お願い‼止まって‼
おはようございます。
第218話投稿させて頂きます。
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今回も立花 葵視点です。今回で葵視点は終わりです。
楽しんで頂ければ幸いです。
「・・・ヤッバイお薬?何が?」
私の叫び混じりの質問にトワさんは訳が分からないと言った柚須で首を傾げてオウム返しに言葉を繰り返す。
恍けているのか素で言っているのか分からないが私は深呼吸を一つすると口を開く。
「ペギルさんに変な白い粉を渡していたじゃないですか。アレって法的に取引しちゃいけない物じゃないんですか?」
私がそう言うとトワさんは「あぁ~」と一言呟くと手をポンっと叩くと納得が行った様子で話し始める。
「あぁ、あれね。あれは誓って違法な物じゃないよ」
顔の前で手を振りながらさらりと私達の予想を否定し、驚きの言葉を口にする。
「だってアレ、粉ミルクだもん」
「「・・・は?」」
てっきり怪しいお薬だと思い込んでいた私とリイナさんは予想外の言葉に思わず間抜けな声が被る。
そして唖然としたまま次の言葉を口にする。
「粉・・・?」
「みるく・・・?」
「うん。粉ミルク。嘘だと思うなら舐めてみる?」
私達の言葉に何処までも飄々とした様子で懐から先程の白い粉の入った瓶を取り出すと私達の前へと置く。
リイナさんはジッと小瓶を見た後、意を決した様子で口を開く。
「トワ様。私から行かせて貰います」
そう言うと小瓶を手に取り、中の粉を少しだけ出してぺろりと舐める。
別にトワさんを信頼していない訳では無いし私もリイナさんから小瓶を受け取り同じ様に粉を舐めてみる。
粉を口に含むと優しい甘みが口の中に広がり件の粉がトワさんの言う通り粉ミルクだと言う事が分かる。
「安心した?」
私達がホッとしたような表情を浮かべた事に気が付いたトワさんが首を少しだけ傾げながら訊いて来るので二人で同時に頷く。
しかし、ホッとしたのと同時に新しい疑問が浮かんで来る。
「はい・・・変な勘違いをしてすみませんでした・・・あの・・・あの人達に何をお願いしていたんですか?それになんであの人達は粉ミルクを求めていたんですか?」
私がそう訊ねるとトワさんは仮面で顔が見えないが何故かどこか遠くを見ている様な様子で答えてくれる。
「彼等には明日の会議で強欲の魔王を黙らせるのに使う情報を調べて貰っていたんだよ。粉ミルクの使い道については聞かないであげてくれないかな・・・彼等も色々と大変なんだよ・・・てか、ほんと、マジで聞かないで欲しい・・・」
トワさんは私のした質問に答えてはくれたが最後に何かを思い出したのか心底うんざりしたと言った様子で答えてくれる。
「あの、トワ様。強欲の魔王様を黙らせるような内容って何なのですか?」
微妙な空気が流れた所でリイナさんが話題を変えるために別の質問をしてくれる。
・・・ありがとうリイナさん。空気を変えてくれて‼
内心でリイナさんに感謝の念を送っているとトワさんはトントンと資料を叩きながら普通に答えてくれる。
「あぁ、これは帝国と強欲の魔王が懇意にしているという証拠だよ。これが有るだけで随分とアイツを黙らせるのが楽になる」
恐らく仮面の下で俗に言う悪い顔というのを浮かべながら「フフフフ」と笑ってから言葉を続ける
「さて、僕はそろそろ行くよ。明日の準備がまだ残っているからね。二人もまだ回る予定なんだろ?あまり遅くならないうちに帰っておいでね」
そう言ってトワさんは立ち上がると出口へと向けて歩いて行く。
トワさんの後ろ姿に向かって私は慌てて声を掛ける。
「あの‼トワさん‼今日、帰ってから前に提案して頂いた事への答えを伝えたいのでお時間いただいても良いですか?」
「もちろん構わないよ。何時でもおいで」
そう言うとトワさんは小屋から出て行くので私達も続いて外に出て城に戻るトワさんとはそのまま表通りで別れ私達も街歩きを再開させた。
街歩きを再開させた後は孤児院等の施設を見学させて貰ったりして私達はお城へと戻った。
その日の夜、私はトワさんの執務室のドアの前で深呼吸を一つしてノックをする。
「どうぞ」
ノックして少ししてからそんな声が聞こえて来たので「失礼します」と言って中に入る。
「やぁ、こんばんは。そこに座ってくれるかな?」
中に入ると執務机だと思われる場所から移動し中央にあるソファーを指差し座るように唸腑がしてくれるので素直に座る。
トワさんは向かいに座るとアイテムボックスからティーセットを取り出し、手慣れた様子で紅茶を淹れてくれて私に手渡してくれる。
お礼を言って受け取る。トワさんも自分の分のカップにお茶を淹れる。あらかじめ仮面を取っていたのか普段のコートのままでカップに口を付けてお茶を飲む。
「さて、移住の件だけど話が有るって事は決めたんだね?」
二人で少しの間お茶を飲んでいるとトワさんが私の訪問理由を訊いてくれる。
私はカップを机の上へと置き、トワさんの方を真っ直ぐ見て返事し答えまで一気に口にする。
「はい、この数週間。黄昏の国を歩き回らせて頂いて決めました。トワさん。私をこの国に亡命させてください」
「僕が移住を進めておいていう事では無いけど後悔はしない?もちろん拒否をするつもりは無いし、精一杯支援もさせて貰うけど君が助けたいと言っていた国を見捨てる事になる。その事に耐えられる?」
移住では無く敢えて亡命という言葉を使い、頭を下げるとトワさんが後悔は無いかと訊いて来るので頭を上げてトワさんを真っ直ぐに見ながら口を開く。
「後悔が無いと言えば噓になります。でも、今の私が帝国に戻っても何もできません。多分無駄死にして終わりだと思うんです。それなら此処で勉強して残った人達の為に活用をした方が助けられる人が多いと思うんです。ですからトワさん。重ね重ねご迷惑をお掛けしますが私とユタ君をこの国で勉強させてください。お願いします」
そう言ってもう一度、頭を下げるとトワさんは息を一つ吐いて口を開く。
「解った。全面的に君達を支援させて貰うよ。立花 葵さん。黄昏の国へようこそ」
あっさりと亡命を承諾してくれたトワさんは右手を差し出してくれる。
「あの・・・最初の時と意見を変えた私の言葉を怪しまないんですか?」
私の言葉を怪しまない彼につい心配になりそんな質問をするとトワさんは少しだけ苦笑をして答えてくれる。
「僕にはちょっと特殊な目が有ってね。君が何も企んでいないという事は解っているんだ。それ以前に目を使わなくても君の最近の頑張りを見ていたらそんな事を思う事なんて出来ないよ」
ここ最近、私が皆との仲を頑張って修復しようとしていた事を知っていてくれた事を嬉しく思い顔が赤くなるのを隠しながら差し出されていたトワさんの女の子みたいな小さな手を握り返し、口を開く。
「あの・・・改めてよろしくお願いします」
「うん、よろしくね」
そんな会話の後でトワさんの執務室を後にし、私も明日の会議に出席させて貰う予定なので早めに就寝し、明日に備える事にした。
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時間は進みトワさんに亡命させて貰いたいと言った翌日、湊瀬さん達に大丈夫だと励まされながら初めての会議という事に緊張して午前中を過ごしてから会議室だと言う場所に移動し、緊張したまま会議が進む。
現在は会議も終盤に差し掛かっている。正直、会議の内容は私の分かる物から解らない物まで様々で慣れない空気も相まって殆どわからない状態だ。
一つだけ分かった事はトワさんと強欲の魔王だと言う狐の獣人さんは仲がすごく悪いという事だけでトワさんの言葉に対して強欲の魔王さんが反対意見の様な嫌味を言うたびに先日、ペギルさんから受け取っていたであろう情報で強欲の魔王さんを黙らせるという場面を何度か見た。
「では、帝国に関して反対意見は無いみたいだね。これにて今回の魔王会議を終了する」
その言葉を最後にこの場に来ていた魔王さん達は何人かを残して席を立ち会議室から出て行く。
残った数人の魔王さん達はトワさんに話が有ったのかトワさんの方へと向かって行くのでそれに合わせて湊瀬さん達と私もトワさんの方へと近づく。
今回の会議を見ていて思った事は魔王さん達も一枚岩では無いという事だ。
リイナさんから聞いていた話しだとトワさんには敵も多いみたいだ。
—————私も少しでも力に為れる様に頑張ろう
そんな事を考えながら私は右手に持った黒いナイフを構えトワさんと話している狗神さんへと向けて走り出した。
誰かの悲鳴が上がったのと同時に生暖かい液体が私の右手を赤く染めた。
此処までの読了ありがとうございました。
次回もごゆるりとお待ちいただければ幸いです。




