確認してフェルが通信機に向かって声を掛けると少ししてからホースの中を液体が通り魔道具の中の中が完全に温泉の水で満たされる。

 それを確認してからオウルが魔道具に魔力を流して魔道具を起動させると気が抜けた様に息を吐いてからその場に倒れる様に膝をつく。

 コハクを収納した魔道具は何かのSFアニメの医療ポッドの様に薄っすらと赤く光る紋様を浮かび上がらせている。


「オウル‼」

「待て‼まだ俺にもまだ触るな‼すまないが残った温泉の水を俺に渡してくれ‼皆もまだ何も触らないでくれ‼」


 フェルがオウルに肩を貸そうとするがオウルは慌てた様子で持って来た温泉の残りを渡すように言い残ったタオルを温泉に漬け、ソレでコハクの血が付いた場所を拭きながらメイド長達にもまだコハクの服などに触らない用に促す。

 一通り血の跡を拭きとった後は残った温泉のお湯をコハクの血が垂れた所へと掛け、脱がした衣服は別の桶に入った温泉の水へと漬け、心配そうに成り行きを見守っているメイド長達へ犠牲を増やしたくないからこれらの衣服には絶対に触らない様にと指示を出してから最後に頭から綺麗な温泉水を被り、ようやく一息を吐く。


「それでオウル。コハクはどういう状況だ?」


 疲れからか椅子にぐったりとした様子で座り込んだオウルにフェルが現状の確認をする為に問いかけるとオウルは顔を顰めながら答える。


「最悪の状況だな・・・コハクに使われたのは呪毒だ。このままだとアイツはもってあと数日な上に黄昏の国も滅亡する」


 オウルの言葉にその場にいる全員が言葉を失う。

 俺達以外の人達は呪毒という言葉の意味を知っているのか一様に顔を顰める。

 そんな中で早乙女さんが遠慮気味に小さく手を挙げて質問をする。


「あの・・・さっきコハクちゃんが倒れた時にも言っていましたけど呪毒って何ですか・・・?」

「呪毒って言うのは精霊すらも殺せる強い呪いのかかった毒だ。コイツが体内に入ると毒を盛られた本人だけでなく周りの人間にも感染して悲惨な死を撒き散らす。込められた呪いによって様々な症状を引き起こす。今回で言えば呪いによって血を毒に変え、触った別の人間を感染させた上に宿主の出血によって周囲の物を腐食させ、肉体を破壊する。死ぬ頃には原形すら留めていないだろうな。今回の物だけじゃなく呪毒に掛かった者は当然の事ながらまともな死に方は出来ない」


 そこまで答えてオウルは「ふぅ」と息を吐く。

 精霊すらも殺せる事は魔王達も知らなかったのか驚いた様な様子を見せる。

 てか、精霊ってこの世界に本当に居たんだ・・・てっきり魔法を発動させる為の概念的な物かと思っていた・・・


「ちょっと待ちなさいよ。その話が本当ならあの子に触ったアンタも呪毒に感染しているって事じゃない?大丈夫なの?」


 温泉で拭いたとはいえ未だに血塗れのオウルを見ながら問うレヴィさんにその場の全員にオウルを媒介に感染するのではという考えが浮かび再び緊張した空気が流れる。

 その様子にオウルは安心させるように両手を上げて答える。


「俺を媒介に感染するかもしれないと思うのはとてもいい考えだが安心してくれ。そもそも女神からの加護で呪毒を含めてこの世の毒は俺には効かん。服に付いた血もここの温泉の水を含ませたから取り敢えずは心配無い。此処の温泉は解毒や毒の回りを遅らせたり、傷の治療に使う事も出来るからな。まぁ、服も俺も触る事に関してはまだ推奨しないがな」


 両手を小さく上げてそう言うオウルに心配そうな顔の湊瀬さんが問いかける。


「解毒の方法は有るんですか?」


 湊瀬さんの問いにオウルは少しだけ顔を顰めながら口を開く。


「有る。呪毒っていう奴は呪いの原因になっているモンの破壊や討伐をしてやることで綺麗さっぱり浄化してやる事が出来る。ただ、当然の事だが呪毒によって負った障害は残るがな・・・だが、今回に限っては・・・」

「恐らくだが呪毒の出所である存在が問題なのであろう?」


 少しだけ言い難そうにしていたオウルの言葉をクリストさんが引継ぎ言葉にするとオウルはゆっくりと頷く。


「あぁ、恐らくだがこの毒の出所は第七の厄災だろう。アイツの二つ名は『厄毒』。このタイミングで毒を使って来たんならアイツの毒以外には考えられねぇ・・・」

「要は連中が俺達を駆り出す為に手段を選ばなかったって事だな。コハクの治療をする為には第七の厄災を討伐する事が必須だがそれをやるとこちらの予定通りには動けない。どうせ連中が全滅するまでコハクはもたないんだろう?」


 心底不愉快そうに問いかけるフェルにオウルも苛立っている様子で頷く。


「・・・俺が油断して居なければ・・・もしくは刺されたのが俺だったのなら・・・」


 思わずポロリと口をついて出て来てしまった言葉にこの場にフェルとオウルが口を開く。


「アホ。あんな奇襲に反応出来たら俺等の事を皆殺せるわ。それになお前を庇ったのはアイツの意思だ。コハクがお前を守りたいと思ったからやった事だ。間違っても自分が倒れれば良かったなんて言うんじゃねぇ」

「それに和登が呪毒に感染していたら時間を稼ぐ暇も無く味噌グチャになっていた。コハクが曲がりなりにももっているのはアイツが魔王で幾つもの加護持ちだからだ。だから気にするな」


 フェルとオウルに続いて皆も口々に気にしない様にと言ってくれる。

 そんな一幕を終えた後でオウルが再び口を開く。


「さて、これからは選択の時間だ。俺達の取れる行動は三つ。一つはこのまま何もしないで帝国が滅亡してから第七の厄災を討伐する。因みにコハクはこの選択を強く推奨しているがこれを実行した場合コハクは100%死ぬ。二つ目は一縷の望みに掛けて帝国の連中に協力を要請して第七の厄災を狩る。はっきり言ってこの選択肢は絶対にない。三つ目。はっきり言って俺はこれしか選択肢は無いと思っている。俺達だけで帝国に行き速やかに第七の厄災を排除し、国に戻って来る。だが、この選択肢は帝国に不法侵入する上に奴らとも戦闘になるリスクがある」

「「「「「「そんなの決まっている(でしょう)(だろ)」‼」」」」」」


 指を三本立てて出してきた選択肢に全員で三番目の選択肢を実行する意思を示す。


「ならば戦闘に出る奴と残る奴に別れなけりゃいけねぇな・・・わりぃが俺は今回、戦闘からは外れさせて貰う。コハクの状態維持の為に細かい調整が必要なんでな。それとメイド長さん。すんませんが俺でも着られる服を幾つか貸してください」

「はい・・・かしこまりました。皆もここは皆様にお任せして仕事に戻りなさい。白夜の魔王様。手が欲しければ何時でも我々にお声をおかけください。」


 そう言うとメイド長を含めた黄昏の国の使用人の人達は心配そうな顔をしながら会議室から出て行く。メイド長だけは後から服を持って戻って来るみたいだ。

 使用人の皆さんが出て行ってから俺達は第七の厄災を討伐しに行く人達と残って他の国に警戒する人達に別れる事になった。

 結果だけ言うと第七の厄災を討伐に行くのは俺達勇者組とフェル、クリストさんの国。他の国を敬遠するのはレヴィさんとアミルさんが受け持つことになった。

 話し合いも一通り終わり準備の為に解散に為った際にフェルがふと思いついた様子でオウルに問いかける。


「それにしてもお前。専門家だと言われればそれまでだがヤケに呪毒に対して詳しくないか?あの魔道具も何の用途で用意していたんだ?あと、この国の温泉の能力なんてどうやって知ったんだ?」

「・・・・」

「オウル?」

「少し前に俺が結婚していて奥さんが居るって話をしたのを憶えているか?」

「ああ」

「俺のカミさんは元々精霊でその中でもかなり高い地位に居た子だったんだ。そのカミさんは強力な怨念を宿した魔物から毒を貰って瀕死の所を俺がコハクに協力して貰って処置したんだよ。その時の反省を生かして呪毒の進行を遅らせる装置をコハクと共同で作ったんだ。まぁ、此処の温泉の効能有き出し、未完成なんだがな。温泉の効能についてもその時に教えて貰った」

 

 そんな馴れ初め話を最後に俺達は第七の厄災を討伐する為の準備に入った。

此処までの読了ありがとうございました。

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