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凶兆

おはようございます。

ブックマーク・感想・いいねありがとうございます。とても励みになります‼

第211話投稿させて頂きます。

今回はコハク視点です。

楽しんで頂ければ幸いです。

 コツコツと靴音を立てて私は石造りの建物の中を前にもした薬師の姿で久しぶりに会ったマカさんの後を歩いて行く。

 現在の私は先日連絡の来たメアとレティに合う為に朝から黄昏の国から出て現在はルファルデ法国へと来ている。

 事前に私が来る事をメアから聞いていたのか神殿について直ぐにマカさんが声を掛けてくれ、メアが待っている部屋へと案内してくれる事になった。


「こ・・・リーフさん。此処でメアニア様とメイナ様がお待ちです。私も御一緒したかったのですけど用事が有るので失礼させて貰いますね」

「ありがとうございます。マカさん。また、今度お茶しましょう」

「はい。ぜひ‼」


 豪華だが下品では無い装飾の施された扉まで案内してくれたマカさんと少しだけ話をし、マカさんはニコリと笑ってから私に一礼して去って行く。

 そのマカさんを見送ってから私は意を決して案内された部屋の扉を警戒しながらゆっくり開ける。


「コッハク~♡」


 とびらを開けるのと同時にメア(この国の最高責任者)が私に向かってすごい勢いで飛び込んでくるので私は直ぐに開けた扉を閉める。


「フェブ‼」


 ドンッという鈍い音と共にメアの短い悲鳴が響く。

 扉の向こうが静かになったのを確認してから私が再度、扉を開けるとそこには車に轢かれたカエルの様な格好のメアが転がっている。


「や、第五の厄災以来だね。メア。そして久しぶりだね。メイ」


 メアに軽く挨拶をした後、天井がガラス張りになっているこの部屋の奥に居る眠たげな眼の少女、地面にうつ伏せで寝っ転がっているメアニアの義妹であり星詠みの巫女であるメイナへと挨拶をする。


「お久しぶりでございます。黄昏の魔王様。ネェ様、はしゃぎ過ぎですよ」


 義姉と違い淑やかな態度で挨拶を返し、床に転がっているメアをおっとりと叱る。


「そう言うでない‼メイナよ‼やっと邪魔無く。コハクと話すチャンスが舞い込んで来たのじゃぞ‼ここで口説かなければ妾はぜぇったぁいに後悔するのじゃ‼」


 凄い勢いで起き上がりメイに向かって抗議をするメアを無視し、私はスタスタと天井がガラス張りになっている広い部屋をメイナの居る所まで歩いて行く。


「つ、冷たい。もう少し構ってくれても良いでは無いか~」


 メアの事を完全に無視した私にメアが情けない声で抗議をするがそれも無視する。

 今回は他にも予定が有るからね。冷たいと思われるかもしれないけどメアにあんまり構っている時間は無いんだよ。今回、私を呼び出したのは主にメイの方だし・・・構うと思いっ切りウゼェ(言葉の乱れ失礼)って言うのも知っているしね。

 そんな事を考えている内にメイの近くまで来たので用件を訊ねる。

 まぁ、恐らくだけど星詠みの結果が私に関わる事だったのでその内容の共有だろうなあ・・・


「それで?メイ。私に用事って何かな?」

「はい。実は先日、黄昏の魔王様の星を詠みました。そして黄昏の魔王様に関して気になる星が見えたものですから少し注意喚起をしておこうと思いまして」


 予想通りの返答にうんざりしながらメイに勧められ向かいに座る。

 誰も相手をしてくれないと分かったのかメアもそそくさと私の隣に座りお茶の用意を頼んでいる。

 メイドさんが人数分のお茶を用意して下がったのを確認してからメイはお茶を一口飲み、前置きも無く星詠みの内容を話し出す。


「見えた物は選択、喪失、破滅、再会です。貴女様は近い将来に何かを選択し、選んだ結果、選ばなかった何か大切な物・・・あるいは人を失うでしょう。その先の破滅と再会に関しては詳しい事は解りませんでした。ただ、二つの未来は両立しないようです。」


 そこまで一気に話、メイは紅茶をもう一口含む。

 当の私はその話を聞いて思わず天を仰ぐ。

 ・・・やっぱり、碌でもない話だった。いや、マジで碌でもない話だって・・・強制的に選択を迫られて選べば何かを失う。挙句に果てにどっちを選べば良いのか分からないのにどっちかを選べば破滅コース。・・・あほか!いやマジで‼

 内心でそんな文句を垂れながら溜息を一つ吐き、思考を魔王(お仕事)モードにし、どうせ無理と分かりながらもメイナに問い掛ける。


「メイナ。一応、訊いておくけどその未来を回避する方法は?」


 メイナの詠む未来は回避の出来る物と出来ない物が有る。万が一の可能性に賭けてメイナに訊ねるとメイナは申し訳なさそうにフルフルと首を横に振る。

 別にメイナが悪い訳では無いのに申し訳なさそうにする辺り、彼女は本当に人が良い。


「この未来は回避不可能です。ですが破滅の道に進まない方法が一つ・・・貴女様の心に従い動く事です」


 メイナの言葉に私はますます顔を顰めてしまう。心に従えって曖昧過ぎない?

 そんな事を考えてから話は終ったみたいなのでカップに入った紅茶を一息に飲み、口を開く。


「わかった。何時その選択が来るのかは解らないけどその時は私のやりたいようにやってみるよ。忠告と紅茶をありがとう。この後も用事が有るからそろそろ行くよ」

「不安にさせるだけであまりお力に為れず申し訳ございません。貴女様の未来が明るい事を願っております」

「う~む・・・一緒に昼食でもどうかと誘いたかったのじゃが・・・この空気では無理そうじゃな・・・しょうがない・・・今回は諦めるのじゃ・・・コハク、何か有れば妾達の事を頼るんじゃぞ‼主等には返しきれぬ借りが有るんじゃからな‼」

「うん。二人共、今日はありがとう。メア、色々と落ち着いたらその時は皆で一緒にご飯に行こう。あ、あとこれ。二人が前に美味しいって言ってくれたらクッキーを焼いて来たんだ。

 良かったら食べてよ」


 席を立った所で2人からそう声を掛けられたので二人に笑顔で返し、二人が好きだって言っていたジャムの乗ったクッキーをテーブルに置いて出口へと向かう。

 出口に向かう途中でメアから「のう‼暗に二人ではいきたくないと言っておらんか⁉」などと言う声が聞こえて来たような気がするが多分空耳だろう。

 街から出て森の中に入り誰も居ない事をスキルと眼を使って確認して薬師の姿から何時もの冒険者服に着替える。クラシアには月濱純也達が居るので薬師(リーフ)の格好だと色々と面倒な事になるかもしれない。

 着替え終わった所で簡易転移陣を取り出し、クラシア王国にあるリコリス商会の隠し部屋へと飛ぶ。


「お待ちしておりました。会頭」


 事前に連絡を入れていた為か転移先に着くと直ぐにそんな声が聞こえて来るので私は声の主に向けて声を掛ける。


「やぁ、アリア。随分と待たせちゃったかな?ごめんね。これ、一人一つずつ有るから皆で休憩中に食べて」


 そう言ってお詫びでは無いけどメア達に渡した物と同じクッキーを待っていたアリアにバスケット事手渡す。


「ありがとうございます。会頭」


 嬉しそうにバスケットを受け取り、レティに会う為の準備をする為に隠し部屋の外へと出る。


「だから‼早くこの商会の会頭を呼べと命令しておるのだ‼さっさとせんか‼この鈍間が‼」


 隠し部屋から出て三秒で少し前に聞いた事のある声が恐らくうちの従業員を怒鳴るのが聞こえて来て私は急いで声のする方へと駆けだした。

此処までの読了ありがとうございました。

次回は月濱視点です。

ごゆるりとお待ちいただければ幸いです。

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