表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
208/332

態度で見せる第一歩

おはようございます。

第208話投稿させて頂きます。

良いね。ありがとうございました。とても励みになります。

☆の後は葵視点です。

楽しんで頂ければ幸いです。

「勘違いで皆さんに不快にさせて本当に申し訳ありませんでした‼」


 髪の色と目の色だけ元に戻してから皆の居るサロンへと向かってドアを開けるとそんな事を大声で言いながら皆の前で土下座をするアルの姿が目に映る。

 あ、やっばい・・・これ他人()が見たらアルが悶絶するやつだ・・・


「会t・・・魔王様に言われて皆さんと一緒に戦った時の記録を全部見返したら俺の言った事は間違いでした。謝って済む事では有りませんが謝罪させてください」


 頭を下げたままそう言うアルに狗神君に皆は何とも言えない顔をアルに向けている。まぁ、アルが皆に失礼な事を言ったのは数日前だし、いきなり態度を改めて頭を下げられたら戸惑うよね・・・

 だからね。狗神君。一体何したの?って顔で私を見るのはやめてくれる?ちょっとお話しただけだよ?

 私が目線だけでそう答えると狗神君が複雑そうな顔のまま口を開く。


「あー、えっと・・・アルさんだっけ?俺達も貴方と会った時にネージュとトランプとかしていて疑われる様な事をしていたんだから俺達にも非が有ると思います。だから頭を上げてください。皆もそれで良いよな?」


 狗神君がそう言うと周りの皆も頷き同意するとアルはゆっくりと顔を上げて口を開く。


「貴方達の寛大な心に感謝を。今回の汚名はこれからの態度で返上させて貰います。何か有れば俺に協力させてくれ」


 そう言ってアルは立ち上がり一礼すると部屋から出て行くためにクルリとドアの方を向き、私と目が合う。

 ・・・あ、やっべ。アルに気付かれる前に外に出るのを忘れていた。

 アルはバツが悪そうに口を開く。


「会頭・・・何時からそこに?」

「えっと・・・『勘違いで皆さんに不快にさせて本当に申し訳ありませんでした‼』ってところから」

「・・・全部じゃないか」

「あははは、そうだねぇ・・・・はい、これお土産。どれが誰のかメモを貼って有るから他の皆にも渡してくれる?」

「・・・あいよ、って重いな‼」


 一通り会話をしてからアルに立花さんと街を回った時に買ったガラス細工をアイテムボックスから取り出して入れていた箱ごと渡すとアルは何とも言えない顔で箱を受け取り居心地が悪かったのか重いと一言文句を言ってから部屋を出て行く。

 アルが出て行ったのを確認してから皆の方を見て改めて声を掛ける。


「やあ、皆。今更だけどおはよう。アルがビックリさせちゃってごめんね」

「えっと・・・おはようコハクちゃん。その恰好・・・どうしたの?」


 挨拶のついでにアルの行動で驚かせた事を謝るとアルの行動による驚きから復活した夢菜さんが私の格好を不思議に思ったのか問いかけて来る。

 アルが居なくなってホッとして余裕が出て来たのか狗神君も今更ながらに私の格好を不思議そうに見ている。


「うん?あぁ、立花さんと街を回って来たからね。彼女の信頼を得る為に素顔を晒したかったけど彼女はまだ完全に仲間という訳じゃないから一応念の為に男装で出かけたんだよ」

「そうなんだぁ・・・それで立花さんはどうだったの?」


 光さんが些か険の有る言い方で立花さんの事を訊いて来る。


「うん。その事とこれからの事を話そうと思うから取り敢えず座って話そうよ」


 そう言って近くに待機していてくれた子にお茶を頼み、皆で席に着き立花さんに関する話と今後のどうなるか、帝国に対する介入のタイミング等を話す。


「それって、帝国にも立花さんにも甘くない?」


 全部を離し終えるとやっぱり何処か険の有る言い方で光さんが言うので私は紅茶の入ったカップを持ち上げながら少しだけ苦笑を浮かべ口を開く。


「私も最初はディランの居ない帝国を助けるつもりは無かったんだけどね・・・でも、彼は未来の為に残していた物が有ったんだ。それを失くしてしまうのは何だか忍びないんだよね。立花さんに関しては、彼女は私達(魔族)の事を本当に何も知らなかったんだよ。だからって彼女の態度を許す事は無いけどそれだけで彼女の評価を決めてしまうほど私達も彼女の事を知らないよ。そんな中で彼女に対する態度を決めてしまうのは彼女がやってしまった事と同じだよ?」

「うぅ・・・確かに・・・」


 私がそう言うと光さんは何とバツの悪そうな顔で私の言葉に同意し、一応は納得してくれたみたいだ。

 何故かネージュも龍の状態で何とも言えない顔をしている


「でも、光さんが気に掛けてくれるのはすごく嬉しいよ。ありがとう。さて、報告や相談は終ったし、話を変えようか?さっきも言ったけど立花さんと外に出て来た時にお土産を買って来たんだ。喜んでもらえると嬉しいな」


 そう言って皆に渡す夢菜さんと光さんにはホワイトレースフラワーをモチーフにした髪飾り、狗神君達にはトルコ桔梗の描かれた切子のグラスを渡す。


「わぁ、綺麗‼ありがとう‼」

「ありがとう‼コハクちゃん」

「おぉ、良いな・・・サンキュー。コハク」

「ありがとうございます。コハクさん」

「ありがとう。コハク」


 皆が口々にお礼を言ってくれる中でネージュが人型になり、クイクイっと私の袖を引き、口を開く。


「ネージュのは?」


 ネージュが少しだけ不満そうな顔でそう言うのを可愛く思いながらネージュを膝の上に乗せ、笑顔で答える。


「もちろん有るよ。私がネージュの事を忘れる訳ないでしょ?」


 そう言って服のポケットに入れていたサンカヨウをモチーフにした白色と透明な花の髪飾りを取り出してネージュの髪につけてあげる。


「主‼ありがとう‼」


 そう言ってギュッと抱き着いて来るネージュを抱き返してから狗神君に向けて口を開く。


「あ、そうだ。狗神君。ペンダントのお礼とは別だからそこは勘違いしないでね」

「あ、あぁ。分かった」

「うん、じゃあ、私はまだやる事が有るからそろそろ行くね」


 私の言葉に目を丸くした狗神君を見てから私はそう言いネージュを抱き上げてドアの方へと向かう。

 ドアを開ける直前に光さんが「男装女子・・・有だね」っと言っていたのが聞こえて来たが恐らく聞かなかった事にした方が良い事だろう。

 そんな事を考えながら私は自室へと戻り、着替えてから連絡の来ていたメアとレティに連絡を取り翌日に顔を見せる約束を取り付けてから細々とした仕事を終わらせながら残りの時間を過ごした。



 ☆



 ハクさんと別れた後、ユタ君と少し話して別れリイナさんと呼ばれていたメイドさんに迎えに来て貰い借りている部屋へと案内して貰い。

 部屋と護衛と監視を兼任している騎士の人達が見えて来た所で私は意を決してその場の全員に向って頭を下げて謝罪の言葉を口にする。


「今まで失礼な態度を取ってすみませんでした‼」


 本当は一人一人に謝らないといけないのだが意気地なしの私は目の前に謝らなければいけない対象達が集まった時に漸く謝る言葉が出て来た。

 突然の事に三人が目を丸くしているので私は頭を下げたまま言葉を続ける。

 まぁ、昨日まで見下した様な態度を取っていた人間がいきなり頭を下げたら誰だって驚くよね・・・。


「昨日、リューンさんに叱られたり、今日、ハクさ・・・魔王さんとお話したりして私は随分と失礼な態度を取っていたと分かりました。謝って済む事では有りませんが本当にごめんなさい‼そして許していただけるのなら皆さんのお名前を教えてください」

 そう言って頭を下げたままの姿勢でいると恐らくリイナさんと思われる声が聞こえて来る。


「はぁ、魔王様の言った通りなのが少しだけ驚きですね。お客様、頭を上げてください。歩み寄ろうとしなかったのはわたくし達も一緒でございます」


 そう言われてゆっくりと顔を上げると初めてメイドのリイナさんと目が合う。

 リイナさんはじっと私の顔を見るとゆっくりと口を開く。


「今更ですがお客様のお世話を担当させて頂く事になったリイナでございます。御用の際は何時でもお呼びくださいまし」

「自分はバッカスっす。お客様の護衛をさせて貰うっす」

「俺はソーンだ。よろしく頼む」


 自己紹介をしてくれた三人に感謝をしながら私は自分も名乗っていない事を思い出し三人の目を見ながら挨拶をする。


「立花 葵と言います。ご挨拶が遅れて本当に申し訳ありませんでした。それで厚かましいお願いなんですけどこの国や魔族の皆さんの事を知りたいので色々と押しえてください」


 私がそう言うとここに来て初めて見る笑顔を三人は浮かべながら頷いてくれる。

 その姿を見て内心でホッとしながら私は更に口を開く。


「それと非常に申し訳ないのですがリューンさんにも謝りたいのでどなたか都合の良い日を訊いて貰っても良いですか?私は一応自由に出歩けないと思うので・・・」


 私の言葉にリイナさんが頷き、答えてくれる。


「畏まりました。それと魔王様から城の中ならわたくしかバッカス様、ソーン様のどなたかを連れて居れば制限はございますが自由に歩き回って良いとのお達しが出ておりますよ」

「本当ですか⁉」


 驚きの情報に声を上げるとリイナさんが笑いながら頷き言葉を続ける。


「リューン様にはわたくしの方から話を通しておきますのでアオイ様は本日はお休みください。街を歩いた後なのでお疲れでございましょう。また後日改めてお話をいたしましょう」


 そう言われて部屋の中へと通され私はベッドへと腰掛ける。


「お茶を持って参りますね」

「あ、あの‼ありがとうございます‼リイナさん‼」


 お礼を言うとニコリと笑いお茶を取りに行ってくれる。

 普通に接していれば普通に接し返してもらえるという当たり前の事を今更ながら実感し、自分は何と馬鹿な事をしていたのかと改めて思いながら私はベッドに寝っ転がり腕に嵌めている白い石がはめ込まれているブレスレット型のお守りに手を振れる。

 このお守りはある人に貰った物で触れると何故だか安心する。

 ———誰に貰ったんだっけ・・・?何時、貰ったんだっけ・・・?

 お守りに触れながらふと、このお守りを誰から貰ったのか何時貰ったのかを思い出せずに首を傾げる。

 一瞬、目の前にキラキラと金色に光る細い何かが見えた気がするがそれが何だが思い出す前に部屋のドアがノックされる。


「はーい」

「失礼します。アオイ様。お茶をお持ちしました」


 返事をするとお茶を取りに行ってくれていたリイナさんの声がするので入って貰う。

 その後は仕事中だからと言うリイナさんに無理に頼んで一緒にお茶をして貰っている内に私はお守りを誰から貰ったのとこのお守りに感じた違和感をすっかり忘れてしまっていた。

此処までの読了ありがとうございました。

次回もごゆるりとお待ちいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ