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厄介ごとは向こうからやってくる

こんばんは、第21話投稿させていただきます。

今回は、ちょっと長めになったかと思いますが楽しんでいただけたら幸いです。

 保健室での話から数か月経ったある日の穏やかな午後にその問題が起こった。

 今日の稽古が師匠の急な用事で無くなったので、お昼ご飯を済ませ、厨房を借りて作ったお菓子の入った紙袋を持ちながら図書室にでも行こうと考えていた時に中庭の方から誰かが言い合っている声が聞こえて来た。

 そして、私はやめればいいのについついその言い合いをする声が聞こえてくる中庭に向かってしまった。

 中庭では、男の子三人と女の子一人の四人の子達を中心にして人だかりが出来ていた。

 どうやら中心に居る貴族風の子達に向かって私もよく知るピヨコが怒っているようだ。

 心配そうに様子を見ている同い年ぐらいの子達の一人に何が有ったのかを聞いてみた。


「あの…すみません。何があったんですか?」

「え?あ、僕も良く分からないけど、なんか女の子の持っている物を男の子二人が無理矢理取り上げようとしたみたいだよ。それで、テト君が横から入ってきて言い合いになったみたいだよ」

「なるほど…それで、あんな事になっているのか…教えてくれてありがとうございました」


 教えてくれた男の子に礼を言い、テト達の方に視線を向けながらすぐに飛び出せるように小さな声で自分に≪ライトニング・オーラ≫を掛けておく。

 大体この手の理不尽貴族が平民の子に対してどういう事をやるかなんて決まっているしね。

 …あれ?そういえば、なんでこの人テトの名前を知ってるのかな?


「だから、これはこの子がお母さんから貰った大切な物なんだろ!それをお前が上級貴族ってだけで、寄こせって言うのはおかしいだろ‼」

「ふん、下等な庶民風情が我らの決めたことに口を出すな。お前ごときがそこにいる下級貴族の持っている魔石の価値等分かるまい。その魔石は我らで有効利用するのが良いに決まっているだろう?」

「だからって人の大切な物を取って良いなんて理屈は通らないだろ!それでも騎士を目指しているのかよ‼」

「ふん‼我々は騎士ではなく貴族だ。大体、お前は何だ?平民風情が我々に偉そうな口をきくな‼」


 そう言うとテトと言い合っていた貴族がやっぱり剣を抜いてテトに切りかかった。

 はぁ、此処まで予想通りだと溜息しか出ないね。

 そんな事を考えながら周囲の野次馬達の頭上を飛び越えながら腰に着けている護身用の短剣を抜いてテトと貴族の間に割って入って相手の剣を刀身の片側に着いている凹凸で剣を受け止める。いきなり割り込んできた私に驚いている間に同じく驚いた顔をしているテトに声を掛ける。


「あんたねぇ、ややこしいことに首を突っ込むのなら命の危険が有ることぐらい頭に入れておきなさい。」


 相手の剣を押しのけながら一歩下がりテト達の近くまで行く。


「コ、コハク、一体どこから来たんだよ…」

「人様の頭上を飛び越えてだよ。魔法を使えば簡単でしょ?」


 かなり驚いたのか馬鹿貴族に対する怒りを一時的に忘れてしまったようだ。

 よしよし、そのまま少し冷静になろうね。


「なんか前より魔法の練度がすごくなってないか?先生の教え方が良いんだな」

「あ゛あ゛ん゛?」


 思わず出てしまった殺気に問題の貴族含め回りが皆凍り付く。

 なんてことを言ってくれるんだこのピヨコは、先生の教え方が良い?はぁ?この学校に入学してから近接戦闘の修練しかしていませんけど?魔法の練度が上がったのは単純に自分の努力の結果ですけど?それをあのボケ師匠のおかげ?助けるのやめるぞ


「テト…歯を食いしばれ…」

「なんで!?」


 うっさい、一発殴らないと私の腹の虫がおさまらない。

 理不尽?知るか‼迂闊にそんな事を言った自分自身を呪え‼


「き、貴様らぁ!我々を無視して勝手に話すな!」


 あ、しまった。この貴族A(仮)の事を忘れてた。


「あ、ごめんなさい別に無視していたわけじゃないんです。」


 眼中に無かっただけなんです。


「えっと、何が有ったのか詳しくは知らないんですが、学校で殺しはまずいと思うのでここは穏便に済ませて貰えませんか?」


 取り敢えず丁寧に言って相手が引いてくれたらいいなぁ~


「貴様ぁ、平民の分際で我々に意見する気か?分をわきまえろ‼」


 はい、駄目でした。さっきまで私の殺気で凍り付いていたのになかなか威勢がいいなぁ

 そんな事を考えていると、まだ何かを言おうとしている貴族A(仮)に後ろの方に居た貴族B(仮)が声を掛けた。


「まぁまて、ナウゼリン。相手のいう事にも一理ある。此処は話し合いで解決しようではないか」

「しかし、デイル様…」

「ナウゼリン、私の言う事が聞けないか?」

「わ、分かりました…」


 なるほど、貴族A(仮) がナウゼリンで後から来た貴族B(仮)がデイルね。

 立場的にはデイルの家の方が爵位が上みたいだ。

 一見まともに取り合って話し合うみたいに言っているけどこいつの方が問題そうだなぁ~


「さて、お待たせして済まなかった。申し遅れたが私の名前はデイル・ヴァトラー、父はダルデム・ヴァトラー侯爵だ。こっちはナウゼリン・ガイスタ、伯爵家の者だ。」


 あ~、はいはい、爵位を言って相手を蹴落とそうとしているのね。だからどうした。その爵位はお前が貰った物じゃなくてお前のご先祖様が貰った物だろ!受け継ぐ気が有るならその元々の志も受け継げ‼


「して、貴女の名は?」


 デイルが私にも名乗るように促してきた。まぁ、相手の感覚からすると許可してやるから名乗れって事なんだろうなぁ。

 良いよ、名乗ってやるよ。


「私の名前はコハク、家名も何もないただのコハク」


 本当は名前の後に村の名前であるリステナが着くけど別にこいつらにそこまで名乗らなくても良いよね?


「コハク?どこかで聞いたことが…まさか、あのゲネディスト教諭が唯一弟子にした平民か?」


 どうやら名前を聞いてデイルの方は、私が師匠の弟子だと気づいたみたいだ。無駄に有名なんだよなぁ~あの人…

 デイルの言葉を聞いてさっきから私の事が気に入らないらしいナウゼリンが喋りだす。


「フン‼平民風情が一体どのような手を使ってあの方の弟子になったのか、どうせ何か姑息な手を使ったに決まっている‼」

「あ゛あ゛ん゛?」


 私が再び出した殺気により調子に乗って喋っていたナウゼリンとデイルを含む周りが再び凍り付く。

 おい!今なんて言ったこの馬鹿貴族?師匠(アイツ)の弟子になるために私が姑息な手を使った?違うわい‼私は借金の担保にドナドナされざるを得なかっただけだ‼

 適当なことを言っていると…マジでぶっ〇すぞ…


「ゴホン、すまない。話が脱線してしまったが、話し合いをしよう。我々はそこの彼女の持っている水の魔石が欲しいのだ。君は関係ないのだから黙っていてはくれないだろうか?」


 デイルが気を取り直して自分達の要求を言って来た。覚えておけよ。ナウゼリン、お前は後で絶対に後悔させてやる。


「悪いけどこうやって割り込んじゃった以上もう無関係ではないから黙って見ていることは出来ないわ。その子の持っている物も魔石とか関係なしに大切な物みたいだしね」

「ふむ、では引き下がる気も無い、ましては彼女の魔石を我々に渡す気も無いという事で良いかな?」

「そうなるね」

「貴様ぁ、ふざけているのかぁ‼」


 さっきから五月蠅いなぁ、此奴。大体ふざけているのはお前らだろ。話し合いって言っときながら自分達の要求しか言ってないじゃん。


「フフン、ではここは真剣での決闘で決めるのはどうだろう?君が勝てば我々はその魔石は諦めるし、ついでに君達の無礼な態度も無かったことにしてあげよう。」

「そっちが勝ったら?」

「当然その魔石は貰って行くし、君達には相応の罰を受けて貰う」


 はい、やっぱり決闘して無理やり奪うパターンを提案して来たね。しかもこっちが負ければ私達を罰するチャンスも手に入れてこようとしてきたよ。


「私は良いけど、賭けている物が私の物ではないからすぐに決断は出来ないわ」

「ふむ、ではそこに居る二人もそれで良いかな?」


 私の横に居るテトと女の子に向かって確認を取っている。


「あの…こんな事に巻き込んでごめんなさい。自分でなんとかしなくちゃいけなかったんだけど貴方に任せてしまってごめんなさい。貴女を信じます。」

「俺もそれで良い。ただし、元々は俺が割り込んだんだ。だから決闘は俺がやる‼」


 デイルの言葉を聞いてテトは、自分が決闘をやると言い出した。ややこしくなるからちょっと向こうに行っていてね。


「テト、この勝負多分私に申し込まれた物だから私がやるよ。大体貴方よりまだ私の方が強いし…」


 テトに近寄り小声で言い合う


「な、お前…少しは俺の事を信じろよ…」

「いやいや、貴方が強くなってきたのは分かっているけど多分この勝負色々制限を設けてくるだろうから私の方が都合が良いんだよ。」

「…分かったよ」

「うん、だからテトはこれ持って見ていてね」

「コハク…これって」

「たまたま良い蜂蜜が手に入ったから作ったんだ。一個くらいなら食べて良いよ」


 持っていた蜂蜜パイの紙袋をテトに渡す。はぁ~、焼き立てだったのになぁ~


「じゃあ、二人の了承も得たし、こっちからは私が相手をさせて貰うわ。そっちはどちらが戦うの?」

「ナウゼリン、相手をして差し上げろ」

「はい、デイル様」


 やっぱりナウゼリンの方が出て来たか、デイルは戦わなさそうだしね


「ルールは?どういう条件でやるの?」

「ルールは、完全に近接戦闘のみ、魔法の使用は一切禁止だ。相手の武器を破壊するかどちらかが降参したら終了だ。」


 はいはい、自分たちが有利になるように魔法を封じて来たね。はぁ~、悔しいけど師匠の言った通り魔法が使えない場面に遭遇しちゃったよ。


「な‼それってコハクに不利過ぎr」

「分かった。その条件で良いよ。その代わりそっちが負けた時の条件を一つ追加して、魔法の使用を禁止されているんだからそれぐらいはいいでしょ?」

「内容にもよるがいいだろう。言ってみろ」


 テトがルールを聞いて文句を言おうとしたのを横から遮りながら此方が勝った時の条件をもう一つ増やす交渉をするとあっさりと了承してくれた。


 私が魔法を使えない事で自分達に有利だと思っているんだろうなぁ。余裕綽々だ


「そっちが負けたら今回の事で私達の家族や友人に手を出さないと貴方達の一番信じている物に約束して、それが出来るのならさっき言った条件で勝負する」

「良いだろう。我が魂に誓おう。この勝負で負けたら我々は君たちの家族や友人に手を出さない。元々そんな気も無かったしね。」


 嘘つけ‼絶対に負けたら私達の家族なんかに親の力を使って嫌がらせしただろ‼


「では、二人とも向かい合って決闘の準備を始めたまえ」


 デイルの言葉で私とナウゼリンはお互いに距離を取り剣を構えた。


次回は決闘します。

ごゆるりとお待ちいただけたら幸いです

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